期末の自己評価(自己申告)の書き方を社員に案内する|事実で書く記入ガイド、上司評価とのずれの扱い、提出から面談までの段取り
期末評価の前に社員に書いてもらう自己評価(自己申告)。「頑張った」だけの記入をなくし、評価者が事実を確かめられる書き方を案内する方法を整理します。記入ガイドの項目、良い例・悪い例、上司評価とのずれの扱い、休業・異動があった人の注意、提出から面談までのスケジュールまで。
- 対象読者
- 期末の人事評価を運営する従業員30〜300名の企業の人事担当者
- 難易度
- 基本
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 自己評価は評価の材料。評価期間中の行動と結果を、いつ・何を・どうした・結果はどうかの事実で書いてもらう
- 評価者は自己申告を自分が把握した事実と照らして確認し、どの目標・評価項目に当たるかを当てはめる。点数の差より事実のずれを面談で確かめる
- 案内文・記入例・締切を人事がそろえ、提出から評価会議・面談までの日程を逆算して示す
多くの会社で、期末評価の前に社員本人が「自己評価(自己申告)」を書きます。ところが、「目標どおり頑張った」「よくできた」といった記入ばかりだと、評価者は判断の材料に使えず、面談でも話がかみ合いません。自己評価は、本人の言い分を聞く場であると同時に、評価者が見落としていた事実を拾うための材料です。この記事では、人事が社員に書き方を案内する手順を整理します。評価制度の全体像は人事評価制度のつくり方を参照してください。
自己評価の役割を最初に伝える
国の人事評価の手引きである内閣人事局・人事院の「人事評価ガイド《評価者・調整者の手続編》」では、評価者は期末にまず自ら収集した被評価者の行動等に照らして自己申告の内容を確認し、そのうえで集めた事実がどの評価項目や目標に当たるかを「当てはめ」るという手順を示しています。民間企業でもそのまま参考になる考え方です。
社員向けの案内では、次の3点を最初に伝えます。
- 自己評価は「評価の材料」で、自己評価の点数がそのまま最終評価になるわけではない
- 上司が日常で見えていない仕事や工夫を伝える機会である
- 書いた内容は面談で上司と一緒に確認する
記入ガイドに入れる項目
評価の対象範囲
同じガイドは、評価の対象を「職務遂行における行動と結果」とし、勤続年数・学歴・年齢・性別などの属人的要素や、職務に影響しない私的な行動は対象にならないとしています。また、評価期間内の行動が対象で、前回の評価結果や期間外の実績に影響されず、期末に近い時期だけでなく全期間の事実に基づくことを求めています。社員にも同じ範囲で書いてもらいます。
| 書いてもらうこと | 書かなくてよいこと |
|---|---|
| 評価期間中の行動と、その結果 | 評価期間より前の実績 |
| 期首に立てた目標ごとの達成状況 | 勤続年数・年齢など属人的なこと |
| 目標以外に担当した業務、状況の変化 | 私生活のこと |
| 次の期に取り組みたいこと | 他の社員との比較・他人の評価 |
事実で書くための型
記入欄ごとに、次の型で書くよう案内します。
- 目標・項目:どの目標(業績)またはどの行動項目(能力)についてか
- 行動:いつ、何を、どのように行ったか
- 結果:数値や成果物、関係者の反応など確認できる結果
- 振り返り:うまくいった理由、できなかった理由、次に変えること
能力の項目を書いてもらうときは、各職種で求められる行動を具体的に示しておくと書きやすくなります。厚生労働省の「職業能力評価基準」は、仕事に必要な知識・技術・技能に加え、成果につながる職務行動例を業種別・職種別に整理したものです。自社の評価項目の着眼点を作るときの参考になります。
良い例・悪い例
| 悪い例 | 良い例 |
|---|---|
| 新規開拓を頑張った | 7〜9月に新規先へ月10件の訪問を続け、3社と取引を開始(目標は2社) |
