オフィスのサーバー・ネットワーク機器とUPSの管理|置き場所、停電時の動き、バッテリー交換、点検表のつくり方
ファイルサーバー、ルーター、NAS、電話の主装置。オフィスの片隅に置かれた機器は、止まると業務全体が止まります。専任の情シスがいない会社の総務向けに、機器の置き場所と物理的な管理、UPS(無停電電源装置)の役割と停電時の動き、バッテリーの交換時期の管理、月次・年次の点検表のつくり方を整理します。
- 対象読者
- 専任の情報システム担当がいない従業員30〜300名の企業で、サーバーやネットワーク機器を管理する総務担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- サーバーやネットワーク機器は、施錠できる場所に置き、立ち入れる人を限る。熱・水・ほこり・つまずきによる抜線を避け、機器と配線の一覧を作る
- UPSは停電時に数分〜十数分の電力を供給し、その間に機器を安全に停止させるための装置。自動シャットダウンの設定と、実際に動くかの試験が欠かせない
- UPSのバッテリーは消耗品。設置日と交換推奨時期を台帳に記録し、警告ランプ・ログを月次で確認する。保守契約やクラウド移行も含めて年1回見直す
オフィスの片隅や書庫の棚に、ルーター、スイッチ、NAS(ネットワーク対応のファイル保存装置)、ファイルサーバー、電話の主装置などがまとめて置かれていることがあります。専任の情報システム担当がいない会社では、こうした機器の管理が総務に任されがちです。
機器が止まると、メール、共有フォルダ、電話、勤怠システムへの接続まで一度に止まります。この記事では、専門知識がなくても総務が押さえておきたい、機器の置き場所、UPS(無停電電源装置)、点検の仕組みを整理します。停電やシステム障害時の業務継続の考え方は停電・システム障害に備える総務のBCPを参照してください。
まず「何があるか」を一覧にする
最初にやることは、機器の棚卸しです。次の項目をIT資産台帳に記録します。
| 項目 | 記録する内容 |
|---|---|
| 機器名・型番 | ルーター、スイッチ、NAS、サーバー、電話主装置、UPSなど |
| 役割 | 何が止まると何が使えなくなるか(例:NAS→共有フォルダ) |
| 設置場所 | 部屋・棚の位置 |
| 購入日・保守期限 | メーカーのサポート期限、保守契約の期限 |
| 保守連絡先 | 購入した販売店・保守業者、契約番号 |
| 管理者 | 社内の担当者と代理 |
| 電源 | どのUPS・コンセントにつながっているか |
配線の写真を撮って台帳に添付しておくと、障害時に保守業者へ状況を伝えやすくなります。ケーブルにはラベルを付け、どの機器につながっているかが分かるようにしましょう。
置き場所と物理的な管理
施錠と立ち入りの制限
サーバーやネットワーク機器は、情報資産そのものです。IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」も、重要な情報や機器を扱う場所の物理的な対策を求めています。
- 施錠できる部屋、または施錠できるラックや棚に置く
- 鍵を持つ人を限り、鍵の貸出しを記録する(→オフィスの物理セキュリティ対策)
- 来客が出入りする会議室や受付に、ルーターやスイッチを置かない
総務省のWi-Fi提供者向けの手引きも、機器を第三者が物理的にアクセスできない場所に設置するよう勧めています。ケーブルを抜かれたり、別の機器をつながれたりするのを防ぐためです。
環境の注意点
| リスク | 対策の例 |
|---|---|
| 熱 | 機器の周りに空間を空ける。窓際や暖房の近くを避ける。夏季休業中に空調を止める場合は機器の部屋だけ動かすか、温度を確認する |
| 水 | 給湯室・水回り・空調の結露が落ちる場所の近くを避ける。床に直置きしない |
| ほこり | 定期的に吸気口を掃除する。書庫の段ボールの近くを避ける |
| 抜線・転倒 | 通路を配線が横切らないようにする。棚は固定し、地震で落ちないようにする |
| たこ足配線 | 電源タップの容量を確認し、機器ごとにどこに挿しているかを記録する |
オフィスの移転やレイアウト変更のときは、機器の置き場所を最初に決めておくと、後からの工事が少なくて済みます(→オフィス移転の進め方)。
