求人の年齢制限は原則禁止|労働施策総合推進法9条の例外事由6つと、理由の提示・面接での注意点
労働者の募集・採用では、年齢にかかわりなく均等な機会を与えることが義務です(労働施策総合推進法第9条)。年齢制限が認められる例外事由(施行規則第1条の3第1項の1号〜3号ニ)の要件、上限年齢を設けるときの理由の提示義務、「35歳未満歓迎」などの表現、面接で年齢を理由に断ることの扱い、性別の均等との違いを条文と厚生労働省の資料で整理します。
- 対象読者
- 求人票・求人広告・採用サイトの募集要項を作る従業員30〜300名の企業の採用担当者
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この記事のポイント
- 募集・採用では原則として「年齢不問」にしなければならない(労働施策総合推進法第9条)。年齢制限ができるのは、施行規則第1条の3第1項の例外事由(定年を上限とする無期雇用の募集、法令による制限、若年者の長期キャリア形成、技能継承、芸術・芸能、60歳以上・国の施策の対象者)に当たる場合だけ
- 65歳以下の上限年齢を設けるときは、求人票や募集の書面にその理由を示す義務がある(高年齢者雇用安定法第20条、同法施行規則第6条の6)
- 求人票を年齢不問にしても、書類選考や面接で年齢を理由に不採用にすれば法違反になる。「35歳未満の方歓迎」のような表現も適当でないとされている
「若い人に長く働いてほしいので、30歳までで募集したい」。採用の現場では自然に出てくる発想ですが、求人に年齢制限を書くことは原則としてできません。2007年10月から、募集・採用で年齢にかかわりなく均等な機会を与えることが事業主の義務になっています。
この記事では、条文で決められた例外事由、上限年齢を設けるときの理由の提示、求人票の表現や面接での注意点を整理します。求人の出し方全体は中途採用の求人の出し方、求人票の書き方はハローワーク求人票の書き方を参照してください。
法律のルール:原則は「年齢不問」
労働施策総合推進法第9条は、事業主は、厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集・採用について「その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と定めています。施行規則第1条の3第1項は、この「定めるとき」を「例外事由に当たるとき以外のとき」としています。つまり、例外事由に当たらない限り、すべての募集・採用で年齢不問にする義務があります。
厚生労働省のリーフレットは、適用範囲を次のように説明しています。
| 項目 | 適用の範囲 |
|---|---|
| 募集の経路 | ハローワーク、民間の職業紹介、求人広告、自社サイトでの直接募集のすべて |
| 雇用形態 | 正社員・パート・アルバイト・派遣など形態を問わない |
| 選考の段階 | 求人票だけでなく、書類選考・面接での採否の判断も対象 |
違反した事業主は、厚生労働大臣(実務では労働局・ハローワーク)による助言・指導・勧告の対象になります(第42条第1項)。また、法令に違反する内容の求人は、ハローワークや職業紹介事業者が受理しないことができます(職業安定法第5条の6第1項第1号)。
年齢制限が認められる例外事由
例外事由は施行規則第1条の3第1項に限定列挙されています。厚生労働省のリーフレットの整理に沿うと、次の6つです。
| 例外事由 | 内容 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 1号 | 定年年齢を上限として、それ未満の人を募集 | 期間の定めのない労働契約(無期雇用)に限る |
| 2号 | 労働基準法などの法令で特定の年齢の就業が禁止・制限されている業務 | 例:18歳未満の危険有害業務・深夜業の制限 |
| 3号イ | 長期勤続によるキャリア形成のため、若年者等を募集 | 無期雇用、職業経験を問わない、新卒者と同等の処遇 |
| 3号ロ | 技能・ノウハウの継承のため、特定の職種で少ない年齢層を募集 | 無期雇用。年齢層の人数が厚生労働大臣の定める条件に合うこと |
| 3号ハ | 芸術・芸能の分野で表現の真実性などが求められる | 例:演劇の子役 |
| 3号ニ | 60歳以上の高年齢者、または国の雇用促進施策の対象の年齢層を募集 | 年齢層の限定は国の施策を活用する場合に限る |
1号:定年を上限にする
定年が60歳の会社が「60歳未満」で無期雇用の正社員を募集するのは認められます。リーフレットとQ&Aは、次のような例は認められないとしています。
- 有期契約(「契約期間1年・更新あり」など)の募集で上限年齢を付ける
- 定年と違う年齢(定年63歳なのに「60歳未満」)を上限にする
