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特別教育が必要な業務と実施の手順|フォークリフト1t未満・低圧電気・フルハーネスなど、技能講習との違いと記録の3年保存

フォークリフト(最大荷重1t未満)の運転、低圧の電気取扱い、フルハーネス型墜落制止用器具を使う高所作業などに従業員を就かせるときは、労働安全衛生法第59条第3項の特別教育が必要です。労働安全衛生規則第36条の主な対象業務、免許・技能講習(第61条の就業制限)との違い、実施方法と外部機関の使い方、受講時間の扱い、記録の3年保存、職長教育が必要な業種を整理します。

対象読者
倉庫・工場・設備管理などの現場がある、従業員30〜300名の企業の労務・安全衛生担当者
難易度
実務
所要時間
読了8分
最終確認日

この記事のポイント

  • 省令で定める危険・有害な業務に就かせるときは、その業務に関する特別教育が必要(安衛法第59条第3項、安衛則第36条)。フォークリフト1t未満、低圧電気、アーク溶接、足場の組立て、フルハーネスでの高所作業などが対象
  • 最大荷重1t以上のフォークリフトなどは、特別教育ではなく免許・技能講習の修了がないと就かせられない(安衛法第61条、施行令第20条)。荷重などの区分で必要な資格が変わる
  • 特別教育は社内でも外部機関でも行える。業務として受けさせるため受講時間は労働時間として扱い、受講者・科目などの記録を3年間保存する(安衛則第38条)

倉庫で新しく入ったパートさんに小さなフォークリフトを運転してもらう。設備担当に分電盤まわりの作業を任せる。こうした場面で必要になるのが「特別教育」です。運転免許を持っている、前の職場で乗っていた、というだけでは足りません。

雇入れ時の安全衛生教育は全社員が対象ですが、特別教育は業務ごとに必要になります。この記事では、どの業務が対象か、資格(技能講習)との違い、実施と記録の方法を整理します。雇入れ時教育は雇入れ時の安全衛生教育で解説しています。

特別教育とは

労働安全衛生法第59条第3項は、危険または有害な業務で厚生労働省令で定めるものに労働者を就かせるときは、その業務に関する安全または衛生のための特別の教育を行わなければならないと定めています。対象業務は労働安全衛生規則第36条に列挙されています。

長野労働局は、監督指導で安全衛生教育に関する法令違反が認められているとして、事業主に教育の実施を呼びかけています。教育をしないまま業務に就かせると、労災が起きたときに会社の責任が問われるだけでなく、法違反として罰則の対象にもなります。

主な対象業務(安衛則第36条)

第36条には40以上の業務が挙げられています。中小企業で見落としやすいものを抜き出すと次のとおりです。

号 業務 よくある場面
1 研削といしの取替え・取替え時の試運転 グラインダーの砥石交換
3 アーク溶接機を用いる金属の溶接・溶断 製造・設備保全
4 高圧・特別高圧の充電電路の作業、低圧の充電電路の敷設・修理、配電盤室等の低圧の開閉器の操作 設備担当の電気作業
4の2 対地電圧50Vを超える蓄電池を内蔵する自動車の整備 ハイブリッド車・電気自動車の整備
5 最大荷重1t未満のフォークリフトの運転(道路上の走行を除く) 倉庫・工場内の荷役
5の4 テールゲートリフターの操作(荷の積み卸しを伴うもの) トラックの荷台昇降機
10の5 作業床の高さ10m未満の高所作業車の運転 設備点検・看板作業
15・16 つり上げ荷重5t未満のクレーン、1t未満の移動式クレーンの運転 工場の天井クレーン
19 つり上げ荷重1t未満のクレーン等の玉掛け クレーン作業の補助
26 酸素欠乏危険場所における作業 ピット・タンク内の作業
29 特定粉じん作業 研磨・粉体の取扱い
31・32 産業用ロボットの教示等・検査等 製造ライン
39 足場の組立て・解体・変更(地上での補助作業を除く) 建設・設備工事
41 高さ2m以上で作業床を設けることが困難な場所での、フルハーネス型墜落制止用器具を用いる作業 屋根・高所の設備作業

自社の業務が当たるかは、作業内容を第36条の文言と照らし合わせて判断します。迷うときは所轄の労働基準監督署に確認してください。

技能講習・免許との違い

荷重などが大きくなると、特別教育ではなく免許や技能講習の修了が必要になります。労働安全衛生法第61条は、施行令第20条の業務について、資格を持つ人でなければ就かせてはならないと定めています(就業制限)。

業務 特別教育でよい範囲 技能講習・免許が必要な範囲
フォークリフト 最大荷重1t未満 最大荷重1t以上
移動式クレーン つり上げ荷重1t未満 1t以上
クレーン つり上げ荷重5t未満 5t以上
玉掛け 1t未満のクレーン等 1t以上
高所作業車 作業床の高さ10m未満 10m以上
区分 誰が行う 修了の証明
特別教育 事業者(社内講師でも外部機関への委託でもよい) 事業者が記録を作成・保存
技能講習 都道府県労働局長の登録を受けた登録教習機関 修了証が交付される
免許 都道府県労働局長(試験など) 免許証

