中小企業のセキュリティ監視サービスの選び方|UTM・EDRの違い、サイバーセキュリティお助け隊サービス、比較のポイント
ウイルス対策ソフトだけでは気づきにくい攻撃に備えるため、社内ネットワークや端末を監視し、異常時に対応を支援するサービスがあります。UTM(ネットワーク監視)とEDR(端末監視)の違い、IPAが基準を定める「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の内容、比べるポイントと導入の手順を、特定の事業者に寄らずに整理します。
- 対象読者
- ランサムウェアや不正アクセスの報道を受けて、社内のセキュリティ対策を外部のサービスで強化したいと考えている、従業員30〜300名の企業の情シス兼任の総務担当者
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この記事のポイント
- 監視の方法は、社内ネットワークの出入口に装置を置く「ネットワーク監視(UTMなど)」と、各端末にソフトを入れる「端末監視(EDRなど)」、その併用に分かれる。テレワークや持ち出しPCが多いなら端末監視が欠かせない
- IPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービス」は、相談窓口、異常の監視、緊急時の駆付け支援、簡易サイバー保険などを一つにまとめた民間サービスに、基準への適合を確認して登録する制度。比較の出発点に使える
- 比べるのは、監視の対象と時間帯、検知したときに誰が何をするか、駆付けの範囲、保険の補償範囲、導入と運用の手間、ログの扱い。機器を入れて終わりにせず、通知を受けたときの社内手順を決める
ウイルス対策ソフトを入れ、OSの更新も欠かしていない。それでも、VPN機器の弱点を突いた侵入や、正規のツールを悪用する攻撃には気づけないことがあります。警察庁は、ランサムウェアの侵入経路として、VPN機器などインターネットに露出した箇所、修正されていない脆弱性、漏えいした認証情報を挙げています。
こうした攻撃に早く気づき、対応を助けてもらうためのサービスが、セキュリティの監視サービスです。この記事では、監視の方法の違いと、IPAが基準を定める「サイバーセキュリティお助け隊サービス」、比べるポイントを整理します。日ごろの基本対策は情シス兼任総務の情報セキュリティ最低限チェックを先に確認してください。
監視の方法は大きく2つ
| 方法 | 仕組み | 向いている会社 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ネットワーク監視(UTMなど) | 社内ネットワークとインターネットの間に装置を置き、出入りする通信をまとめて監視する | 社員の多くが社内で働き、拠点のネットワークが1〜数か所 | 社外に持ち出したPCや、自宅から直接クラウドにつなぐ通信は監視できない |
| 端末監視(EDRなど) | 各PCに監視ソフトを入れ、端末上の不審な動きを検知する | テレワークや外回りが多く、PCを持ち出す | すべての端末に入れて動かし続ける必要がある。ソフトの相性の確認 |
| 併用 | 上の2つを組み合わせる | 拠点と持ち出し端末の両方がある | 費用と運用の手間が増える |
UTM(統合脅威管理)は、ファイアウォールやウイルス検知などの機能を1台にまとめた装置です。EDR(Endpoint Detection and Response)は、端末での不審な挙動を検知し、隔離などの対応を助けるソフトです。IPAのお助け隊サービスのユーザー向けサイトも、監視のタイプを「ネットワーク監視」「端末監視」「併用」の3種類に分けて紹介しています。
サイバーセキュリティお助け隊サービスとは
IPAは、中小企業のサイバー攻撃への対処に必要なサービスを一つにまとめた民間事業者のサービスについて、基準への適合を確認して登録する「サイバーセキュリティお助け隊サービス」制度を2021年春から運用しています。登録されたサービスには「お助け隊マーク」が付きます。
IPAの制度FAQからわかる、基準のポイントは次のとおりです。
| 項目 | FAQの説明 |
|---|---|
| 監視 | 24時間の見守り体制が求められる(担当者の常駐までは求めない) |
| 緊急時の対応支援 | リモートの支援だけでは足りず、利用者から要請があれば指定の場所に技術者を派遣する(駆付け)体制が求められる |
| 簡易サイバー保険 | インシデント対応時の初動対応(駆付け支援等)の費用を補償するもの。自己負担が生じる場合はその範囲をわかりやすく説明することが求められる |
| 契約単位 | 端末1台から契約できることが求められる |
| 簡単さ | 専門知識がない利用者でも導入・運用できる工夫と、サポート体制 |
このほか、監視機能の強化や定期的なコンサルティングを加えた「2類」の類型もあります。IPAのユーザー向けサイトでは、地域ごとの提供事業者の一覧や、監視の種類別のサービス一覧を見られます。価格や内容は事業者ごとに異なり、更新もされるため、最新の情報は一覧と各事業者の資料で確認します。
