eラーニング(コンプライアンス研修)サービスの選び方:教材の更新頻度・受講管理・自社教材の配信で比べる
コンプライアンス研修をeラーニングで行うときのサービスの選び方を、特定の製品に偏らずに整理します。既製教材が法改正に合わせて更新されるか、受講状況の管理と督促、自社教材の配信、受講時間の扱い、個人情報の委託先としての確認事項、トライアルで見ることをまとめました。
- 対象読者
- ハラスメント・情報セキュリティ・個人情報などの全社研修を、eラーニングで効率よく実施したい従業員30〜300名の企業の人事・総務担当者
- 難易度
- 基本
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 目的を「全員に同じ内容を確実に届け、受講の記録を残す」ことに置き、既製教材・受講管理・自社教材の配信の3つで比べる
- 既製教材は、2026年10月のカスハラ対策の義務化など法改正にどれだけ早く対応するかを確認する。教材の内容は自社の規程・相談窓口と合わせる
- 会社が受講を義務づける研修の時間は労働時間として扱う。受講者データを預けるため、個人情報の取扱いとセキュリティも確認する
ハラスメント防止、情報セキュリティ、個人情報の取扱い。全社員に毎年届けたい研修は多いのに、集合研修では日程が合わず、資料を配るだけでは読まれたかどうか分かりません。
eラーニングを使うと、各自の都合で受講でき、受講状況も記録できます。この記事では、コンプライアンス研修用のeラーニングサービスを選ぶときのポイントを、特定の製品に偏らずに整理します。研修全体の組み方は中小企業の年間研修計画のつくり方を参照してください。
まず目的と対象を決める
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 必須にする研修 | ハラスメント防止(年1回)、情報セキュリティ(年1回)、個人情報(入社時) |
| 対象者 | 全社員、管理職のみ、パート・アルバイトを含むか |
| 受講期限 | 配信から1か月以内 |
| 記録の使い道 | 未受講者への督促、受講率の報告、受講の証跡 |
| 受講環境 | パソコンのない現場の社員はスマートフォンで受講するか |
ハラスメント防止措置では、方針の周知・啓発が会社の義務になっており、研修はその方法の一つです(→ハラスメント防止措置の総点検)。
チェックポイント1:既製教材
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| テーマの範囲 | ハラスメント(パワハラ・セクハラ・マタハラ・カスハラ)、情報セキュリティ、個人情報、労働時間管理など、必要なテーマがそろうか |
| 更新の頻度 | 法改正があったとき、いつ教材が更新されるか。更新の実績 |
| 対象者別 | 一般社員向け・管理職向けの教材が分かれているか |
| 長さ | 1本10〜20分程度に分かれているか |
| 確認テスト | 理解度テストがあり、合格基準を設定できるか |
| 監修・出典 | 内容の根拠が示されているか |
2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策と求職者等へのセクシュアルハラスメント防止対策が事業主の義務になりました(→カスハラ対策の義務化)。既製教材がこうした改正に対応しているか、配信前に内容を確認します。
既製教材は一般的な内容です。自社の相談窓口・社内規程・報告ルールは、教材の前後に自社の資料を加えて伝えます。
チェックポイント2:受講管理
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 受講者の登録 | CSVで一括登録できるか、人事データと連携できるか |
| 受講状況 | 未受講・受講中・修了を一覧で見られるか |
| 督促 | 期限前・期限後に自動で通知を送れるか。上長にも通知できるか |
| 記録の出力 | 受講日・テスト結果をCSVなどで出力できるか |
| 記録の保存期間 | 過去の受講記録をいつまで見られるか |
| 入退社 | 退職者の削除、入社者への自動配信 |
受講記録は、研修を実施した証跡になります。年度ごとに出力し、社内で保存しておくと安心です。
チェックポイント3:自社教材の配信
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| アップロードできる形式 | スライド(PDF)、動画、テストを自社で作れるか |
| 容量 | 動画の容量や本数に上限があるか |
| 入社時研修 | 入社者向けのコースを作り、自動で割り当てられるか |
| 規程の確認 | 規程を読んだうえで「確認しました」の記録を残せるか |
自社教材をAIで作る場合の注意は社内研修資料をAIで作るときの注意で解説しています。入社時の教材は入社オリエンテーション資料をAIで作るも参考になります。
チェックポイント4:受講時間の扱い
会社が受講を義務づけている研修の時間は、労働時間にあたります。厚生労働省のガイドラインでも、参加が業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講は労働時間として扱うこととされています。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 受講する時間帯 | 原則として所定労働時間内に受講する |
| 時間外に受講した場合 | 時間外労働として扱い、勤怠に記録する |
| パート・アルバイト | 勤務時間内に受講時間を確保する |
「自宅で空いた時間に受講して」とだけ伝えると、未払い残業の原因になります。労働時間の考え方は労働時間の把握を参照してください。
チェックポイント5:個人情報とセキュリティ
eラーニングサービスには、社員の氏名・メールアドレス・所属・受講記録を預けます。個人データの取扱いを外部に委託する場合、会社には委託先を監督する義務があります。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| ログイン | シングルサインオン、二要素認証に対応しているか |
| 管理者権限 | 人事担当・部署長などで閲覧できる範囲を分けられるか |
| データの保管 | 保管場所、バックアップ、解約時のデータ削除 |
| 委託に関する契約 | 個人情報の取扱いに関する条項、再委託の有無 |
| セキュリティの説明資料 | 第三者認証の取得状況、セキュリティの方針 |
社内の情報セキュリティの基本は情シス兼任総務の情報セキュリティ最低限チェック、個人情報の管理は個人情報の管理で整理しています。
費用の比べ方
料金はユーザー数課金、教材ごとの課金、年額の定額など、サービスによって異なり、変わることもあります。比べるときは次の点をそろえます。
- 受講者数(パート・アルバイトを含むか)
- 必要な教材の本数と追加費用
- 自社教材の配信にかかる費用
- 契約期間と途中の人数増減の扱い
必ず各社の最新の資料と見積もりで確認してください。
トライアルで確かめること
- 担当者と現場の社員2〜3名で、教材を1本ずつ受講する
- スマートフォンでの見やすさ、途中から再開できるかを確かめる
- 未受講者への督促メールを送ってみる
- 受講記録を出力する
- 自社のスライドを1本アップロードしてみる
配信後の運用
| 時期 | やること |
|---|---|
| 配信時 | 受講の目的・期限・受講してよい時間帯を全社に案内する |
| 期限の1週間前 | 未受講者に督促。必要に応じて上長にも連絡 |
| 期限後 | 受講率を集計し、未受講者に個別に連絡する |
| 年度末 | 受講記録を出力して保存。テストで正答率の低かった問題を確認 |
受講率が低い場合は、教材が長すぎる、受講の時間が確保されていない、といった原因が考えられます。現場の社員には勤務時間内に受講時間を設定するなど、受講しやすい環境を整えることも担当者の役割です。
テストの正答率が低かったテーマは、翌年の研修で重点的に扱います。集合研修や管理職研修と組み合わせて、年間の研修計画に反映させます(→研修計画表のテンプレート)。
まとめ
- 「全員に届け、記録を残す」を目的に、既製教材・受講管理・自社教材の配信で比べる
- 既製教材は法改正への対応の早さを確認し、自社の相談窓口や規程を加えて使う
- 義務づける研修の受講時間は労働時間として扱う
- 受講者データを預けるため、個人情報の取扱いとセキュリティを確認する。料金は各社の最新資料で確認する