ハザードマップで事業所の災害リスクを確認する方法|重ねるハザードマップ・J-SHISの使い方と、確認結果を防災計画に生かす手順
防災計画やBCP、事業継続力強化計画の出発点は、拠点ごとの災害リスクを知ることです。国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」と防災科学技術研究所の「J-SHIS」で、洪水・土砂災害・高潮・津波と地震の揺れやすさを確認する手順、拠点一覧表への整理の仕方、確認結果を備蓄・保険・避難ルールに反映する方法をまとめます。
- 対象読者
- 本社・営業所・倉庫など複数の拠点を持つ従業員30〜300名の企業の総務担当者
- 難易度
- 基本
- 所要時間
- 読了7分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 「重ねるハザードマップ」は住所を入れるだけで洪水・土砂災害・高潮・津波のリスクを重ねて表示できる。「わがまちハザードマップ」で市町村の地図も確認する
- 地震は防災科学技術研究所のJ-SHISで「今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」などを確認できる
- 本社・営業所・倉庫・データの保管場所ごとに結果を一覧表にまとめ、備蓄・設備の配置・保険の補償範囲・避難ルールの見直しにつなげる
防災対策を考えるとき、最初に知るべきなのは「自社の拠点がどんな災害に弱いか」です。同じ市内でも、川沿いの倉庫と高台の本社ではとるべき対策が違います。国や研究機関が公開している無料のサイトを使えば、総務担当者が1拠点あたり数十分でリスクを確認できます。
使う2つのサイト
| サイト | 運営 | 分かること |
|---|---|---|
| ハザードマップポータルサイト | 国土交通省・国土地理院 | 洪水・内水、土砂災害、高潮、津波のリスク、道路防災情報、土地の特徴・成り立ち、市町村のハザードマップ |
| J-SHIS(地震ハザードステーション) | 防災科学技術研究所 | 今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率、地盤の揺れやすさ、液状化の履歴など |
重ねるハザードマップで水害・土砂災害を確認する
ハザードマップポータルサイトには、「重ねるハザードマップ」と「わがまちハザードマップ」の2つの機能があります。
手順
- 「重ねるハザードマップ」を開き、「住所から探す」に拠点の住所を入力する
- 「洪水」「土砂災害」「高潮」「津波」を順に選び、色が付くかを確認する
- 色が付いた場合は、凡例で想定される浸水の深さや区域の種類を読み取る
- 災害リスク情報をテキストで表示する機能もあるので、結果を記録に残しやすい
- 指定避難所も地図上で確認できる(2026年7月から表示に対応)
わがまちハザードマップも見る
「わがまちハザードマップ」からは、市町村が作成・公表したハザードマップにリンクしています。市町村のマップには、避難場所や避難の目安など、地域ごとの情報が載っています。重ねるハザードマップと両方を見ておきます。
ハザードマップは「想定」にもとづくもので、色が付いていない場所が安全という意味ではありません。想定より大きな災害が起きることもある前提で使います。
J-SHISで地震のリスクを確認する
J-SHISでは、住所を指定して次のような情報を確認できます。
- 今後30年間に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率
- 地形・地盤分類(揺れやすい地盤かどうか)
- 液状化履歴地図
- 地点ごとの情報をまとめた「地震ハザードカルテ」
確率の数字だけでなく、地盤の種類も見ておくと、建物や設備の固定をどこから優先するかの判断材料になります。家具や機器の固定はオフィスの家具転倒防止・地震対策を参照してください。
拠点ごとに一覧表にまとめる
確認した結果は、拠点一覧表にまとめます。社員の通勤経路や、データ・重要書類の保管場所も一緒に確認しておくと役に立ちます。
