女性管理職を増やす施策|女性活躍推進法の「管理職」の定義と公表に合わせた進め方
2026年4月から、101人以上の企業に女性管理職比率の公表が義務づけられました。法律上の「管理職」(課長級以上)の定義を確認したうえで、自社の数値の出し方、課題の見つけ方、候補者のパイプラインづくり、メンター・ロールモデル、働き方の見直し、行動計画の目標との整合までを、厚生労働省の資料をもとに整理します。
- 対象読者
- 従業員101〜300名の企業で、女性活躍推進法の情報公表と人材育成を担当する人
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 女性活躍推進法の「管理職」は課長級と課長級より上位の役職(役員を除く)の合計。課長代理・課長補佐は一般に含まれない。社内の呼び方ではなく定義で数える
- 管理職比率は結果の数値なので、採用・係長級・管理職候補の各段階の男女比を並べて、どこで女性が減っているかを見つける
- 施策は、候補者の早期育成、メンター・ロールモデル、管理職の働き方の見直し、登用基準の点検を組み合わせる。行動計画の目標と公表項目をそろえる
2026年4月1日から、常時雇用する労働者が101人以上の企業に、男女間賃金差異とあわせて女性管理職比率の公表が義務づけられました。数値を出すこと自体は集計作業ですが、公表すれば求職者や取引先の目に触れます。数字を出すだけでなく、どう増やしていくかを説明できるようにしておきたいところです。
この記事では、法律上の「管理職」の数え方を確認したうえで、少人数の人事でも進められる施策を整理します。行動計画の策定・届出と公表の手順は女性活躍推進法の一般事業主行動計画の作り方と情報公表で解説しています。
公表義務の範囲(2026年4月施行)
| 常時雇用する労働者数 | 公表が必須の項目 |
|---|---|
| 301人以上 | 男女間賃金差異、女性管理職比率、「機会の提供」から1項目以上、「両立支援」から1項目以上 |
| 101〜300人 | 男女間賃金差異、女性管理職比率、14項目から1項目以上 |
| 100人以下 | 努力義務 |
初回の公表は、改正法の施行後に最初に終了する事業年度の実績を、次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に行います。厚生労働省の資料では、2027年3月末に事業年度が終わる企業はおおむね2027年6月末までとされています。改正の概要は女性活躍推進法改正(公表義務の拡大)にまとめています。
「管理職」は定義で数える
女性管理職比率の「管理職」は、課長級と**課長級より上位の役職(役員を除く)**の合計です。課長級とは次のいずれかに当たる人をいいます。
- 事業所で通常「課長」と呼ばれている人で、その組織が二係以上からなるか、構成員が10人以上(課長を含む)の組織の長
- 同じ事業所で、課長のほかに、呼称や構成員に関係なく、職務の内容と責任の程度が課長級に相当する人(一番下の職階ではないこと)
厚生労働省は、一般的に「課長代理」や「課長補佐」は課長級に当たらないとしています。
自社の役職を当てはめる手順
| 手順 | やること |
|---|---|
| 1 | 役職名ごとに、組織の規模(係の数、構成員数)と職務・責任を一覧にする |
| 2 | 定義の1・2に当てはまる役職に「課長級」の印をつける |
| 3 | 課長級より上位(部長、本部長など。役員を除く)を加える |
| 4 | 判定の根拠を記録し、毎年同じ基準で数える |
少人数の会社では、「マネージャー」「リーダー」などの呼称が課長級に当たるか迷うことがあります。呼び方ではなく、組織の規模と職務・責任で判定しましょう。労働基準法の「管理監督者」とは別の基準です(管理監督者の範囲)。
どこで女性が減っているかを見る
管理職比率は、採用から登用までの結果としての数値です。どこで女性が減っているかを見るために、段階ごとの男女比を並べます。
| 段階 | 見る数値の例 |
|---|---|
| 採用 | 採用者に占める女性の割合、応募者の男女比 |
| 定着 | 男女別の平均勤続年数、10年前後に採用した人の継続雇用割合 |
| 中堅 | 係長級に占める女性の割合 |
| 登用 | 管理職候補(昇格要件を満たす人)に占める女性、昇格試験の受験者・合格者の男女比 |
| 管理職 | 課長級・部長級の女性の割合 |
たとえば係長級には女性が多いのに課長級で急に減るなら、登用の基準や手順、管理職の働き方に原因があるかもしれません。係長級に女性が少ないなら、もっと手前の配置や育成に原因がありそうです。厚生労働省のメンター制度のマニュアル・事例集でも、企業の規模や女性管理職比率によって、感じている課題が違うことが紹介されています。
施策の組み合わせ
1. 候補者を早めに育てる
- 係長級・主任級の女性を候補者として名前で把握し、上司と育成計画を共有する
- 部下を持つ経験、予算や採用に関わる経験など、管理職に必要な経験を意識して割り当てる
- 研修は管理職になってからではなく、候補者の段階で行う(研修計画の立て方)
2. メンターとロールモデル
身近に手本となる女性管理職がいないことは、管理職を目指さない理由としてよく挙がります。社内の別部署の先輩がメンターとなって相談に乗る仕組みや、社外のネットワークでロールモデルに出会う機会は、少人数の会社でも取り入れやすい施策です。導入の手順はメンター制度の導入手順で解説しています。
3. 管理職の働き方を見直す
管理職になると長時間労働が当たり前になる職場では、育児や介護をしながら管理職を目指すのは難しくなります。
- 管理職の労働時間の実態を把握する(管理職も労働時間の把握の対象です。労働時間の把握)
- 会議の時間帯、夜の対応、休日の連絡などのルールを決める
- 短時間勤務やテレワーク中でも登用の対象から外さない
4. 登用の基準と手順を点検する
- 昇格の要件に「転勤できること」「長時間働けること」など、仕事の成果と関係の薄い条件が入っていないか
- 推薦が上司の印象だけで決まっていないか。基準を文書にし、複数の人で判断する(管理職登用の基準と昇格試験の設計)
- 評価者研修で、育児中の人の評価が下がりやすいといった偏りを取り上げる(評価者研修)
5. 本人の意思を確かめる
「管理職を打診したが断られた」という声もよく聞きます。断る理由が仕事量や両立への不安であれば、上の3の施策で解消できることがあります。キャリア面談や1on1で、本人の希望と不安を定期的に聞きましょう(キャリア面談、1on1ミーティング)。
行動計画と公表をそろえる
行動計画の目標に「女性管理職比率」を掲げる場合は、公表と同じ定義・同じ時点で数えます。目標は比率だけでなく、候補者数や研修の受講者数など、途中の段階の目標も置くと、取組の進み具合を説明しやすくなります。
公表時には「説明欄」を使って、数値の背景と取組を書くことができます。厚生労働省は、指標の大小だけに着目するのではなく、要因と課題を分析して改善に取り組むことが重要だとしています。
まとめ
- 女性管理職比率の「管理職」は課長級以上(役員を除く)。社内の呼び方ではなく、組織の規模と職務・責任で判定する
- 採用から登用までの段階ごとの男女比を並べ、どこで女性が減っているかを見つける
- 候補者の早期育成、メンター・ロールモデル、管理職の働き方の見直し、登用基準の点検を組み合わせる
- 行動計画の目標と公表の定義をそろえ、説明欄で背景と取組を伝える