人事 #人材育成#研修#助成金#安全衛生

中小企業の年間研修計画のつくり方:必須の研修・階層別研修の組み方と予算、助成金の調べ方

研修を思いつきで実施していると、必要な教育が抜けたり、毎年同じ内容を繰り返したりします。法律で必要な教育と、ハラスメント防止などの周知・啓発、階層別・職種別研修を一覧にして年間計画に落とし込む手順を解説します。人材開発支援助成金は制度の概要と確認先を紹介します。

対象読者
研修担当を兼ねる従業員30〜300名の企業の人事担当者
難易度
基本
所要時間
読了9分
最終確認日

この記事のポイント

  • まず「法律で必要な教育」(雇入れ時の安全衛生教育など)と「義務の措置の一部として行う研修」(ハラスメント防止の周知・啓発など)を押さえ、次に階層別・職種別の研修を足す
  • 研修計画は「対象者×テーマ×時期×方法×予算」の一覧表にする。繁忙期を避け、年度初めと下期の初めに集中させる
  • 人材開発支援助成金を使う場合は、訓練開始前の計画届が必要なコースが多い。要件は毎年度見直されるので、厚生労働省の最新のパンフレットで確認する

「新入社員研修はやっているが、それ以外は思いついたときだけ」という会社は少なくありません。研修計画を1枚の表にしておくと、必要な教育の抜け漏れを防げ、予算の説明もしやすくなります。一人人事でも回せる年間研修計画の作り方を紹介します。

研修を3つに分けて考える

区分 内容 例
① 法律で実施が必要な教育 実施しないと法令違反になるもの 雇入れ時・作業内容変更時の安全衛生教育、危険有害業務の特別教育
② 義務の措置の一部として行う研修 措置義務を果たすために、周知・啓発として行うもの ハラスメント防止の研修、情報セキュリティ・個人情報の取扱い
③ 会社が選んで行う研修 育成や組織づくりのために行うもの 新入社員研修、管理職研修、職種別のスキル研修

①②を先に計画に入れ、残りの予算と時間で③を組み立てます。

① 法律で実施が必要な教育

労働安全衛生法第59条により、会社は労働者を雇い入れたときと作業内容を変更したときに、従事する業務に関する安全・衛生の教育を行わなければなりません。業種や雇用形態(パート・アルバイトを含む)にかかわらず対象です。危険・有害な業務(フォークリフトの運転、研削といしの取替えなど省令で定める業務)に就かせるときは、別に特別教育が必要です。

入社のたびに行う教育なので、年間計画とは別に「入社時のメニュー」としてオンボーディング計画表に組み込むと漏れません。職場の安全衛生体制は「衛生管理者・産業医の選任義務」も参照してください。

② 措置義務の一部として行う研修

パワーハラスメント・セクシュアルハラスメントなどの防止措置として、会社は方針を周知・啓発することが求められています。研修はその代表的な方法です。2026年10月からはカスタマーハラスメント対策も事業主の義務になりました(「ハラスメント防止措置の総点検」)。

情報セキュリティや個人情報の取扱いも、事故を防ぐための教育として年1回は全員に行いたいテーマです(「情シス兼任総務の情報セキュリティ最低限チェック」「個人情報・マイナンバー管理の基本」)。

年間研修計画の作り方

ステップ1:育てたい人材像を決める

経営者に「3年後、どんな人が何人必要か」を聞きます。等級制度がある会社は、等級ごとの役割の定義がそのまま研修の目標になります(「小さな会社の賃金テーブル・等級制度のつくり方」)。業種別の職務と能力の整理には、厚生労働省の「職業能力評価基準」も使えます。

ステップ2:ニーズを集める

情報源 集めること
経営者・部門長 部門で足りない能力、来期の重点
人事評価・1on1 個人の課題、本人が学びたいこと(「1on1ミーティングの始め方」)
トラブル・事故の記録 ハラスメント相談、情報漏えいの未遂、労災などの再発防止
法改正 新しく周知が必要になった制度

