無期転換ルールの実務:通算5年の数え方、申込権、2024年4月からの明示事項
有期労働契約が通算5年を超えると、本人の申込みで無期労働契約に転換されます。通算期間とクーリングの数え方、申込権が発生する時期、2024年4月から必要になった労働条件明示、就業規則の整備まで、会社側の実務を整理します。
- 対象読者
- 契約社員・パート・アルバイトなど有期雇用の社員がいる企業の人事・労務担当者
- 難易度
- 実務
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- 読了9分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 同じ会社との有期契約が通算5年を超えると、本人が申し込んだ時点で会社は承諾したとみなされ、無期契約が成立する
- 2024年4月から、申込権が発生する更新のたびに「無期転換を申し込めること」と「転換後の労働条件」の明示が必要
- 転換後の労働条件は、別段の定めがなければ直前の有期契約と同じ。就業規則で無期転換社員の扱いを決めておく
契約社員やパート・アルバイトを1年契約で更新し続けている会社では、気づかないうちに「無期転換申込権」が発生している社員がいるかもしれません。無期転換ルールは2013年4月から始まった制度ですが、2024年4月からは会社が明示すべき事項も増えました。数え方と手続きを押さえておきましょう。
無期転換ルールとは
労働契約法第18条により、同じ使用者(会社)との間で有期労働契約が更新されて通算5年を超えた場合、労働者が申し込むと、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されます。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 契約社員・パート・アルバイト・嘱託など、名称を問わず有期契約で働く人 |
| 要件 | 同じ会社との有期契約の通算期間が5年超、かつ1回以上更新している |
| 申込み | 労働者からの申込み(口頭でも有効だが、書面が望ましい) |
| 会社の対応 | 申込みがあると会社は承諾したとみなされる(拒否できない) |
| 転換の時期 | 申込み時の有期契約が終了した日の翌日から無期契約 |
「同じ使用者」は会社(法人)単位で判断します。A工場からB工場に移っても、契約の相手が同じ会社なら通算されます。
申込権が発生するタイミング
申込権は「通算5年を超えた日」ではなく、通算5年を超える契約期間の初日から発生します。
| 契約期間 | 申込権が発生する時期 |
|---|---|
| 1年契約 | 5回目の更新後の1年間(6年目の契約期間中) |
| 3年契約 | 1回目の更新後の3年間(4年目から) |
3年契約を1回更新すると通算6年になるため、4年目の時点ですでに申込権が発生している点に注意してください。申込権を行使せずに更新した場合は、次の契約期間中にも申し込めます。
通算期間の数え方とクーリング
通算契約期間は、2013年4月1日以降に開始した有期労働契約から数えます。契約と契約の間に**契約がない期間(空白期間)**が一定以上あると、それ以前の契約期間は通算から外れます。これを「クーリング」と呼びます。
| 空白期間より前の通算契約期間 | クーリングされる空白期間 |
|---|---|
| 2か月以下 | 1か月以上 |
| 2か月超〜4か月以下 | 2か月以上 |
| 4か月超〜6か月以下 | 3か月以上 |
| 6か月超〜8か月以下 | 4か月以上 |
| 8か月超〜10か月以下 | 5か月以上 |
| 10か月超(1年以上を含む) | 6か月以上 |
契約更新の上限を設けたうえで空白期間を置き、期間経過後の再雇用を約束して雇止めする運用は、労働契約法の趣旨に照らして望ましくないとされています。無期転換を避ける目的で、申込権が発生する前に雇止めすることも同様です。
2024年4月からの労働条件明示
2024年4月1日から、労働基準法施行規則の改正により、有期契約の締結・更新時に明示すべき事項が追加されました。
| 明示事項 | いつ | 内容 |
|---|---|---|
| 更新上限の有無と内容 | 有期契約の締結時・更新時ごと | 通算契約期間または更新回数の上限 |
| 無期転換申込機会 | 申込権が発生する更新のたびに | 無期転換を申し込めること |
| 無期転換後の労働条件 | 申込権が発生する更新のたびに | 転換後の賃金・業務などの条件 |
あわせて、最初の契約より後に更新上限を新設したり、上限を短くしたりする場合は、その理由を事前に本人へ説明する必要があります。また、無期転換後の労働条件を決める際は、正社員などとのバランスを考慮した事項(業務内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)を説明するよう努めることとされています。
労働条件通知書の書き方は「労働条件明示のルール」で整理しています。
無期転換後の労働条件
転換後の労働条件は、別段の定めがない限り、直前の有期契約と同じです(契約期間だけが無期になる)。つまり、無期転換したからといって自動的に正社員になるわけではありません。
一方で、何も決めていないと次のような問題が起きます。
- 定年の定めがなく、何歳まで雇うのか分からない
- 正社員用の就業規則が適用されるのか、有期社員用が適用されるのか曖昧
- 退職金・賞与・休職制度の扱いが決まっていない
そこで、就業規則(または無期転換社員用の規程)で次の点を定めておきます。
- 無期転換社員の定義と適用される規程
- 定年(正社員と同じにするか、別に定めるか)
- 賃金・賞与・退職金の扱い
- 配置転換・勤務地の範囲
- 休職などの制度の適用
就業規則を変更したら、意見聴取と届出(常時10人以上の事業場)を行い、社員に周知します。手順は就業規則変更届セットを使うと漏れを防げます。
定年後の再雇用者の特例
定年後に有期契約で継続雇用する人も、更新を続けて通算5年を超えると申込権が発生します。**都道府県労働局長の認定(第二種計画認定)**を受けた会社では、定年後引き続き雇用されている期間は申込権が発生しません。高度な専門的知識を持つ有期雇用労働者にも同様の特例(第一種計画認定)があります。定年後再雇用の全体像は「定年・継続雇用の実務」をご覧ください。
会社がやることチェックリスト
| やること | 時期 |
|---|---|
| 有期契約の社員を一覧にし、契約開始日・更新回数・通算期間を記録する | すぐに |
| 申込権が発生する人(次の更新で通算5年超になる人)を抽出する | 毎回の更新前 |
| 労働条件通知書に更新上限・無期転換申込機会・転換後の条件を記載する | 更新時 |
| 申込書の様式(ポータルサイトに参考様式あり)と受付窓口を決める | 事前 |
| 申込みを受けたら受理通知を出し、転換日を確認する | 申込み時 |
| 就業規則に無期転換社員の定めを置く | 事前 |
よくある質問
申込みを受けたら、会社は何をすればいい?
申込みがあった時点で無期契約は成立するため、承諾の手続きは法律上不要です。ただし、後の行き違いを防ぐために、受理したことと転換日(現在の契約期間満了日の翌日)を書面で本人に通知し、転換後の労働条件通知書を交付しましょう。
5年を迎える前に雇止めすれば無期転換を避けられる?
無期転換を避ける目的で、申込権が発生する直前に雇止めすることは望ましくないとされています。更新が繰り返され、契約更新への合理的な期待があると認められる場合は、労働契約法第19条(雇止め法理)により雇止めが認められないこともあります。
まとめ
- 有期契約が通算5年を超え、本人が申し込めば、会社は拒否できず無期契約が成立する
- 2024年4月以降は、更新上限の明示と、申込権発生時の「申込機会」「転換後の条件」の明示が必要
- 転換後の条件は直前の有期契約と同じが原則。定年や適用規程を就業規則で決めておく
迷ったときは、各都道府県労働局の相談窓口や無期転換ポータルサイトで確認してください。