若者雇用促進法の青少年雇用情報とは|新卒募集で提供する3類型の職場情報、求められたときの対応とユースエール認定
新卒者等を募集する会社は、若者雇用促進法により、採用・離職の状況、研修、残業時間、有給休暇の取得などの「青少年雇用情報」を提供するよう努め、応募者から求められたら3類型それぞれ1つ以上を提供しなければなりません。提供する項目と算出方法、指針が求める対応、300人以下の企業が対象のユースエール認定の基準を条文で整理します。
- 対象読者
- 新卒・既卒の若手採用を担当し、応募者や学校から職場情報を求められる従業員30〜300名の企業の人事担当者
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この記事のポイント
- 新卒者等(学校卒業見込者等)を条件に募集・求人をする会社は、青少年雇用情報をすべて提供するよう努める。応募者等から求めがあれば、「募集・採用の状況」「職業能力の開発・向上」「職場への定着」の3類型それぞれ1つ以上を提供する義務がある(法第13条・第14条、施行規則第4条)
- 指針は、ホームページ・説明会・求人票などで全項目を提供すること、求めた応募者を不利益に扱わないこと、あらかじめ情報を整備しておくことを求めている
- 常時雇用300人以下の会社は、離職率・残業時間・有給休暇取得などの基準を満たせばユースエール認定を受けられる。基準は施行規則第7条で定められ、改正されることがあるため最新は厚生労働省・労働局で確認する
新卒採用の説明会や面談で、学生から「新卒の3年以内離職者は何人ですか」「残業は月何時間くらいですか」と聞かれることがあります。こうした質問には、法律上答えなければならない場合があります。若者雇用促進法(正式名称は「青少年の雇用の促進等に関する法律」)の「青少年雇用情報」の仕組みです。
この記事では、どんな募集が対象になるか、提供する項目と数字の出し方、求められたときの対応、ユースエール認定の基準を、条文と厚生労働省の資料で整理します。新卒採用の年間の進め方は中小企業の新卒採用スケジュールと進め方を参照してください。
対象になる募集と、会社の義務
| 場面 | 根拠 | 会社の義務 |
|---|---|---|
| 自社で直接募集する(採用サイト、説明会、ナビサイトなど) | 法第13条第1項 | 青少年雇用情報を提供するよう努める(努力義務) |
| 上記の募集に応じた、または応じようとする学校卒業見込者等から求められた | 法第13条第2項 | 青少年雇用情報を提供しなければならない(義務) |
| ハローワーク・職業紹介事業者などに新卒求人を申し込む | 法第14条第1項 | 申込み先に青少年雇用情報を提供するよう努める |
| 申込み先や、紹介を受けた学校卒業見込者等から求められた | 法第14条第2項 | 提供しなければならない |
対象は「学校卒業見込者等であることを条件とした」募集・求人です。学校卒業見込者等には、卒業見込みの学生・生徒のほか、施行規則で定める既卒者(学校を卒業した者など)も含まれます。新卒枠に既卒者も応募できる募集にしている場合も、対象になると考えておきます。
募集を委託している場合(募集受託者)も、同じ義務を負います。ハローワークに新卒求人を出すときは、求人申込書とあわせて「青少年雇用情報シート」を提出する運用になっています(ハローワーク求人票の書き方)。
提供する項目(3類型)
施行規則第3条は、青少年雇用情報を3つの類型に分けて定めています。
| 類型 | 項目 |
|---|---|
| 1. 募集・採用の状況 | 直近3事業年度の新卒者等の採用者数と、そのうち離職者数/男女別の直近3事業年度の新卒者等の採用者数/平均継続勤務年数 |
| 2. 職業能力の開発・向上 | 研修の有無と内容/自己啓発支援の有無と内容/メンター制度の有無/キャリアコンサルティング制度の有無と内容/社内検定等の制度の有無と内容 |
| 3. 職場への定着の促進 | 前事業年度の月平均所定外労働時間/前事業年度の有給休暇の平均取得日数/前事業年度の育児休業の取得状況(男女別の対象者数と取得者数)/役員・管理職に占める女性の割合 |
正社員の募集なら正社員について、正社員以外の募集ならその雇用形態の労働者について情報を出します(施行規則第3条第2項。女性の割合の項目を除く)。
なお、「役員・管理職に占める女性の割合」は、2026年10月時点のe-Govの施行規則に掲載されている項目です。追加の時期や記入方法は、最新の青少年雇用情報シートとハローワークの案内で確認してください。従業員101人以上の会社は、女性活躍推進法でも管理職の女性比率の公表が必要になっています(女性活躍推進法の情報公表の改正)。
数字の出し方
厚生労働省の「青少年雇用情報シートの書き方のポイント」は、次の算出方法を示しています。
| 項目 | 算出方法 |
|---|---|
| 月平均所定外労働時間 | 労働者ごとの1か月あたりの所定外労働時間の平均値を合計し、労働者数で割る。または、前事業年度の所定外労働時間の合計を、各月1日に在籍している労働者の延べ人数で割ってもよい |
