社内ヘルプデスク用チャットボットツールの選び方:回答方式・参照文書の管理・データの扱いで比べる
社内ヘルプデスク用のチャットボットツールを選ぶときの比較ポイントを、特定の製品に偏らずに整理します。シナリオ型・FAQ型・生成AI型の違い、参照する社内文書の管理と閲覧権限、入力データの扱い、担当者への引き継ぎ、ログの分析、費用の比べ方をまとめました。
- 対象読者
- 人事・総務・情シスへの社内問い合わせ対応にチャットボットツールの導入を検討している、従業員30〜300名の企業の担当者
- 難易度
- 基本
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 回答方式は「シナリオ型」「FAQ型」「生成AI型(社内文書を参照して回答)」の3つ。問い合わせの内容とFAQの整備状況で選ぶ
- 生成AI型では、参照させる文書の範囲と閲覧権限、回答の根拠の表示、入力データがAIの学習に使われるかを必ず確認する
- 担当者への引き継ぎ、ログの分析、管理画面での更新のしやすさは、導入後の手間を左右する。料金は各社の最新資料で比べる
「有給休暇は何日残っていますか」「住所が変わったら何を出せばいいですか」「パスワードを忘れました」。人事・総務・情シスに届く質問の多くは、同じ内容の繰り返しです。社内チャットボットは、こうした質問に自動で答える仕組みです。
この記事では、チャットボットツールの選び方に絞って比較ポイントを整理します。FAQの作り方は社内の「人事・総務FAQ」をAIで作る、導入の進め方は社内問い合わせチャットボット導入の5ステップを参照してください。
選ぶ前に確認すること
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 問い合わせの件数と内容 | 件数が少ない、または質問が毎回違う場合は、FAQページの整備で足りることがある |
| FAQ・規程の整備状況 | 回答の元になる文書がないと、どの方式でも正しく答えられない |
| 使う場所 | 社内チャット、社内ポータル、スマートフォンのどこで質問されるか |
| 対象部門 | 人事・総務だけか、情シス・経理も含めるか |
FAQや規程を1か所にまとめる段階なら、先に社内ポータル・社内wikiツールを整える方が効果的なこともあります。
回答方式の違い
| 方式 | 仕組み | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| シナリオ型 | 選択肢を順にたどって回答にたどり着く | 手続きの案内など、分岐が決まっている質問 | 想定外の質問には答えられない |
| FAQ型 | 登録した質問と回答の組から、近いものを探して返す | よくある質問が決まっている | FAQの登録と更新が必要 |
| 生成AI型 | 社内文書を参照して、AIが回答文を作る | 規程の内容に関する幅広い質問 | 誤った回答を作ることがある。根拠の表示と確認体制が必要 |
複数の方式を組み合わせられる製品もあります。生成AIが社内文書を参照して答える仕組み(RAG)の考え方は、社内規程をAIで検索できるようにするで解説しています。
チェックポイント1:参照する文書の管理
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 取り込める形式 | PDF、Word、Excel、社内wikiのページなど |
| 更新の方法 | 規程を改定したとき、差し替えが簡単か。古い版が残らないか |
| 閲覧権限 | 社員の役職・部署によって参照できる文書を分けられるか |
| 回答の根拠 | どの文書のどこを参照したかが回答に表示されるか |
| 回答しない範囲 | 指定したテーマには答えず、担当者への連絡を案内できるか |
閲覧権限は特に重要です。管理職向けの資料や人事評価の基準など、一部の人だけが見るべき文書を取り込むと、チャットボット経由で誰でも内容を知ることができてしまうおそれがあります。全社員が見てよい文書だけを取り込むのが基本です。
チェックポイント2:入力データの扱い
社員は質問の中に、自分の健康状態、家族の事情、給与のことを書くことがあります。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 学習への利用 | 質問の内容や取り込んだ文書が、提供会社やAIモデルの学習に使われないか。設定で止められるか |