- 「40歳以上60歳未満」のように下限年齢を付ける
- 習熟期間を理由に、定年から数年差し引いた年齢を上限にする
- 継続雇用制度の上限年齢(例:65歳)を上限にする
3号イ:若年者の長期キャリア形成
中小企業で使われることが多いのがこの例外です。リーフレットとQ&Aでは、次のように説明されています。
- 対象は基本的に35歳未満の若年者を想定しているが、必ずしも35歳未満に限られない(勤続可能期間が極端に短くならないよう、おおむね45歳未満が目安)
- 職業経験を問わないことが必要。「営業経験者」「経験者優遇」などの条件は付けられない。実務経験が必要な資格(例:ファイナンシャルプランナー1級)も要件にできない。パソコンの基本操作など、職業経験がなくても身につく技能は記載できる
- 新卒者と同等の処遇(訓練・育成体制、配置、昇給・キャリアパス)で育成すること。初任給が多少違う程度は差し支えない
- 下限年齢(「18歳以上35歳未満」など)は付けられない。学歴が必要なら「高校卒業以上」と書けば足りる
なお、「来年3月卒業予定の人」のように年齢を書かずに新卒者だけを募集することは、年齢制限には当たらないとされています。ただし、「○年4月2日以降に生まれた人」は年齢制限に当たります。新卒採用での既卒者の扱いは若者雇用促進法の青少年雇用情報もあわせて確認してください。
3号ロ:技能継承
リーフレットでは、「特定の年齢層」は30〜49歳のうち5〜10歳幅の年齢層、「相当程度少ない」は同じ幅の上下の年齢層と比べて人数が2分の1以下の場合としています。職種は厚生労働省や総務省の職業分類の小分類などを参考にします。社内の年齢構成表を作って確認できる場合に限られるため、使う前にハローワークに相談すると安全です。
3号ニ:60歳以上・国の施策の対象者
「60歳以上の方を募集」は認められます。一方、「60歳以上70歳以下」のように上限を付けることはできません。特定求職者雇用開発助成金など国の施策の対象年齢に合わせて募集する場合は、その施策の対象年齢と一致させる必要があります。
上限年齢を設けるときは理由の提示が義務
例外事由に当たる場合でも、65歳以下の一定の年齢を下回ることを条件にする(上限年齢を設ける)ときは、求職者に理由を示さなければなりません(高年齢者雇用安定法第20条第1項)。
| 項目 | ルール |
|---|---|
| 提示の方法 | 求人票、募集を委託するときの書面など、募集・採用に使う書面や電子ファイルに理由を併せて記載する(同法施行規則第6条の6第1項・第2項) |
| 広告の紙面が限られる場合 | 新聞・雑誌などの広告で、あらかじめ記載することが難しいときは、求職者の求めに応じて遅滞なく書面などで示す(同条第3項) |
| 記載の例 | 「定年が60歳のため(例外事由1号)」「長期勤続によるキャリア形成を図るため、若年者を募集(例外事由3号イ)」 |
求人票・広告の表現で気をつけること
厚生労働省のQ&Aは、年齢不問とした求人の表現について、次のような考え方を示しています。
| 表現 | Q&Aの考え方 |
|---|---|
| 「年齢不問。35歳未満の方歓迎」 | 35歳以上の応募を妨げるおそれがあり、法の趣旨に照らし適当でない |
| 「学生歓迎」 | 年齢制限には当たらない |
| 「60歳以上の方歓迎」 | 例外事由3号ニに当たるため適法 |
| 「スタッフ全員20代」「20代が主役の会社」 | 年齢制限ではないが、20代でなければならないと誤解されないよう努める |
| 「○○業務の経験○年以上」 | 可能。ただし合理的な理由なく非常に長い年数を求めるのは事実上の年齢制限と解される |
| 「35歳以上は営業経験者に限る」 | 年齢で条件を変えており、適当でない |
施行規則第1条の3第2項は、職務の内容や必要な適性・能力・経験・技能の程度をできる限り明示するよう求めています。「若い人」と書きたくなったら、本当に求めているのが体力なのか、特定の技能なのか、育成期間なのかを言葉にして募集要項に書くのが基本です。求人広告全体の表示ルールは求人広告・採用サイトの表示ルールで整理しています。
書類選考・面接での注意
リーフレットは、「求人票は年齢不問としながら、年齢を理由に応募を断ったり、書類選考や面接で年齢を理由に採否を決定する行為は法の規定に反する」としています。また、本人の希望と関係なく「一定年齢以上はパートにする」など、年齢を理由に雇用形態や職種を変えることもできません。雇用形態や職種が違う募集は、別の求人票にします。
実務では次の点を押さえておきます。
- 応募者の年齢を知ること自体ではなく、年齢を理由に採否を決めることが問題になる。不採用の理由を記録するときは、職務に必要な能力・経験との関係で書く(面接の進め方と評価シート)
