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出産育児一時金と家族出産育児一時金|50万円の内訳、直接支払制度・受取代理、退職後6か月以内の出産と今後の制度改正

出産育児一時金は、健康保険の被保険者や被扶養者が妊娠85日以上で出産したときに1児につき原則50万円が支給される給付です。協会けんぽと厚生労働省の案内をもとに、直接支払制度と受取代理制度、差額の申請、家族出産育児一時金、退職後の出産、出産手当金との違い、2026年6月公布の改正法による給付体系の見直しを整理します。

対象読者
従業員や従業員の配偶者の出産について、出産育児一時金の案内を求められた従業員30〜300名の企業の労務担当者
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この記事のポイント

  • 健康保険の被保険者が出産すると出産育児一時金、被扶養者が出産すると被保険者に家族出産育児一時金が支給される(健康保険法第101条・第114条)。2023年4月以降の出産は、産科医療補償制度の対象となる出産で1児50万円、それ以外は48.8万円
  • 多くの医療機関では直接支払制度が使え、健康保険から医療機関に直接支払われる。費用が一時金より少なければ差額を本人が申請する。申請は原則本人が保険者に行う。協会けんぽの申請書には、出産手当金と違って事業主の証明欄がない
  • 1年以上被保険者だった人が退職後6か月以内に出産すると、退職した会社の健康保険から受けられる(第106条)。2026年6月公布の改正法で、出産費用の自己負担をなくす新しい給付体系への移行が決まったが、施行日と金額は今後決まる

「出産費用はいくら出るのですか」「夫の会社の健康保険でももらえますか」。妊娠を報告した従業員や、配偶者が出産する従業員から、こうした質問を受けることがあります。出産育児一時金は健康保険の給付で、会社が支払うものではありませんが、制度を説明できると本人の不安を減らせます。

この記事では、協会けんぽと厚生労働省の案内をもとに、出産育児一時金の金額・受け取り方・退職後の扱いを整理します。産休中の所得を補う出産手当金は出産手当金の申請と事業主証明、保険料の免除は産休・育休中の社会保険料免除で解説しています。

出産育児一時金のしくみ

項目 内容
根拠 健康保険法第101条(本人)、第114条(被扶養者)
対象となる出産 妊娠85日(4か月)以降の出産。早産・死産(流産)・人工妊娠中絶も含む
支給額(2023年4月1日以降の出産) 産科医療補償制度に加入する医療機関等で妊娠22週以降に出産:1児50万円。それ以外(未加入の医療機関等での出産、妊娠22週未満の出産):1児48.8万円
多胎 胎児の数だけ支給(双子なら2児分)
支給元 加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)。国民健康保険の加入者は国民健康保険から
時効 受けられるようになった日(出産日)の翌日から2年(健康保険法第193条、協会けんぽの案内)

50万円は、本人分の48.8万円に産科医療補償制度の掛金相当分1.2万円を加えた額です。厚生労働省によれば、2023年4月に原則42万円から引き上げられました。健康保険組合によっては、独自の付加給付を上乗せしていることがあるため、加入先に確認するよう案内します。

被保険者本人と被扶養者の違い

出産する人 給付の名前 受け取る人
従業員本人(被保険者) 出産育児一時金 本人
従業員の被扶養者(妻など) 家族出産育児一時金 被保険者である従業員
共働きで妻が自分の勤務先の健康保険に加入 出産育児一時金 妻(妻の健康保険から)

共働きで夫婦それぞれが被保険者の場合は、出産した妻自身の健康保険から受けます。夫の健康保険から家族出産育児一時金を重ねて受けることはできません。同じ出産について支給されるのは1回だけです。

受け取り方は3通り

方法 流れ 本人の窓口負担
直接支払制度 退院までに医療機関等と「直接支払制度の利用に合意する文書」を交わす。医療機関等が健康保険に請求し、健康保険から医療機関等に直接支払われる 出産費用が一時金を超えた部分だけ
受取代理制度 厚生労働省に届け出た一部の医療機関等で利用できる。出産予定日まで2か月以内の人が「出産育児一時金等支給申請書(受取代理用)」を健康保険に事前に出す 出産費用が一時金を超えた部分だけ
本人が出産後に申請 出産費用をいったん全額医療機関等に払い、出産後に「出産育児一時金支給申請書」を健康保険に出す 全額をいったん支払う

直接支払制度を使えるかは医療機関等によって違います。協会けんぽのよくある質問では、直接支払制度を使う場合、協会けんぽへの事前の申請は不要で、医療機関等で手続をするとされています。

費用が一時金より少なかったとき

直接支払制度で出産費用が支給額を下回った場合は、差額を本人が受け取れます。協会けんぽでは、出産からおよそ3か月後に「出産育児一時金差額申請書」が送られてくるので、それで申請します。この通知が届く前に申請する場合は「出産育児一時金内払金支払依頼書」を使います(医療機関等との代理契約文書の写しや、出産費用の領収・明細書の写しを添付)。