お助け隊サービスは、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)で導入を支援する制度も用意されているとIPAは案内しています。対象や補助の条件は、補助金の公募要領で確認してください。
比べるポイント
お助け隊サービスに登録されたものも、そうでないものも、次の観点で比べます。
| 観点 | 確認すること |
|---|---|
| 監視の対象 | ネットワーク・端末のどちらか両方か。サーバー、クラウドのメールやストレージは対象か |
| 監視の時間帯 | 24時間365日か。夜間・休日に検知したとき、誰にどう連絡が来るか |
| 検知後の対応 | 自動で隔離するか、連絡だけか。社内で判断が必要な場面はどこか |
| 駆付け | 駆付けの条件、到着までの目安、対応エリア、回数の上限 |
| 保険・補償 | 補償される費用の範囲(調査・復旧・駆付け)、自己負担、既存のサイバー保険との重なり |
| 導入の手間 | 設置やインストールを誰がするか。既存のウイルス対策ソフトや業務アプリとの相性の確認 |
| レポート | 月次の報告の内容。経営者に説明できる形か |
| ログとデータ | 取得するログの範囲、保存場所と期間、解約時の扱い。従業員のPCの操作記録を含む場合の社内ルール |
| 契約 | 最低契約期間、端末の増減の手続き、解約の条件 |
端末監視は、従業員のPCの動きを記録します。取得した情報を目的外に使わないこと、誰が見られるかを社内ルールで決め、従業員に説明しておきます(従業員のモニタリングのルール)。
導入の手順
- 守るものを確かめる:IT資産の台帳で、PC・サーバー・ネットワーク機器・クラウドサービスと、持ち出しの有無を整理する
- 監視の方法を決める:働き方(社内中心か、テレワーク・外回りが多いか)から、ネットワーク監視・端末監視・併用のどれにするかを決める
- 候補を2〜3社に絞る:IPAの一覧や、付き合いのあるITベンダーの提案から選び、上の観点で比べる
- 通知を受けたときの社内手順を決める:誰が受け、誰が判断し、従業員にどう指示するかを手順書にする
- 試験導入する:一部の端末で動かし、業務アプリへの影響と通知の量を確かめてから全社に広げる
- 年1回見直す:月次レポートで検知の傾向を確認し、端末の増減や働き方の変化に合わせて契約を見直す
通知を受けたときの初動はランサムウェア感染・不正アクセスの初動対応、手順書の作り方は初動手順書をAIで作るを参照してください。
よくある失敗
- 機器を入れたことで安心し、OSの更新やパスワードの管理、バックアップがおろそかになる
- 夜間の通知の宛先が退職者や異動者のままになっている
- 監視の対象外の機器(古いNAS、拠点のルーター、私物端末)が残っている
- 社内のIT保守の委託先と監視サービスの事業者の役割があいまいで、事故のときに連絡が行き違う(社内ITサポートの外部委託の選び方)
監視サービスは、バックアップと組み合わせて初めて復旧までつながります。バックアップの考え方はデータバックアップの選び方にまとめています。
まとめ
- 監視はネットワーク監視(UTMなど)と端末監視(EDRなど)、その併用に分かれる。働き方に合わせて選ぶ
- IPAのお助け隊サービスは、24時間の見守り、駆付け支援、簡易サイバー保険などを備えたサービスを登録する制度で、比較の出発点に使える
- 監視の対象と時間帯、検知後の対応、駆付け、補償、ログの扱い、契約条件で比べる
- 通知を受けたときの社内手順を決め、基本対策とバックアップも続ける
この記事で使えるテンプレート
総務 ランサムウェア・不正アクセス 初動対応チェックリスト(時系列記録・連絡先一覧つき) ランサムウェア感染や不正アクセスが疑われたときに、最初の1時間でやること、社内の体制、外部への連絡、復旧までを確認するチェックリストです。IPAの「中小企業のためのセキュリティインシデント対応の手引き」と警察庁の案内に沿い、時系列の対応記録と、平時に埋めておく連絡先一覧の様式も付けています。 総務 情報セキュリティ基本規程(ひな形) IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版の組織的・人的・物理的・技術的対策の区分に沿って、基本方針、管理体制、情報資産の管理、アクセス制御とパスワード、端末・メール・クラウドの利用、バックアップ、委託先管理、事故対応までを条文にした情報セキュリティ基本規程のひな形です。 総務 IT資産・SaaSアカウント管理台帳 PC・スマートフォンなどの端末と、会社で契約しているSaaS(クラウドサービス)のアカウントを1つの台帳で管理するシートです。利用者、管理者権限、多要素認証、契約更新日、月額費用、退職時の返却・削除日を記録し、退職者アカウントの消し忘れや不要な契約の放置を防ぎます。この記事に出てくる用語
- ランサムウェア
- パソコンやサーバーのデータを暗号化して使えなくし、元に戻す代わりに身代金を要求するコンピュータウイルスです。データを盗んで公開すると脅す「二重恐喝」の手口もあります。