厚生労働省は、特別教育について、事業者が行わなければならず、内容は法令で定められ、講師には十分な知識・経験が必要としています。外部機関に委託してもよく、その機関に労働局への登録は不要とされています。

実施の手順

  1. 対象業務と対象者を洗い出す:現場の作業と使う機械を一覧にし、第36条と第61条の業務を確認する
  2. 教育の方法を決める:社内に講師になれる人がいるか、外部の講習(労働災害防止団体や教習機関が行うものなど)を使うかを決める
  3. 科目と時間を確認する:業務ごとの科目と時間は、厚生労働大臣が定める特別教育規程(告示)で決まっている。外部講習を使う場合は、規程どおりのカリキュラムかを確認する
  4. 業務に就かせる前に受講させる:配置換えで新たに対象業務を担当する人も同じ
  5. 記録を作る:受講者、科目、実施日などの記録を作成し、3年間保存する(安衛則第38条)

すでに十分な知識と技能を持つ人については、その科目を省略できます(安衛則第37条)。ただし、前職での受講を理由に省略する場合は、修了証の写しなどで内容を確認し、記録に残しておきます。

受講時間と費用

職場のあんぜんサイトは、特別教育の時間は労働時間であり、所定労働時間外に行った場合は割増賃金の支払いが必要としています。事業場外で行う場合の講習費や旅費も、事業者が負担するものとされています。受講を本人の休日や自己負担にしないよう、シフトと予算に組み込みます。

職長教育が必要な業種

労働安全衛生法第60条は、一定の業種で、新たに職務につく職長など(作業中の労働者を直接指導・監督する人)に安全衛生教育を行うよう定めています。対象業種は施行令第19条で、建設業、製造業(たばこ製造業、一部の繊維工業、衣服その他の繊維製品製造業、紙加工品製造業を除く)、電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業です。

教育する事項と時間は安衛則第40条に定めがあり、作業手順の定め方、指導・教育の方法、リスクアセスメント、異常時・災害発生時の措置などを合計12時間以上行います。現場リーダーを任命するときに、特別教育とあわせて確認してください。

管理のコツ

  • 安全衛生教育の実施記録に、教育の種類・科目・時間・保存期限を1行で残す
  • 対象業務の担当者一覧を作り、異動や新規採用のたびに受講済みかを確認する
  • 年間の受講予定を年間研修計画表に入れ、繁忙期を避けて外部講習を予約する
  • 外国人従業員には、理解できる言語の教材を使う。職場のあんぜんサイトに外国語の教材がある

有機溶剤の取扱いや高さ2m以上のはい作業など、作業を指揮する作業主任者の選任が必要な作業もあります(→作業主任者の選任が必要な作業と選び方)。

まとめ

  • 省令で定める危険・有害な業務に就かせる前に、業務ごとの特別教育が必要。フォークリフト1t未満、低圧電気、フルハーネスなどは見落としやすい
  • 1t以上のフォークリフトなどは技能講習・免許が必要で、特別教育では足りない
  • 特別教育は社内でも外部でもよい。受講時間は労働時間として扱い、記録を3年間保存する
  • 製造業・建設業などでは、新任の職長への職長教育も必要

この記事で使えるテンプレート

CSV 労務 安全衛生教育 実施記録 雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育や特別教育などを、受講者ごとに1行で記録する一覧表です。教育の種類、実施日、科目(雇入れ時教育の8項目)、時間、講師、確認方法、保存期限まで記録でき、特別教育の記録の3年保存にも使えます。 CSV 人事 年間研修計画表 1年間の社内研修・外部研修を一覧で計画し、実施結果まで記録できる表です。法定の教育と任意の研修を分け、対象者・時期・講師・費用・助成金の活用予定・受講実績を1行で管理できます。 CSV 労務 免許・技能講習・特別教育 修了者管理台帳 危険・有害な業務に就く従業員について、免許・技能講習の修了・特別教育の受講を1人1資格1行で管理する台帳です。区分、対象業務、修了日、証明書の番号と保管場所、特別教育の記録の保存期限、現在の担当業務との対応を記録し、無資格での就業を防ぐ確認に使えます。

この記事に出てくる用語

安全衛生教育
労働災害を防ぐために、雇入れ時や作業内容の変更時などに行う教育です。労働安全衛生法で、業種や規模にかかわらず会社に義務づけられています。
所定労働時間
就業規則や労働契約で会社が決めた、始業から終業までの時間から休憩時間を除いた労働時間です。法定労働時間の範囲内で定めます。
労働基準監督署
労働基準法・労働安全衛生法などが守られているかを監督する厚生労働省の機関です。36協定や就業規則の届出先で、労災保険の給付の窓口でもあります。
割増賃金
時間外労働・休日労働・深夜労働をさせたときに、通常の賃金に上乗せして支払う賃金です。率は労働基準法と政令で定められています。

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出典・参考資料

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