支払いまでのつなぎ

協会けんぽには、出産育児一時金が支給されるまでの間、一時金の8割相当額を上限に無利子で貸し付ける出産費貸付制度があります。出産予定日まで1か月以内の人、または妊娠4か月以上で医療機関等への一時的な支払いが必要な人が対象です。会社として給与の前払いを検討する前に、こうした公的制度を案内するとよいでしょう。

会社の関わり方

出産育児一時金は、原則として本人(被保険者)が加入している健康保険に申請する給付です。協会けんぽの申請書には出産手当金のような事業主の証明欄はなく、医師・助産師または市区町村長の証明を受けて本人が提出します。会社が手続をする場面は多くありません(健康保険組合の様式は加入先で確認してください)。会社がやることは主に次の3つです。

退職後に出産したとき

1年以上被保険者だった人が資格を失った日から6か月以内に出産したときは、最後に加入していた健康保険から出産育児一時金を受けられます(健康保険法第106条)。

要件 内容
被保険者期間 資格喪失日の前日まで継続して1年以上(任意継続被保険者の期間は含めない)
出産の時期 資格喪失後6か月以内
注意 退職後に夫の健康保険の被扶養者になった場合などは、どちらか一方からしか受けられない。退職後に直接支払制度を使うときは、協会けんぽでは「健康保険被保険者資格喪失等証明書」を医療機関等に示す

被保険者だった従業員の資格喪失後に、その被扶養者だった家族が出産しても、家族出産育児一時金は支給されません。退職を控えた従業員には、任意継続と国民健康保険の違いとあわせて説明しておくと安心です。

2026年改正法による給付体系の見直し

2026年6月5日に公布された「健康保険法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第31号)で、出産の給付体系の見直しが決まりました。厚生労働省の概要資料では、次の内容が示されています。

項目 内容
分娩費の現物給付化 保険診療以外の分娩対応について国が分娩1件当たりの基本単価を全国同水準で設定し、健康保険から施設に直接支給して、妊婦に負担が生じないようにする。具体的な給付水準は告示事項
全ての妊婦への現金給付 これとは別に、保険診療の一部負担金など出産時の費用負担を軽くするため、全ての妊婦に定額の現金給付を行う。金額は政令事項
経過措置 施設の選択により、当分の間、施設単位で現行の出産育児一時金の仕組みを使うことも可能
施行期日 公布後2年以内に政令で定める日

2026年10月16日の社会保障審議会医療保険部会の資料では、基本単価と現金給付の水準、施行時期などを検討し、2026年12月頃をめどに制度の全体像を取りまとめる案が示されています。施行までは現在の出産育児一時金の制度が続きます。新しい制度の開始日と金額は、厚生労働省の発表で確認してください。

まとめ

  • 出産育児一時金は、妊娠85日以上の出産で1児につき原則50万円(産科医療補償制度の対象外は48.8万円)。被扶養者の出産は家族出産育児一時金
  • 受け取り方は直接支払制度・受取代理制度・出産後の本人申請の3通り。差額は本人が申請する
  • 申請は本人が加入先の健康保険に行い、事業主証明は不要。会社は制度の全体像を案内する
  • 1年以上加入していた人は、退職後6か月以内の出産なら最後の健康保険から受けられる
  • 2026年6月公布の改正法で新しい給付体系への移行が決まった。施行日と金額は今後の政令・告示で決まる

この記事に出てくる用語

育児休業給付
雇用保険の被保険者が育児休業を取ったときに支給される給付です。休業開始から180日までは賃金の67%、それ以降は50%が目安です。
協会けんぽ
全国健康保険協会の通称で、主に中小企業の会社員とその家族が加入する健康保険の保険者です。保険料率は都道府県ごとに決まります。
健康保険
会社員などが加入する公的医療保険で、業務外の病気・けが、出産、死亡に対して給付を行います。保険者は協会けんぽと健康保険組合です。
産前産後休業
出産予定日の6週間前(多胎は14週間前)から請求により休める産前休業と、出産の翌日から8週間の産後休業のことです。期間中は社会保険料が免除されます。
出産育児一時金
健康保険の被保険者や被扶養者が出産したときに支給される一時金で、原則として1児につき50万円です。
出産手当金
健康保険の被保険者が出産のために会社を休み、給与が受けられないときに支給される手当金です。産前42日・産後56日のうち休んだ日が対象です。
任意継続
退職して健康保険の資格を失った人が、本人の希望で最長2年間、それまでの健康保険に加入し続けられる制度です。保険料は全額自己負担になります。
被扶養者
健康保険の被保険者に生計を維持されている家族で、保険料の負担なく健康保険の給付を受けられる人です。原則として年収130万円未満などの要件があります。
マイナ保険証
健康保険証としての利用登録をしたマイナンバーカードのことです。従来の健康保険証は2025年12月1日で有効期限が終わり、マイナ保険証か資格確認書で受診する運用になっています。

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