労務 #安全衛生#労働安全衛生#届出

作業主任者の選任が必要な作業と選び方|有機溶剤・はい作業・プレス機械など、技能講習と免許、氏名の掲示と不在時の対応

有機溶剤を使う塗装、倉庫での高さ2m以上の荷の積み下ろし、動力プレス5台以上の工場などでは、労働安全衛生法第14条により、免許や技能講習を修了した人から作業主任者を選任しなければなりません。選任が必要な主な作業、資格の種類、選任後の掲示と職務、交替制や複数現場での運用、特別教育・職長教育との違いを整理します。

対象読者
製造・物流・建設関連の現場を持つ、安全衛生の担当を兼ねる従業員30〜300名の企業の総務・労務担当者
難易度
実務
所要時間
読了8分
最終確認日

この記事のポイント

  • 作業主任者は、労働安全衛生法施行令第6条が定める危険・有害な作業ごとに、免許または技能講習を修了した人から選任する。人数規模に関係なく、その作業を行えば必要になる
  • 選任したら、氏名と行わせる事項を作業場の見やすい場所に掲示するなどで周知する(安衛則第18条)。労働基準監督署への選任報告の様式はないが、選任していないと第119条の罰則の対象になる
  • 作業主任者は「資格を持っている人がいる」だけでは足りない。作業の指揮や設備の点検など定められた職務を、作業のときに実際に行える体制(交替勤務・複数現場への配置)を作る

「倉庫で荷を高く積む作業に作業主任者が要る、と監督署に言われた」「塗装工程で有機溶剤を使っているが、誰が作業主任者なのか分からない」。作業主任者は、危険・有害な作業の現場で労働者を直接指揮する人で、作業ごとに法律で選任が義務づけられています。従業員数の基準はなく、その作業を行う限り、小規模な事業場でも必要です。

この記事では、選任が必要な主な作業、資格、選任後にやることを整理します。フォークリフトの運転などに必要な特別教育・技能講習は特別教育が必要な業務、50人以上の事業場で選ぶ安全管理者などは安全管理者の選任を参照してください。

法律の定め

労働安全衛生法第14条は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で政令で定めるものについて、事業者は、都道府県労働局長の免許を受けた者または登録教習機関が行う技能講習を修了した者のうちから、作業の区分に応じて作業主任者を選任し、作業に従事する労働者の指揮などを行わせなければならないと定めています。

対象の作業は労働安全衛生法施行令第6条に列挙されており、作業主任者の名称と必要な資格は労働安全衛生規則第16条・別表第1で決まっています。違反した場合は、第119条により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります。

選任が必要な主な作業

施行令第6条の作業のうち、中小企業の現場で該当しやすいものを抜き出しました。正確な範囲(台数・高さ・容量などの条件)は施行令の条文で確認してください。

作業(施行令第6条) 主な場面 作業主任者の資格
屋内作業場等での有機溶剤の製造・取扱い(第22号) 塗装、洗浄、印刷、接着 有機溶剤作業主任者技能講習
特定化学物質の製造・取扱い(第18号) めっき、化学品の取扱い、溶接(溶接ヒューム) 特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習(金属アーク溶接等は限定技能講習も可)
酸素欠乏危険場所での作業(第21号) タンク・ピット・マンホール内の清掃・点検 酸素欠乏危険作業主任者技能講習、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習
高さ2m以上のはい付け・はい崩し(第12号) 倉庫での袋物・箱物の積み上げ・取り崩し(荷役機械の運転者のみで行うものを除く) はい作業主任者技能講習
動力プレス機械を5台以上有する事業場での当該機械による作業(第7号) 金属加工 プレス機械作業主任者技能講習
木材加工用機械を5台以上(自動送材車式帯のこ盤を含む場合は3台以上)有する事業場での作業(第6号) 製材、家具製造 木材加工用機械作業主任者技能講習
一定規模以上の乾燥設備による加熱乾燥(第8号) 塗装後の乾燥炉など 乾燥設備作業主任者技能講習
ボイラー(小型ボイラーを除く)の取扱い(第4号) 工場・ビルのボイラー ボイラー技士免許など
足場(つり足場・張出し足場・高さ5m以上)の組立て・解体等(第15号) 建設、設備工事 足場の組立て等作業主任者技能講習
掘削面の高さ2m以上の地山の掘削(第9号) 土木、配管工事 地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習
石綿等の取扱い(第23号) 解体・改修工事 石綿作業主任者技能講習