| 保存期間 | 質問ログがどこに、いつまで保存されるか |
| ログの閲覧者 | 管理画面で誰が質問ログを見られるか |
| 個人情報の扱い | 個人情報の取扱いに関する契約条項、再委託先 |
| ログイン | シングルサインオン、退職者のアカウント停止 |
チャットボットの画面には「個人の事情に関する相談は〇〇窓口へ」「マイナンバーや健康情報は入力しない」と表示しておきます。個人データの取扱いを外部に委託する場合、会社には委託先を監督する義務があります。
チェックポイント3:担当者への引き継ぎ
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 有人への切り替え | 答えられない質問を、担当者のチャットやメールに転送できるか |
| 引き継ぎ時の情報 | それまでのやりとりが担当者に引き継がれるか |
| 受付時間 | 時間外の質問への案内文を設定できるか |
| 相談窓口の案内 | ハラスメント・メンタルヘルスなどの言葉が出たら、専用窓口を案内できるか |
ハラスメントの相談やメンタルヘルスの相談は、チャットボットで回答するのではなく、人の窓口につなぐ設計にします。相談対応の体制はハラスメント防止措置の総点検を参照してください。
チェックポイント4:運用のしやすさ
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 管理画面 | FAQの追加・修正を担当者が自分でできるか |
| ログの分析 | 答えられなかった質問、評価の低かった回答を一覧で見られるか |
| 利用状況 | 質問件数、部門別の利用状況 |
| 接続先 | 自社で使っている社内チャットやポータルに表示できるか |
| サポート | 導入時の設定支援、問い合わせ窓口 |
導入後は、答えられなかった質問をFAQに追加する作業が続きます。この作業を月に何時間かけられるかも、選ぶ基準になります。
費用の比べ方
料金は、利用者数、質問件数、取り込む文書量、方式(生成AIの有無)などによって異なり、変わることもあります。比べるときは、次の点をそろえて見積もりをとります。
- 利用者数と想定の質問件数
- 取り込む文書の量
- 社内チャットとの連携など、追加費用がかかる機能
- 初期設定の費用と支援の範囲
効果は、問い合わせ件数と対応時間の変化で測ります(→人事総務のAI導入効果の測り方)。
比較表の例
| 項目 | 重要度 | A | B | C |
|---|---|---|---|---|
| 自社の質問に合う回答方式 | 必須 | |||
| 入力データを学習に使わない設定 | 必須 | |||
| 文書の閲覧権限の設定 | 高 | |||
| 回答の根拠の表示 | 高 | |||
| 担当者への引き継ぎ | 高 | |||
| 社内チャットとの連携 | 中 | |||
| ログの分析 | 中 |
トライアルで確かめること
- 過去の問い合わせから30問を選び、正しく答えられるかを試す
- 規程にない質問をして、「分からない」と答えるか、作り話をしないかを見る
- 規程を1つ差し替え、回答がすぐに変わるかを確かめる
- 担当者への引き継ぎを試す
- 管理画面でFAQを追加し、手間を確かめる
よくある選定の失敗
| 失敗 | 防ぎ方 |
|---|---|
| デモの質問ではうまく答えたが、自社の質問では答えられない | 自社の実際の問い合わせでトライアルする |
| 機能が多い製品を選んだが、使いこなせない | 必須の機能を先に決め、それ以外は加点項目にとどめる |
| 社内チャットとの連携に追加費用がかかった | 連携を見積もりの条件に含める |
| 文書の更新が提供会社への依頼制で、すぐに直せない | 管理画面で担当者が更新できるかを確認する |
| 規程が整っておらず、回答が不正確 | ツールの前に、FAQと規程の整備を先に行う |
最後の点はとくに重要です。チャットボットは、元になる文書の質以上の回答はできません。規程や手順書が古いままなら、まずそれを直すことが先決です(→社内規程の体系と一覧)。
まとめ
- 回答方式(シナリオ型・FAQ型・生成AI型)は、問い合わせの内容とFAQの整備状況で選ぶ
- 生成AI型は、参照する文書の範囲と閲覧権限、回答の根拠の表示、入力データの学習への利用を確認する
- 相談窓口につなぐべき質問は、人への引き継ぎを設計する
- 管理画面の更新のしやすさとログの分析が、導入後の手間を左右する。料金は各社の最新資料で比べる