| 有給休暇の平均取得日数 | 労働者ごとの年次有給休暇の取得日数の合計を、労働者数で割る |
| 除外してよい人 | 管理的地位にある人(有給休暇は付与されていない人も) |
ここでいう所定外労働時間は、法定時間外ではなく所定労働時間を超えた時間です。勤怠システムの「法定外残業」の集計とは数字がずれることがあるので、集計の定義をそろえておきましょう。有給休暇の取得日数は年次有給休暇管理簿から拾えます(年5日の有給休暇取得義務と管理簿)。
求められたときの対応
法令で決まっていること
施行規則第4条は、求めを受けた場合の提供方法を定めています。
- 3類型それぞれについて1つ以上の項目を提供する
- 提供方法はメールの送信、書面の交付その他の適切な方法
- 求める側は、氏名・連絡先、学校名と在学年(卒業年月)、提供を希望する旨をメールや書面で明示する
つまり最低限、「離職者数」「研修の内容」「月平均所定外労働時間」のように各類型から1項目ずつを出せば義務は果たせます。
指針が求めていること
厚生労働省の指針(平成27年告示第406号)は、さらに次の点に留意するよう求めています。
| 指針の内容 | 実務での対応 |
|---|---|
| ホームページ、会社説明会、求人票などで、施行規則第3条の全項目を提供することが望ましい | 採用サイトに「職場情報」のページを作り、毎年更新する |
| 具体的な項目を求められたら、特段の事情がない限りその項目を提供することが望ましい | 「離職者数」を聞かれたのに研修の話だけで済ませない |
| 求めたことを理由に不利益な取扱いをしない | 面接官に「質問した学生の評価を下げない」ことを周知する |
| 求めに備えてあらかじめ情報を整備し、求めがあれば速やかに提供するよう努める | 年度初めに前事業年度の数字を集計しておく |
離職者数を出したくない、という声が社内から出ることがあります。しかし、少人数の会社では「3人採用して1人離職」のような数字でも、理由や定着の取組と一緒に説明すれば、かえって信頼につながります。数字の見せ方は小さな会社の採用広報、定着の取組は若手の早期離職を防ぐ定着施策を参照してください。
指針のその他の内容
指針は、青少年雇用情報のほかにも、新卒採用で会社が配慮すべき事項を示しています。
- 卒業後少なくとも3年間は、既卒者も新卒の採用枠に応募できるようにする
- 通年採用や秋季採用の導入を積極的に検討する
- 内定時に、採用の時期、採用条件、内定取消事由などを書面の交付等で明示する(内定取消し・内定辞退への対応)
- 固定残業代を採用する場合は、計算方法、固定残業代を除いた基本給、超過分を追加で支払うことを明示する(固定残業代を正しく運用する、求人広告・採用サイトの表示ルール)
- 就職活動中の学生やインターンシップ生へのハラスメントを防ぐ(2026年10月からは求職者等へのセクハラ防止措置が義務。カスハラ対策・求職者等へのセクハラ防止措置の義務化)
求人不受理との関係
若者雇用促進法には、かつて労働関係法令の違反がある事業主の新卒求人をハローワークが受理しない規定(旧第11条)がありましたが、現在は削除されています。求人不受理は、職業安定法第5条の6で、新卒に限らずすべての求人を対象に定められています。法令違反の内容を含む求人や、一定の労働関係法令違反で処分・公表などを受けた事業主の求人は、受理されないことがあります。
ユースエール認定
若者の採用・育成に積極的で、雇用管理の状況が優良な中小企業を、厚生労働大臣が認定する制度です(法第15条)。対象は常時雇用する労働者が300人以下の事業主です。
主な認定基準
認定基準は施行規則第7条で定められています。主なものは次のとおりです。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 募集 | 新卒者等の正社員求人・募集を行っていること(卒業後3年以内の既卒者も応募できるもの)など |
| 採用・育成 | 若者の採用と育成に積極的に取り組んでいること。育成方針と能力開発の計画を策定していること |
| 離職率 | 直近3事業年度の新卒者等の正社員採用者の離職率が20%以下(採用者が3〜4人の場合は離職者1人以下) |
| 残業 | 前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下で、月平均の時間外労働が60時間以上の正社員がいないこと |
| 有給休暇 | 前事業年度の正社員の有給休暇の取得率が70%以上、または平均取得日数が年10日以上 |
| 育児休業 | 直近3事業年度に男性の育児休業等取得者がいる、または女性の取得率が75%以上(対象者がいなければ制度があればよい) |
| 情報公表 | 青少年雇用情報の項目をインターネットなどで公表していること |
| 欠格事由 | 過去3年間に新卒者の内定取消しを行っていない、過去1年間に会社都合の解雇・退職勧奨を行っていない、重大な法令違反がないことなど |
