ビジネスチャットツールの選び方:管理機能・データ保存・外部連携と、勤務時間外の連絡ルールで比べる
ビジネスチャットツールを選ぶときの比較ポイントを解説します。個人向けメッセージアプリを業務で使うリスク、アカウント管理・退職者の停止・ログの保存といった管理機能、外部ユーザーとのやりとり、ファイル共有と電子取引データの扱い、勤務時間外の連絡ルール、導入の進め方まで整理します。
- 対象読者
- 社内の連絡手段をメールや個人のメッセージアプリからビジネスチャットに切り替えたい、従業員30〜300名の企業の総務・情報システム担当者
- 難易度
- 基本
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- 最終確認日
この記事のポイント
- 比較の中心は「会社がアカウントとデータを管理できるか」。管理者によるアカウント停止、多要素認証、ログの保存・出力、外部共有の制限を確認する
- チャットで請求書などを受け取ると電子取引データの保存が必要になる場合がある。チャットに置いたままにせず、保存場所を決めておく
- 導入前にチャンネルの作り方、外部ユーザーの招待ルール、勤務時間外の連絡の考え方を決める。ツールより運用ルールで使いやすさが決まる
社内の連絡を、メールや従業員個人のメッセージアプリで済ませている会社は少なくありません。しかし、個人のアカウントでのやりとりは、退職者の手元に情報が残る、誤送信を取り消せない、会社が記録を確認できないといった問題を抱えています。
この記事では、特定の製品をすすめるのではなく、ビジネスチャットツールを選ぶときに確認するポイントと、導入前に決めておくルールを整理します。
個人向けメッセージアプリを業務で使うリスク
まず、なぜ会社として管理できるツールが必要かを確認しておきます。
| 起きやすい問題 | 内容 |
|---|---|
| 退職後も情報が残る | 個人のアカウントにある顧客情報や社内資料を、会社が削除できない |
| 誤送信 | 似た名前の家族・友人に業務の情報を送ってしまう |
| 記録が残らない | トラブルや問い合わせがあったとき、やりとりを会社が確認できない |
| 端末の紛失 | 個人のスマートフォンの紛失時に、会社が利用を止められない |
個人情報を扱う会社は、個人情報保護法に基づいて安全管理措置(漏えいなどを防ぐための組織的・技術的な対策)を講じる必要があります。連絡手段を会社の管理下に置くことは、その基本的な対策の一つです。私物の端末で使う場合のルールは「BYOD(私物端末の業務利用)のルール」も参考にしてください。
比較のチェックポイント
1. アカウントと端末の管理
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| アカウントの発行・停止 | 管理者が一括で作成・停止できるか。退職日にすぐ利用を止められるか |
| 認証 | 多要素認証を必須にできるか。シングルサインオン(1つのIDで複数サービスにログインする仕組み)に対応するか |
| 端末の制限 | 会社支給の端末だけで使えるよう制限できるか。紛失時にログアウトさせられるか |
| 権限の段階 | 管理者・一般・外部ユーザーなど権限を分けられるか |
退職時のアカウント停止は、入退社の手続きと連動させないと漏れます。SaaSアカウントの棚卸しには「IT資産・SaaSアカウント管理台帳」が使えます。
2. データの保存と出力
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| メッセージの保存期間 | プランによって閲覧できる期間が限られることがある。必要な期間を決めてから比べる |
| ログの出力 | 管理者がやりとりやファイルを出力できるか(調査・監査のとき) |
| 削除の扱い | 送信者がメッセージを消した場合に、管理者が記録を確認できるか |
| データの保存場所 | 保存場所や、契約終了時のデータの扱いが利用規約などで示されているか |
3. 外部とのやりとり
取引先や社労士・税理士など社外の人とやりとりする場合は、外部ユーザーの招待や共有チャンネルの機能を確認します。外部ユーザーを誰が招待できるか、招待の承認を管理者が行えるかがポイントです。
