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従業員向け外部相談窓口の選び方:ハラスメント・内部通報・メンタルヘルス(EAP)の委託先を比べるポイント

ハラスメントの相談窓口、内部通報の窓口、メンタルヘルスの相談(EAP)を外部に委託するときの選び方を、特定の事業者に偏らずに解説します。窓口の種類と法令上の位置づけ、相談内容が会社に伝わる範囲、匿名の扱い、社内の担当者との役割分担、契約前に確かめることを整理します。

対象読者
ハラスメント相談窓口や内部通報窓口、従業員の心の相談先を外部に委託することを検討している、従業員30〜300名の企業の人事・総務担当者
難易度
実務
所要時間
読了8分
最終確認日

この記事のポイント

  • 外部窓口は「ハラスメント相談」「内部通報」「メンタルヘルスの相談(EAP)」で役割が違う。委託しても、事実確認や是正などの対応の責任は会社に残る
  • もっとも大切なのは、相談内容が会社にどこまで伝わるかのルール。本人の同意の取り方、匿名の扱い、緊急時の連絡を契約前に文書で確認する
  • 窓口は作るだけでは使われない。社内の担当者との分担と、従業員への周知の方法まで含めて選ぶ

ハラスメントの相談窓口は、すべての会社に設置が義務づけられています。2026年10月からはカスタマーハラスメント(カスハラ)への対応も義務になりました。一方で、人事担当者が一人しかいない会社では「人事に相談すると社内に知られそう」と感じて、従業員が窓口を使わないことがあります。

この記事では、特定の事業者をすすめるのではなく、相談窓口を外部に委託するときの比較のポイントを整理します。ハラスメント対策の全体像は「ハラスメント防止対策」、内部通報の仕組みは「内部通報制度の作り方」を参照してください。

外部窓口の種類

種類 主な相談内容 法令上の位置づけ 主な委託先
ハラスメント相談窓口 パワハラ・セクハラ・マタハラ、カスハラなど 相談体制の整備は事業主の措置義務。外部への委託も可能 専門の相談サービス事業者、社会保険労務士、弁護士
内部通報窓口 法令違反、不正、規程違反など 公益通報者保護法で、常時使用する労働者が300人を超える事業者は体制整備が義務、300人以下は努力義務 弁護士事務所、専門の通報受付サービス
メンタルヘルスの相談(EAP) 仕事や私生活の悩み、心身の不調 法令上の設置義務はない。メンタルヘルス対策の「事業場外資源」の一つ EAP事業者、カウンセリングの専門機関

1つの事業者がこれらをまとめて受け付ける場合もありますが、相談内容によって会社に伝える範囲や対応の流れが違います。まとめて委託する場合も、種類ごとにルールを決めます。

委託しても会社に残る責任

外部窓口が受け付けるのは、相談・通報の入り口です。事実関係の確認、被害を受けた人への配慮、行為者への対応、再発防止といった対応は、会社が行う必要があります。「外部に任せたので対応は終わり」とはならないことを、経営層とも共有しておきます。

比較のポイント

相談内容が会社に伝わる範囲

もっとも大切な確認点です。

  • 相談の内容を会社に伝えるときに、本人の同意をどう取るか(一律に同意を取る方式になっていないか)
  • 匿名で相談・通報できるか。匿名の場合に、追加の質問や結果の連絡をどう行うか
  • 会社への報告の形式(個別の報告か、件数・傾向だけの定期報告か)
  • 自傷・他害のおそれなど、緊急時に会社や医療機関へ連絡する基準

内部通報では、通報者を特定させる情報の取扱いに守秘義務があり、2026年12月1日施行の改正では通報者を探索する行為の禁止なども加わります。委託先の手順が、消費者庁の指針と解説に沿っているかを確認します。

受付の方法と時間

観点 確認すること
受付の方法 電話・メール・Webフォーム・面談のどれに対応するか
受付時間 平日の日中のみか、夜間・休日も受け付けるか
対応する人 相談員の資格や経験(公認心理師・産業カウンセラー・弁護士など)、研修の内容
言語 外国人の従業員がいる場合、日本語以外で相談できるか
対象者 従業員本人だけか、家族、派遣社員、退職者、取引先の従業員も対象にできるか

内部通報の対象者は法令で範囲が決まっています(退職後1年以内の人や役員なども含まれます)。委託先の受付対象が、自社の規程と合っているかを確認します。

社内の担当者との役割分担

外部窓口から会社に連絡が来たあと、誰が受け取り、誰が調査し、誰が本人に連絡するかを決めておきます。

  1. 外部窓口が受け付け、本人の同意の範囲で会社の窓口担当者に連絡する
  2. 会社の窓口担当者が、事実確認の担当者を決める(行為者とされる人の上司を外す)
  3. 対応の結果を、外部窓口を通じて、または直接、本人に伝える
  4. 記録を残し、再発防止の取組につなげる