ステップ3:一覧表にする

年間研修計画は、次の列を持つ一覧表で十分です。

対象 テーマ 区分 時期 方法 時間 予算 担当
新入社員 安全衛生教育・就業規則・情報セキュリティ ①② 入社時 社内 3時間 0円 人事・総務
新入社員 ビジネス基礎 ③ 4月 外部講座 2日 1人3万円 人事
全社員 ハラスメント防止 ② 6月 社内(動画+確認テスト) 1時間 0円 人事
全社員 情報セキュリティ・個人情報 ② 10月 eラーニング 1時間 年額契約 総務
新任管理職 労務管理の基礎(労働時間・ハラスメント・面談) ③ 4月・10月 社内+外部 半日 1人2万円 人事
中堅社員 後輩指導・OJTの進め方 ③ 7月 社内 2時間 0円 人事
営業職 商品知識・提案スキル ③ 随時 部門内OJT — — 営業部長

※金額は例です。

ステップ4:時期と方法を決める

  • 時期:繁忙期を避け、年度初めと下期の初めに集中させる。研修後に実践する期間をとれるようにする
  • 方法:社内講師、外部講座、eラーニング、OJT(日常業務の中での指導)を組み合わせる。全員向けの周知はeラーニングや動画にして、受講記録を残す
  • 労働時間:会社が参加を命じる研修や、参加しないと不利益がある研修は、労働時間として扱う。時間外に行えば割増賃金が必要(「労働時間の適正な把握義務」)

ステップ5:記録と振り返り

研修ごとに、受講者・日時・内容・資料を記録します。法定の教育やハラスメント防止の研修は、実施したことを後から示せることが大切です。年度末には、受講率と受講者アンケート、現場での変化を確認し、翌年の計画に反映します。

社内の推進体制

職業能力開発促進法では、事業主は計画的な能力開発のための計画(事業内職業能力開発計画)を作成すること、その実施などを担当する職業能力開発推進者を選任することに努めることとされています(第11条・第12条。いずれも努力義務)。小さな会社では人事担当者や総務の責任者が担うのが現実的です。

厚生労働省は「事業内職業能力開発計画」作成の手引きを公開しています。後述の人材開発支援助成金では、推進者の選任や計画の作成が要件になっているコースが多いため、助成金の活用を考えている会社は先に整えておくとよいでしょう。

人材開発支援助成金の概要

人材開発支援助成金は、職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練を、計画に沿って実施した事業主に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成する制度です。厚生労働省の案内では、人材育成支援コース、教育訓練休暇等付与コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コースなど、目的別に複数のコースが設けられています。

押さえておきたい点 内容
事前の届出 訓練を始める前に「職業訓練実施計画届」などの提出が必要なコースが多い。研修を実施した後では申請できない
対象となる訓練 時間数、訓練の内容(業務に関連しているか)、実施方法などに要件がある
社内の体制 職業能力開発推進者の選任、事業内職業能力開発計画の作成・周知などが求められる
見直し 助成率・助成額・要件は年度ごとに見直される

具体的な助成額や要件は、厚生労働省の「人材開発支援助成金」のページに掲載されている最新のパンフレット・支給要領で確認し、不明な点は管轄の都道府県労働局に問い合わせてください。研修を計画する段階(実施の数か月前)で確認しておくと、届出の期限に間に合います。

雇用関係の助成金全般の探し方と注意点は「中小企業の雇用関係助成金の探し方と注意点」にまとめています。社員が自ら教育訓練のために休暇をとる場合の雇用保険の給付については「教育訓練休暇給付金の創設」をご覧ください。

助成金を前提に研修を選ぶと、本来必要な研修が後回しになりがちです。まず自社に必要な研修を決め、そのうち要件に合うものに助成金を使う順番で考えましょう。

まとめ

  • 研修は「法律で必要な教育」「義務の措置としての研修」「会社が選ぶ研修」の3つに分け、前の2つから計画に入れる
  • 年間研修計画は「対象×テーマ×時期×方法×予算」の一覧表にし、受講記録を残す
  • 人材開発支援助成金は事前の届出が必要なコースが多い。要件は最新のパンフレットで確認する

この記事で使えるテンプレート

CSV 人事 入社オンボーディング計画表(30-60-90日) 入社後30日・60日・90日の到達目標と、やること・担当者・期限・完了状況を管理する計画表です。人事・上長・メンター(育成担当)で役割分担を共有し、中途入社者の早期定着を支えます。 DOCX 人事 人事評価シート(目標管理) 目標管理(MBO)による人事評価シートです。期初の目標設定、期中の進捗確認、期末の本人評価・評価者評価、行動評価、総合評価とフィードバックまでを1つの様式で運用できます。

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