4. ファイル共有と電子取引データ
チャットで請求書や領収書のPDFを受け取った場合も、電子取引にあたり、電子帳簿保存法に沿った電子データの保存が必要になることがあります。チャット上に置いたままにすると、検索や保存期間の要件を満たせないおそれがあります。
- 請求書・契約書などは、決めた保存場所(文書管理システムや経理システム)へ移す
- 人事書類やマイナンバーを含む書類は、チャットで送らないルールにする
保存の仕組みは「文書管理システムの選び方」で整理しています。
5. 他のツールとの連携
勤怠・ワークフロー・社内ポータルなどからの通知をチャットに集めると、確認漏れが減ります。連携できるサービスと、連携の設定に管理者の承認が必要かを確認します。社内ポータルとの使い分けは「社内ポータル・社内wikiツールの選び方」を参照してください。
導入前に決めておく運用ルール
ツールの使いやすさは、運用ルールで大きく変わります。導入前に、最低限次の点を決めます。
| ルール | 決める内容の例 |
|---|---|
| チャンネルの作り方 | 部署別・プロジェクト別・全社連絡用。名前の付け方をそろえる |
| 全社連絡 | 投稿できる人を限定し、重要な通知は既読確認の方法を決める |
| 外部ユーザー | 招待できる人、招待前の承認、プロジェクト終了時の削除 |
| 送ってはいけない情報 | マイナンバー、健康情報、パスワードなど |
| 勤務時間外の連絡 | 原則として送らない、送る場合は返信を求めない、予約送信を使う など |
勤務時間外の連絡の考え方
チャットは手軽なため、夜間や休日の連絡が増えがちです。厚生労働省のテレワークガイドラインでは、長時間労働を防ぐ方法として、時間外・休日・深夜のメール送付の抑制などが挙げられています。返信を求める連絡が時間外に続くと、労働時間の把握の問題にもつながります。ルールは就業規則やテレワーク規程とあわせて周知します(テレワーク規程の作り方)。
費用の見方
ビジネスチャットは、利用者1人あたりの月額料金で提供されることが多いサービスです。比べるときは、表示された単価だけでなく次の点も確認します。
- 無料プランや下位プランで、メッセージの保存期間・管理機能・外部ユーザーの機能が制限されていないか
- 年払いと月払いで単価が違うか、途中で人数を増減できるか
- 外部ユーザー(ゲスト)が課金の対象になるか
- 多要素認証の強制やログの出力など、必要な管理機能がどのプランから使えるか
必要な管理機能が上位プランにしかない場合は、そのプランの料金で比べます。料金や機能は改定されることがあるため、最新の内容は各サービスの公式サイトで確認してください。
移行するときの注意
メールや個人アプリから切り替えるときは、一度に全部を移そうとしないことが大切です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 試験運用 | 1部署で使い、チャンネルの作り方と困った点を記録する |
| 全社展開の前 | 運用ルールを1枚にまとめ、管理職に先に説明する |
| 切り替え日 | 全社連絡の手段をチャットに統一する日を決めて告知する |
| 切り替え後1か月 | 個人アプリでの業務連絡が残っていないか確認する |
パソコンやスマートフォンの操作に慣れていない従業員がいる場合は、ログイン方法と基本操作を紙1枚にまとめて配ると、問い合わせが減ります。
比較と導入の進め方
- 今の連絡手段(メール・個人アプリ・電話)と困っていることを洗い出す
- 必須条件(アカウント停止、多要素認証、保存期間、外部ユーザー)を決める
- 2〜3製品を、1つの部署で2〜4週間試す
- 運用ルールをまとめ、全社説明のあとに切り替え日を決める
- 個人のメッセージアプリでの業務連絡をやめる時期を明確にする
まとめ
- 比較の中心は、会社がアカウントとデータを管理できるか(停止・多要素認証・保存期間・ログの出力・外部共有の制限)
- 請求書などのファイルはチャットに置いたままにせず、決めた保存場所へ移す。マイナンバーや健康情報はチャットで送らない
- チャンネルの作り方、外部ユーザーの招待、勤務時間外の連絡のルールを導入前に決め、試験運用で確かめてから全社に広げる