UPS(無停電電源装置)の役割
UPSは、停電や瞬間的な電圧の低下が起きたときに、内蔵のバッテリーから機器に電力を供給する装置です。注意したいのは、UPSは「停電中も使い続けるための装置」ではないことです。一般的なオフィス用のUPSが供給できるのは、接続した機器の消費電力にもよりますが、多くは数分〜十数分程度です。その間に、データを壊さないよう機器を正しく停止させるのが主な役割です。
停電時にどう動くかを決めておく
- 停電を検知:UPSがバッテリー運転に切り替わる
- 通知:UPSの管理ソフトや管理カードから、管理者にメールなどで通知
- 自動シャットダウン:一定時間たっても復旧しない場合、サーバーやNASを自動で停止
- 復電:電源が戻ったら、決めた順番(ネットワーク機器→サーバー→NASなど)で起動
自動シャットダウンには、UPSとサーバー・NASをUSBケーブルやネットワークで連携させる設定が必要です。購入しただけで連携していない例も多いため、設定済みかを保守業者に確認しましょう。
年に1回、業務時間外に、UPSの電源プラグを抜いて実際に切り替わるか、自動シャットダウンが動くかを試験すると安心です。試験の手順と復旧方法は事前に保守業者と確認し、データのバックアップを取ってから行います。
どの機器をUPSにつなぐか
すべての機器をつなぐと、バッテリーの持ち時間が短くなります。つなぐ機器は、止まるとデータが壊れるおそれがあるもの、復旧に時間がかかるものを優先します。
| 優先度 | 機器の例 |
|---|---|
| 高 | ファイルサーバー、NAS、業務サーバー |
| 中 | ルーター、スイッチ、電話主装置(停電中も外部と連絡を取りたい場合) |
| 低 | プリンター、複合機、モニター(UPSにつながない) |
バッテリーの交換時期を管理する
UPSのバッテリーは消耗品です。交換時期を過ぎると、停電時に電力を供給できず、UPSがあるのに機器が突然止まることになります。交換の目安はメーカーや使用環境(特に温度)によって異なるため、取扱説明書やメーカーの案内で確認し、台帳に記録します。
- 設置日(またはバッテリー交換日)と、メーカーが示す交換推奨時期を記録する
- UPSの警告ランプ、ブザー、管理ソフトのログを月1回確認する
- 交換推奨時期の数か月前に見積りを取り、予算に入れる(→総務の年間予算)
- 交換したバッテリーや廃棄するUPSは、販売店やメーカーの回収の仕組みを使って適切に処分する
点検表をつくる
点検は「月次」と「年次」に分けると続けやすくなります。防災チェックリストと一緒に管理するのも一つの方法です。
月次の点検(10分)
- □ 機器のランプに異常がない(赤・橙の点灯や点滅がない)
- □ UPSの警告表示がなく、管理ソフトのログに異常がない
- □ 部屋の温度が高すぎない、吸気口にほこりがたまっていない
- □ NASやサーバーのバックアップが成功している
- □ 部屋・ラックの鍵が施錠され、鍵の貸出し記録と合っている
年次の点検
- □ IT資産台帳の更新(機器の追加・撤去、保守期限)
- □ UPSの切替試験と自動シャットダウンの動作確認
- □ バッテリーの交換推奨時期の確認と予算化
- □ メーカーサポートが終わる機器の入れ替え計画
- □ 保守契約の内容(対応時間・駆けつけの有無)の確認
- □ 停電時の連絡手順と起動順の見直し
クラウドへの移行も選択肢に
社内にサーバーを置き続けるかどうかも、年に1回見直します。ファイル共有をクラウドストレージに移せば、停電や機器の故障の影響を受けにくくなり、保守の負担も減ります。一方で、インターネット回線が止まると使えなくなるため、回線の冗長化(予備回線)やオフラインでの業務手順も合わせて考えます。社内のサーバーを廃棄するときは、データの消去を確実に行いましょう(→PC返却とデータ消去)。
まとめ
- まず機器の一覧(役割・設置場所・保守期限・電源)を作り、配線にラベルを付ける
- 機器は施錠できる場所に置き、熱・水・ほこり・抜線を避ける
- UPSは停電時に機器を安全に止めるための装置。自動シャットダウンの設定と年1回の試験を行う
- バッテリーは消耗品。交換推奨時期を台帳で管理し、月次・年次の点検表で確認を続ける