- 面接官に「年齢で決めない」ことを事前に共有する。社長や現場の責任者が年齢の希望を口にしがちな会社ほど、評価項目を事前に決めておく
- 18歳未満を採用する場合の制限は年少者を雇うときの制限と手続きを確認する
性別の均等(男女雇用機会均等法)との違い
募集・採用の均等は、性別についても男女雇用機会均等法第5条で義務づけられています。似ていますが、違いもあります。
| 項目 | 年齢(労働施策総合推進法) | 性別(男女雇用機会均等法) |
|---|---|---|
| 原則 | 年齢にかかわりなく均等な機会(第9条) | 性別にかかわりなく均等な機会(第5条) |
| 例外 | 施行規則第1条の3第1項の例外事由に限る | 女性の機会を改善するための措置(ポジティブ・アクション)は妨げない(第8条)など |
| 違反への対応 | 助言・指導・勧告(第42条第1項) | 助言・指導・勧告に加え、勧告に従わない場合の公表の規定がある |
まとめ
- 募集・採用は原則「年齢不問」。雇用形態や募集経路を問わず、求人票だけでなく選考での判断も対象になる
- 年齢制限ができるのは施行規則第1条の3第1項の例外事由に当たるときだけ。1号・3号イ・3号ロは無期雇用が前提
- 3号イ(若年者のキャリア形成)は、職業経験不問・新卒者と同等の処遇・下限年齢なしが条件
- 65歳以下の上限年齢を設けるときは、求人票などに理由を書く(高年齢者雇用安定法第20条)
- 「35歳未満歓迎」のような表現や、面接で年齢を理由に断ることは避け、求める能力・経験を具体的に書く
この記事で使えるテンプレート
人事 面接評価シート 面接官ごとの評価を同じ基準でそろえるための面接評価シートです。評価項目・5段階評価・評価の根拠となった発言・総合判定を1行1候補者で記録でき、Excelで集計できます。この記事に出てくる用語
- 継続雇用制度
- 定年に達した社員を、本人が希望すれば引き続き雇用する制度です。定年でいったん退職して新たに契約を結ぶ「再雇用制度」と、退職せずに雇用を続ける「勤務延長制度」があります。
- 高年齢者雇用安定法
- 定年の年齢、65歳までの雇用確保措置、70歳までの就業確保措置などを定めた法律です。正式名称は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」です。
- 深夜業
- 午後10時から午前5時までの間の労働です。25%以上の割増賃金が必要で、深夜業に常時従事する人には6か月ごとの健康診断が義務づけられています。
- 男女雇用機会均等法
- 募集・採用、配置・昇進、退職などの雇用の場面で、性別を理由とする差別を禁止する法律です。妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止や、セクハラ・マタハラの防止措置義務も定めています。
- 定年
- 一定の年齢に達したことを理由に労働契約が終了する制度です。定年を定める場合は60歳以上にしなければなりません。
- ハローワーク
- 厚生労働省の公共職業安定所の愛称です。職業紹介や求人の受付のほか、雇用保険の加入・喪失や給付の手続きの窓口になっています。
- 労働施策総合推進法
- 国の労働施策の基本を定める法律で、事業主には、パワハラ・カスハラの防止措置、外国人雇用状況の届出、募集・採用時の年齢制限の禁止などを義務づけています。
出典・参考資料
- e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(第9条 募集及び採用における年齢にかかわりない均等な機会の確保、第42条 助言・指導・勧告)
- e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則」(第1条の3 例外事由・応募者に求められる事項の明示)
- e-Gov法令検索「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(第20条 募集及び採用についての理由の提示等)
- e-Gov法令検索「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則」(第6条の6 理由の提示の方法)
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」(リーフレット・PDF)
- 厚生労働省「労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A」
- e-Gov法令検索「職業安定法」(第5条の6 求人の申込み)
- e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(第5条 性別を理由とする差別の禁止、第8条 女性労働者に係る措置に関する特例)