| 拠点 | 洪水 | 土砂災害 | 高潮・津波 | 地震(30年確率・地盤) | 重要な設備・資産 | 対策のメモ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 本社(3階) | 浸水想定あり | なし | なし | 確率・地盤を記入 | サーバー、金庫 | 1階の書庫を上階へ |
| 第二倉庫(平屋) | 浸水想定あり | なし | 高潮想定あり | 確率・地盤を記入 | 在庫、フォークリフト | 止水板・保険の水災補償を確認 |
| 営業所 | なし | 警戒区域に近い | なし | 確率・地盤を記入 | 社用車3台 | 大雨時の車両の退避場所 |
建物の何階にいるかで、浸水の影響は大きく変わります。浸水が想定される拠点では、サーバー・配電盤・重要書類が1階や地下にないかを確認します。
確認結果を対策に生かす
一覧表ができたら、拠点ごとに次の項目を見直します。
| 見直す項目 | 例 | 関連記事 |
|---|---|---|
| 備蓄と保管場所 | 浸水想定のある拠点では、備蓄品を上の階に置く | 中小企業の防災・BCP |
| 設備の配置 | サーバーやUPSを浸水しない場所へ移す | オフィスのサーバー・ネットワーク機器とUPSの管理 |
| 保険の補償範囲 | 火災保険に水災・風災の補償が含まれているか | 会社が入る保険の基本 |
| 避難・出社のルール | 大雨の予報が出たら倉庫の作業を止める基準 | 安否確認の仕組みづくり |
| 車両 | 大雨のとき社用車を高い場所に移す | 社用車管理とアルコールチェック義務 |
事業継続力強化計画(ジギョケイ)でも、茨城県の案内のとおり、ハザードマップ等を活用した自然災害リスクの確認が計画の最初の項目です。この一覧表は、そのまま計画づくりの材料になります(→事業継続力強化計画(ジギョケイ)の認定を受ける手順)。
社員への共有
拠点ごとの結果は、総務だけで持たずに社員と共有します。たとえば次のような形です。
- 拠点の入口や休憩室に、その拠点の想定(浸水の深さ、土砂災害の区域)と避難場所を掲示する
- 入社時の説明資料に、勤務する拠点のリスクと避難場所を入れる
- 防災訓練の前に、ハザードマップを見ながら避難経路を確認する時間を設ける
社員の自宅のリスクは本人が確認するものですが、出社・帰宅の判断に関わるため、重ねるハザードマップの使い方を紹介しておくと役に立ちます。
よくある質問
物件を借りる前にも確認すべきか
確認しておくべきです。移転先の候補を比べる段階でリスクを確認すれば、浸水想定のある物件では1階を避ける、サーバーを置く部屋を上の階にするなど、契約前に条件を考えられます。移転の手続きはオフィス移転の総務チェックリストにまとめています。
複数の想定がある場合、どれを基準にするか
ハザードマップには、想定する雨量や地震の規模によって複数の図があることがあります。対策の優先順位を決めるときは、より大きな想定の図も確認し、最悪の場合にどこまで被害が及ぶかを把握しておきます。
見直しのタイミング
- 年1回(防災訓練の前など)、サイトの情報が更新されていないか確認する
- 拠点の新設・移転のとき(物件を選ぶ段階で確認すると、契約前に判断できる)
- 市町村からハザードマップの改訂が発表されたとき
まとめ
- 重ねるハザードマップで水害・土砂災害、J-SHISで地震のリスクを拠点ごとに確認する
- 結果を拠点一覧表にまとめ、重要な設備や資産の場所と照らし合わせる
- 備蓄・設備の配置・保険・避難ルールの見直しと、ジギョケイやBCPの作成に生かす
この記事で使えるテンプレート
総務 防災・BCP 備えチェックリスト 地震・風水害などの災害に備えて、総務が点検すべき項目をまとめたチェックリストです。体制・連絡網、防火管理、オフィスの安全対策、備蓄品、事業継続(BCP)、訓練までを確認できます。この記事に出てくる用語
- BCP
- 「Business Continuity Plan」の略で、地震・水害・感染症・システム障害などの緊急事態が起きても、重要な業務を止めない、または早く再開するための計画です。