| 後輩の面倒をよく見た | 4月入社の2名に週1回の振り返りを実施。9月から2名とも見積作成を単独で担当 |
| 業務改善に取り組んだ | 請求書の発行手順を見直し、月末の作業時間を約5時間から約2時間に短縮 |
| 目標未達だが努力した | 受注目標は80%の達成。主要顧客の発注延期が要因。下期は既存先の追加提案で補う |
数字で示せない仕事は、成果物や関係者の反応(「〇〇部から手順書をそのまま使いたいと依頼があった」など)を書けば十分です。
上司評価とずれたときの扱い
自己評価と上司評価が食い違うのは珍しいことではありません。評価者には、点数の差そのものではなく、事実の把握にずれがないかを確かめるよう案内します。
- 本人だけが知っている事実があった → 評価に反映するか検討する
- 同じ事実を見ているが、期待水準の理解が違う → 等級ごとの期待水準を面談で説明する
- 本人の記入に事実でない部分がある → 根拠を確認し、記録を残して面談で伝える
自己評価が極端に低い・高い人には、評価結果を伝える前に面談で背景を聞きます。伝え方は人事評価のフィードバック面談、評価者側の目線合わせは評価者研修のやり方にまとめています。
休業・異動があった人の注意
期中に産休・育休や短時間勤務を取った人、異動した人は、評価期間のうち実際に働いた期間について書いてもらいます。育児休業の申出・取得を理由とする不利益な取扱いは育児・介護休業法第10条で禁止されており、休業したこと自体を理由に評価を下げることはできません。考え方は産休・育休を取った社員の評価、短時間勤務者の人事評価を参照してください。異動者は、異動前の上司から事実の情報をもらえるよう、人事が依頼の段取りをつけます。
提出から面談までのスケジュール例
3月末が期末の会社の例です。
| 時期 | 作業 | 担当 |
|---|---|---|
| 2月中旬 | 自己評価の案内文・記入例・シートを配付 | 人事 |
| 3月上旬 | 評価者向けに確認の観点を説明(事実の当てはめ、評価エラー) | 人事 |
| 期末後1週間 | 社員が自己評価を提出 | 社員 |
| 提出後2週間 | 評価者が自己申告を確認し、一次評価 | 評価者 |
| 4月中旬 | 評価会議(調整) | 人事・役員 |
| 4月下旬〜5月 | フィードバック面談、次期の目標設定 | 評価者・社員 |
締切を過ぎても未提出の人には、評価者から個別に声をかけてもらいます。次期の目標の立て方は目標設定の書き方を参照してください。
まとめ
- 自己評価は評価の材料であり、評価者が見えていない事実を拾うためのもの
- 評価期間中の行動と結果を、目標・行動・結果・振り返りの型で書いてもらう。属人的要素や期間外の実績は書かない
- 評価者は自己申告を自分の把握した事実と照らして確認し、ずれは面談で確かめる
- 休業・異動があった人は働いた期間について書き、休業を理由に不利益に扱わない
この記事で使えるテンプレート
人事 人事評価シート(目標管理) 目標管理(MBO)による人事評価シートです。期初の目標設定、期中の進捗確認、期末の本人評価・評価者評価、行動評価、総合評価とフィードバックまでを1つの様式で運用できます。この記事に出てくる用語
- 育児休業
- 子を養育するために、原則として子が1歳になるまで取得できる休業です。育児・介護休業法にもとづき、保育所に入れないなどの場合は最長2歳まで延長できます。
- 産前産後休業
- 出産予定日の6週間前(多胎は14週間前)から請求により休める産前休業と、出産の翌日から8週間の産後休業のことです。期間中は社会保険料が免除されます。
- 人事評価
- 社員の仕事の成果や行動、能力を一定の基準で評価し、昇給・賞与・昇格や育成に反映させる仕組みです。等級制度・報酬制度とつなげて設計します。
- 短時間勤務制度
- 3歳に満たない子を養育する労働者などが申し出たときに、1日の所定労働時間を原則6時間に短縮する制度です。育児・介護休業法で会社に義務づけられています。