社内の相談記録は「ハラスメント相談記録票」、内部通報の記録は「内部通報 受付記録票」が使えます。

報告とデータの管理

  • 定期報告の頻度と内容(件数、相談の分類、傾向、会社への提言)
  • 相談記録の保存期間、保管場所、契約終了時の扱い
  • 相談記録にアクセスできる人の範囲

相談記録には、健康状態などの配慮が必要な個人情報が含まれます。委託先での安全管理の方法も確認します。

定期報告は、相談の件数が少ない会社では「誰の相談か」が推測されやすくなります。部署別の件数を出さない、一定の件数に満たない分類はまとめる、といった報告の方法を委託先と決めておくと、相談者の安心につながります。

会社の規模・状況に応じた考え方

状況 考え方の例
人事・総務の担当者が1〜2人 社内の担当者が当事者になりやすい。ハラスメント相談は外部窓口を一次窓口にすると相談しやすい
従業員が300人を超える 内部通報の体制整備が義務。従事者の指定や規程と、外部窓口の手順を合わせる
店舗・コールセンターなど顧客対応が多い カスハラの相談が増える。被害を受けた従業員の心のケアまで受けられる窓口を検討する
拠点が分散している、テレワークが多い 電話・Webで受け付ける窓口が使いやすい。受付時間も確認する
顧問弁護士・社会保険労務士がいる 内部通報やハラスメントの外部窓口を依頼できるか相談する。利益相反がないかも確認する

顧問弁護士に内部通報の窓口を依頼する場合、その弁護士が会社の代理人として紛争に関わることがあると、通報者が相談をためらうことがあります。窓口と会社の代理人を分けるかどうかも検討します。

契約前に確かめること

項目 確認の方法
同意・報告のルール 手順書やフロー図を書面で受け取り、自社の規程と照らし合わせる
費用の考え方 従業員数による月額か、相談件数による従量か、面談の追加費用があるか(見積もりは書面で)
周知の支援 従業員向けのカード・ポスター・社内掲示の文面を用意してくれるか
研修の支援 管理職向け・相談担当者向けの研修を依頼できるか
解約時の扱い 相談記録の引き渡し、継続中の相談の扱い

周知しなければ使われない

窓口は、従業員が存在を知り、安心して使えると思えて初めて機能します。

  • 入社時の説明資料と社内ポータルに、窓口の連絡先と「相談したことで不利益な扱いはしない」旨を載せる
  • 年に1回は、朝礼や社内報で窓口を紹介する
  • 管理職研修で、部下から相談を受けたときに外部窓口を案内できるようにする

メンタルヘルスの相談先は、外部窓口のほかに産業医や地域の公的な相談先もあります。「メンタルヘルスの4つのケア」もあわせて確認してください。

まとめ

  • 外部窓口は、ハラスメント相談・内部通報・メンタルヘルスの相談(EAP)で役割と法令上の位置づけが違う
  • 委託しても、事実確認や是正などの対応の責任は会社に残る。社内の担当者との分担を先に決める
  • 相談内容が会社に伝わる範囲、匿名の扱い、緊急時の連絡を契約前に書面で確認し、周知まで含めて選ぶ

この記事に出てくる用語

カスタマーハラスメント
顧客や取引先などの言動のうち、社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されることです。2026年10月1日から、すべての事業主に防止措置が義務づけられました。
公益通報者保護法
会社の法令違反などを通報した労働者などを、解雇や不利益な取扱いから守るための法律です。常時使用する労働者が300人を超える事業者には、内部通報に対応する体制の整備が義務づけられています。
産業医
労働者の健康管理について専門的な立場から指導・助言を行う医師です。常時50人以上の労働者を使用する事業場は選任が義務づけられています。
セクシュアルハラスメント
職場で行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働条件で不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることです。男女雇用機会均等法により、事業主に防止措置が義務づけられています。
内部通報制度
従業員などが社内の法令違反や不正を、社内または社外の窓口に通報できるようにする仕組みです。公益通報者保護法にもとづき、通報者の保護と調査・是正の手順を定めて運用します。
パワーハラスメント
職場で優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動によって、労働者の就業環境を害することです。労働施策総合推進法により、すべての事業主に防止措置が義務づけられています。
マタニティハラスメント
妊娠・出産したことや、産休・育休などの制度を利用したことに関する上司・同僚の言動により、就業環境が害されることです。男女雇用機会均等法と育児・介護休業法で、防止措置が義務づけられています。

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