契約社員・パートの正社員登用制度の作り方|パート有期法13条の転換措置、選考基準と規程例
パートタイム・有期雇用労働法は、短時間・有期雇用労働者を通常の労働者(正社員)へ転換するための措置を事業主に義務づけています。3つの措置の中身、無期転換との違い、登用の対象・基準・選考方法・転換後の労働条件の決め方、規程例、キャリアアップ助成金の前に確認することを整理します。
- 対象読者
- 有期契約社員・パートの正社員登用を制度化したい従業員30〜300名の企業の人事担当者
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この記事のポイント
- 事業主は、正社員募集の周知、正社員配置の希望を申し出る機会の付与、転換試験制度など、いずれかの転換推進措置を講じる義務がある(パート有期法第13条)
- 無期転換(5年ルール)は契約期間が無期になるだけで、正社員になるわけではない。正社員登用は会社が制度として別に設ける
- 登用制度は、対象者・基準・選考の時期と方法・転換後の労働条件を規程に書き、雇入れ時に措置の内容を説明する
人手不足が続くなか、仕事ぶりを知っている契約社員やパートを正社員に登用する会社が増えています。一方で、「社長の判断でときどき登用している」「基準がないので本人に説明できない」という状態の会社も少なくありません。
正社員への転換を推進する措置は、パートタイム・有期雇用労働法で事業主に義務づけられています。この記事では、法律の要件を満たしつつ、運用しやすい登用制度のつくり方を整理します。
法律が求める3つの転換推進措置
パート有期法第13条は、事業主に対し、雇用する短時間・有期雇用労働者について、次のいずれかの措置を講じることを義務づけています。
| 措置 | 内容 | 運用例 |
|---|---|---|
| ① 募集内容の周知 | 正社員を募集するとき、業務内容・賃金・労働時間などの募集事項を、その事業所のパート・有期社員に周知する | 求人を出すときに社内掲示板・メールでも案内する |
| ② 配置希望の申出の機会 | 正社員の配置を新たに行うとき、その配置を希望する機会をパート・有期社員に与える | 社内公募で応募を受け付ける |
| ③ 転換試験制度など | 一定の資格を持つパート・有期社員を対象に、正社員への転換試験制度を設けるなど | 勤続1年以上の人を対象に年1回の登用試験を行う |
①だけでも義務は満たせますが、外部募集のたびに周知する必要があり、正社員の募集がない年は機会がありません。本人の意欲を引き出し、計画的に登用するなら、③の制度を設けるのが効果的です。
雇入れ時の説明も必要
パート・有期社員を雇い入れたときは、講じている転換推進措置の内容を速やかに説明する必要があります(パート有期法第14条第1項)。労働条件通知書や雇入れ時の説明資料に「正社員登用制度あり(年1回、勤続1年以上が対象)」などと書いておきます。
2026年10月からは、雇入れ時・更新時に、正社員との待遇の相違の内容・理由について説明を求められることも明示する必要があります(パート・有期雇用の労働条件明示事項の追加)。
無期転換との違い
| 項目 | 無期転換 | 正社員登用 |
|---|---|---|
| 根拠 | 労働契約法第18条(通算5年超で本人が申込み) | パート有期法第13条の措置、会社の制度 |
| 変わること | 契約期間が無期になる | 正社員の就業規則・賃金体系が適用される |
| 労働条件 | 原則として直前の有期契約と同じ(別段の定めがある部分を除く) | 正社員の労働条件になる |
| 会社の判断 | 申込みがあれば会社は拒めない | 選考・試験で会社が判断する |
無期転換した人を「正社員」と呼んでしまうと、正社員の賃金や賞与、退職金の適用を求められる原因になります。無期転換者に適用する就業規則を整えたうえで、正社員登用とは区別して運用しましょう(無期転換ルールの実務)。
登用制度で決めること
| 項目 | 決め方の例 |
|---|---|
| 対象者 | 勤続1年以上の契約社員・パートで、直近の評価がB以上の人 |
| 応募方法 | 本人の応募+所属長の推薦(推薦がなくても本人応募を認める) |
| 時期 | 年1回(例:毎年1月に募集、4月1日付で転換) |
| 選考方法 | 書類(実績・志望理由)、筆記または課題、面接 |
| 判断基準 | 正社員の等級基準で求める役割・能力を満たすか |
| 転換後の条件 | 正社員の等級・賃金表に格付け。試用期間の有無を決める |
| 勤続年数の通算 | 有期期間を年休・退職金の勤続年数に通算するか |
基準は正社員の等級制度とそろえる
選考基準を正社員の等級制度や評価項目とそろえておくと、転換後の格付けもスムーズです(賃金テーブル・等級制度のつくり方、人事評価制度)。「正社員になれるのは誰か」が明確になり、落ちた人にも理由を説明できます。
転換後の試用期間
すでに働きぶりを知っている人なので、試用期間を設けないか、短くする会社が多くあります。設ける場合は、規程に期間と目的を書きます(試用期間の設計)。
年次有給休暇の勤続年数
有期契約から正社員に切り替わっても、同じ会社で継続して働いている場合は、年次有給休暇の勤続年数は通算されます(有給休暇の付与日数と付与要件)。
規程例
第○条(正社員への登用) 1 会社は、勤続1年以上の契約社員およびパートタイマーのうち、本人が希望し、所定の選考に合格した者を、正社員に登用する。 2 登用の選考は、原則として毎年1月に行い、合格者は4月1日付で正社員とする。 3 選考は、書類審査、面接および会社が定める試験により行う。 4 正社員に登用された者の労働条件は、正社員就業規則および賃金規程による。 5 登用前の勤続期間は、年次有給休暇の算定において通算する。
規程を新設・変更する場合は、パート・有期社員を対象とする就業規則の変更として、意見聴取・届出・周知が必要です。パート・有期社員に関する就業規則をつくる・変えるときは、その過半数代表の意見を聴くよう努めることとされています(就業規則の作成・変更と届出)。
登用前の研修は労働時間になるか
登用試験の準備として研修を受けてもらう場合、その研修が労働時間に当たるかに注意が必要です。厚生労働省のリーフレットでは、形式上は自由参加の研修でも、受講が正社員になるための要件とされ、参加できるよう会社がシフトを調整していたなど、事実上参加が強制されていた事例は労働時間に該当すると考えられるとしています。登用の条件にする研修は、労働時間として賃金を支払う前提で計画しましょう。
キャリアアップ助成金を使う場合
有期雇用労働者などを正社員に転換した事業主には、キャリアアップ助成金(正社員化コース)があります。支給を受けるには、転換を実施する前に要件を満たしておく必要があります。
- 各コース実施日の前日までに、労働組合等の意見を聴いてキャリアアップ計画を作成・提出する
- 転換制度を就業規則などに定める
- 転換前後の賃金などの要件を満たす
支給額や要件は年度ごとに変わります。必ず厚生労働省の最新のパンフレットと支給要領で確認し、不明な点は管轄の労働局に相談してください(中小企業の雇用関係助成金の探し方)。
まとめ
- パート・有期社員の正社員への転換推進措置は事業主の義務。3つの措置のいずれかを講じ、雇入れ時に内容を説明する
- 無期転換と正社員登用は別の仕組み。呼び方と適用する規程を区別する
- 対象者・基準・時期・選考方法・転換後の条件を規程に書き、正社員の等級制度と基準をそろえる
- 助成金を使うなら、転換の前にキャリアアップ計画の提出と規程の整備を済ませる