基準は改正されることがあります。申請前に、管轄の労働局の最新の案内と申請書類で確認してください。
認定のメリットと申請先
東京労働局の案内では、ハローワークでの重点的なPR、認定企業向けの就職面接会への参加、認定マークの使用、日本政策金融公庫の低利融資、公共調達での加点評価がメリットとして挙げられています。申請先は、主たる事業所の所在地を管轄する都道府県労働局です。
認定を目指すかどうかにかかわらず、基準の項目は若手の定着を測る指標として使えます。毎年、青少年雇用情報を集計するタイミングで、基準との差を確認しておくとよいでしょう。
まとめ
- 新卒者等を条件にした募集・求人では、青少年雇用情報の提供が努力義務。求められたら3類型それぞれ1つ以上の提供が義務
- 項目は「採用・離職の状況」「能力開発」「定着(残業・有給休暇・育休・女性割合)」。数字は前事業年度で集計し、所定外労働時間の定義に注意する
- 指針は全項目の提供、求めた応募者の不利益取扱いの禁止、事前の情報整備を求めている
- 300人以下の会社は、離職率20%以下・月平均所定外20時間以下などの基準を満たせばユースエール認定を受けられる。最新の基準は労働局で確認する
この記事で使えるテンプレート
人事 内定通知書・内定承諾書 採用内定を伝える内定通知書と、内定者から返送してもらう内定承諾書のセットです。入社予定日、提出書類、内定取消事由、承諾期限を明記でき、労働条件通知書とあわせて送る前提で作っています。 労務 年次有給休暇管理簿 法律で作成・保存が義務づけられている年次有給休暇管理簿のひな形です。基準日・付与日数・取得日・残日数に加え、年5日の取得義務の達成状況と時季指定の有無を従業員ごとに管理できます。この記事に出てくる用語
- 育児休業
- 子を養育するために、原則として子が1歳になるまで取得できる休業です。育児・介護休業法にもとづき、保育所に入れないなどの場合は最長2歳まで延長できます。
- 固定残業代
- 一定時間分の時間外労働などの割増賃金を、実際の残業の有無にかかわらず定額で支払う仕組みです。実際の残業代が定額を超えたら差額を支払う必要があります。
- 採用内定
- 会社が応募者に採用を約束することです。多くの場合、内定通知の時点で「始期付・解約権留保付の労働契約」が成立したと考えられます。
- 所定労働時間
- 就業規則や労働契約で会社が決めた、始業から終業までの時間から休憩時間を除いた労働時間です。法定労働時間の範囲内で定めます。
- 時間外労働
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働のことです。36協定の締結・届出と、25%以上の割増賃金の支払いが必要です。
- 女性活躍推進法
- 働く女性が能力を十分に発揮できるよう、企業に自社の状況把握、行動計画の策定・届出、女性の活躍に関する情報の公表を求める法律です。常時雇用する労働者101人以上の企業は義務、100人以下は努力義務です。
- セクシュアルハラスメント
- 職場で行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働条件で不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることです。男女雇用機会均等法により、事業主に防止措置が義務づけられています。
- 退職勧奨
- 会社が社員に退職を勧め、合意による退職を目指すことです。解雇とは違い、本人は断ることができます。
- 内定取消し
- 会社が出した採用内定を取り消すことです。内定で労働契約が成立していれば解雇と同じように扱われ、合理的な理由がなければ無効になります。
- 年次有給休暇
- 一定期間働いた労働者に与えられる、賃金が支払われる休暇です。6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤すると10日付与され、勤続に応じて最大20日まで増えます。
- ハローワーク
- 厚生労働省の公共職業安定所の愛称です。職業紹介や求人の受付のほか、雇用保険の加入・喪失や給付の手続きの窓口になっています。
出典・参考資料
- e-Gov法令検索「青少年の雇用の促進等に関する法律」(第13条・第14条 青少年雇用情報の提供、第15条 認定)
- e-Gov法令検索「青少年の雇用の促進等に関する法律施行規則」(第3条 青少年雇用情報、第4条 提供の方法、第7条 認定の基準)
- 厚生労働省「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」(平成27年厚生労働省告示第406号)
- 厚生労働省「青少年雇用情報シートの書き方のポイント」(PDF)
- 厚生労働省 若者雇用促進総合サイト「認定制度とは」
- 東京労働局「ユースエール認定制度(事業主向けページ)」
- e-Gov法令検索「職業安定法」(第5条の6 求人の申込み)