技能講習は、講習ごとに登録を受けた登録教習機関で受講します(講習の種類と対象作業は愛知労働局の一覧などで確認できます)。各地の労働局が登録教習機関の一覧を公開しています。

化学物質を扱う職場では、2024年から化学物質管理者の選任なども求められています。作業主任者とは別の仕組みなので、化学物質の自律的管理もあわせて確認してください。

選任後にやること

氏名と職務の掲示

労働安全衛生規則第18条は、作業主任者を選任したときは、氏名と、その人に行わせる事項を作業場の見やすい箇所に掲示するなどにより関係労働者に周知することを求めています。掲示板に「有機溶剤作業主任者 ○○○○(職務:作業方法の決定と指揮、局所排気装置の点検、保護具の使用状況の監視)」のように示しておきます。

労働基準監督署への選任報告の様式は定められていません。その分、社内に選任の記録(辞令や選任通知、資格の修了証の写し)を残しておくことが、監督署の調査で説明する材料になります。

職務を実際に行わせる

作業主任者の職務は、作業ごとに各規則で定められています。有機溶剤であれば、作業方法の決定と指揮、局所排気装置などの点検、保護具の使用状況の監視などです(有機溶剤中毒予防規則)。「資格者が社内にいる」だけでは足りず、作業が行われるときに現場で職務を果たせることが必要です。

複数選任と職務の分担

同じ場所で同じ作業に作業主任者を2人以上選任したときは、それぞれの職務の分担を定めなければなりません(安衛則第17条)。

よくある運用上の課題

課題 対応の考え方
交替制・シフト制で作業主任者が不在の時間帯がある 各直に1人以上の有資格者を配置できるよう、計画的に技能講習を受けさせる
現場が複数あり、1人が掛け持ちしている 作業主任者が指揮できない現場が生じないよう、現場ごとに選任する
有資格者が退職・異動した 後任の選任と掲示の更新を忘れない。退職予定が分かった時点で受講を手配する
修了証を紛失した 交付を受けた登録教習機関で再交付を受ける(機関が廃止されている場合は指定機関で証明書を受ける)

技能講習は日程が限られ、受講までに時間がかかることがあります。資格者の一覧(氏名・資格・修了日・配置)を作り、退職や異動に備えて2人以上の有資格者を育てておくと安心です。教育の記録は安全衛生教育の実施記録の様式で管理できます。

特別教育・職長教育との違い

制度 根拠 対象 位置づけ
作業主任者 安衛法第14条 施行令第6条の作業 作業を指揮する人を選任する義務
就業制限(免許・技能講習) 安衛法第61条 フォークリフト(1t以上)の運転など その業務に就く本人の資格
特別教育 安衛法第59条第3項 安衛則第36条の業務 その業務に就く本人への教育
職長教育 安衛法第60条 施行令第19条の業種の新任職長 現場監督者への教育

1つの現場で複数が重なることもよくあります。例えば倉庫では、フォークリフトの運転者の資格(就業制限または特別教育)と、はい作業主任者の選任が両方必要になる場合があります。

まとめ

  • 施行令第6条の作業を行うなら、規模に関係なく作業主任者を選任する。資格は作業ごとに免許または技能講習
  • 選任したら氏名と職務を作業場に掲示し、選任の記録と修了証の写しを保管する
  • 作業のときに現場で職務を果たせる体制が必要。交替制・複数現場では人数を確保する
  • 特別教育・就業制限・職長教育とは別の制度。現場ごとに必要な資格を一覧で整理する

この記事で使えるテンプレート

CSV 労務 安全衛生教育 実施記録 雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育や特別教育などを、受講者ごとに1行で記録する一覧表です。教育の種類、実施日、科目(雇入れ時教育の8項目)、時間、講師、確認方法、保存期限まで記録でき、特別教育の記録の3年保存にも使えます。

この記事に出てくる用語

労働基準監督署
労働基準法・労働安全衛生法などが守られているかを監督する厚生労働省の機関です。36協定や就業規則の届出先で、労災保険の給付の窓口でもあります。

用語集の一覧を見る →

出典・参考資料

無料メルマガ

法改正アラート:改正の1ヶ月前に「やることリスト」が届く

月1回の定期号と、施行直前号でお届けします。今月やること・新着テンプレートもまとめて確認できます。