年次有給休暇管理簿の「年5日」取得チェックをAIで効率化する:基準日ごとの集計表、未取得者の抽出、時季指定の案内文
年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者には、基準日から1年以内に5日を取得させる義務があります。年次有給休暇管理簿の集計表の作り方、取得が遅れている人の抽出、時季指定の案内文を生成AIで下書きする手順と、AIに入れない情報、人が確認する点を整理します。
- 対象読者
- 年次有給休暇の5日取得の管理を表計算ソフトで行っている、従業員30〜300名の企業の労務担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了7分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 使用者は、年10日以上の年休が付与される労働者に、基準日から1年以内に5日の年休を取得させなければならない。年次有給休暇管理簿には、時季・日数・基準日を労働者ごとに記録する
- AIには、集計表の列の設計、表計算ソフトの関数の作成、残り期間と未取得日数から「要フォロー」を判定する式、時季指定の案内文の下書きを任せる
- 氏名・社員番号・取得日の実データはAIに入力しない。関数はサンプルデータで試してから本番の表に使い、判定結果は人が確認する
「5日取れていない人が、期限の直前にまとめて見つかった」。入社日がばらばらの会社では、年次有給休暇(年休)の基準日が人ごとに違い、5日取得の管理が後手に回りがちです。
この記事では、年次有給休暇管理簿の集計と、取得が遅れている人の抽出、案内文の作成を生成AIで効率化する手順を整理します。制度そのものは年休5日の取得義務、計画的付与は年休の計画的付与で解説しています。
年5日取得と管理簿のルール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 年10日以上の年休が付与される労働者(管理監督者・パートタイム労働者を含む) |
| 義務 | 基準日(年休を付与した日)から1年以内に5日を取得させる |
| 時季指定 | 労働者が自ら取得した日数や計画的付与の日数は5日から差し引ける。足りない分は、使用者が労働者の意見を聴いて時季を指定する |
| 管理簿 | 時季・日数・基準日を労働者ごとに明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作る |
| 保存 | 年休を与えた期間中と、その期間の満了後5年間(経過措置により当分の間は3年間) |
管理簿は、労働者名簿や賃金台帳とあわせて作ることもできます(労働基準法施行規則第55条の2)。また、使用者が時季指定をする場合は、時季指定の対象となる労働者の範囲と方法を就業規則に記載する必要があります。
AIに任せること・任せないこと
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| AIに任せる | 集計表の列の設計、関数・数式の作成、「要フォロー」の判定ルールの式、時季指定の意見聴取や案内の文案 |
| 人が決める | 時季指定をするかどうかと指定する日、本人の意見の扱い、例外(休職中・入退社)の処理 |
| AIに入力しない | 氏名・社員番号・入社日・取得日などの実データ、休んだ理由(病気・家庭の事情など) |
表計算ソフトの関数を作るだけなら、実データは要りません。AIには列の名前と、架空のサンプル数行だけを渡します。
手順1:集計表の列を決める
まず、管理簿から5日取得の状況を見るための集計表を設計します。AIには次のように頼みます。
年次有給休暇の「年5日取得義務」を管理する表計算ソフトの表を作りたいです。
1行に1人、次の情報を持たせます。
・基準日、付与日数、基準日から1年後の期限日
・基準日以降の取得日数(年休の取得記録の別シートから集計)
・計画的付与で予定している日数
・5日までの不足日数、期限までの残り日数
列の構成と、それぞれの列に入れる数式を提案してください。
氏名の列は「社員A」のような仮の値で例を作ってください。
出てきた列の構成は、自社の管理簿の項目と照らして直します。基準日が2つある人(入社時に前倒しで付与した人など)がいる場合は、厚生労働省の解説にある取扱いに合わせて列を足します。
手順2:取得日数を数える式を作る
取得の記録を別シートに1行1件で記録している場合、基準日から期限日までの間の取得日数を数える式が必要です。
| 確認する点 | 内容 |
|---|---|
| 期間の条件 | 基準日以上・期限日未満(または以下)の日付だけを数えているか |
| 半日単位 | 半日休を0.5日として数えているか(半日単位の取得は5日に含められる) |
| 時間単位 | 時間単位の年休は5日の取得日数に含めない。別の列に分けているか |
| 特別休暇 | 会社独自の特別休暇が年休として数えられていないか |
AIが作った式は、架空のサンプルデータで答えが合うかを確かめてから本番の表に入れます。たとえば「基準日の前日の取得」「期限日当日の取得」「半日休2回」の行を作り、手で数えた結果と比べます。
時間単位年休の扱いは時間単位年休も参照してください。
手順3:「要フォロー」を判定する
期限が迫っているのに取得が少ない人を早めに見つけるため、判定のルールを決めて式にします。ルールは人が決め、式はAIに作らせます。
| 判定(例) | 条件(例) |
|---|---|
| 完了 | 取得日数+計画的付与の予定が5日以上 |
| 注意 | 期限まで6か月以内で、不足が3日以上 |
| 要フォロー | 期限まで3か月以内で、不足が1日以上 |
判定は目安です。休職中の人、退職予定の人、育児休業から復帰した人などは、表だけでは判断できません。判定が出た人の一覧を、人が1人ずつ確認します。
手順4:本人と上司への案内文を作る
「要フォロー」の人には、本人と上司に取得を促す連絡をします。時季指定をする場合は、本人の意見を聴く必要があります。文案はAIに作らせます。
年次有給休暇の取得を促す社内メールの文案を作ってください。
・宛先は、年5日の取得まで残りがある従業員本人(上司をCC)
・期限日、残りの日数は「__」の空欄にする
・取得しにくい事情があれば、希望の日を担当まで返信してほしいと書く
・会社が日を指定する場合があること、その場合も希望を聴くことを丁寧に書く
・責める表現は使わない
宛名、期限日、残り日数は、AIに渡さずに人が書き入れます。上司あてには、部署の取得状況を一覧で伝え、業務の割り振りで取得しやすくしてもらうよう依頼します。
運用のスケジュール
| 時期 | やること |
|---|---|
| 毎月の勤怠締め後 | 取得記録を更新し、判定の列を確認する |
| 基準日から6か月後 | 「注意」の人の本人と上司に連絡する |
| 期限の3か月前 | 「要フォロー」の人について、意見を聴いて時季指定を検討する |
| 期限後 | 5日取得できたかを確認し、できなかった場合は原因を記録する |
基準日をそろえていない会社では、毎月だれかの期限が来ます。厚生労働省の解説では、基準日を月初などに統一する方法も紹介されています。管理が大変な場合は、基準日の統一や計画的付与の導入も検討します。
AIの出力で注意すること
- 「年5日」の対象を「正社員だけ」と書くことがある。年10日以上付与されるパートタイム労働者や管理監督者も対象になる
- 時間単位の年休を5日に含める式を作ることがある。時間単位の取得は含めない
- 基準日が2つある人や、前倒しで付与した人の扱いを考慮しない式になりやすい。該当者がいる場合は、厚生労働省の解説の例と照らして確認する
- 案内文に「取得しないと罰則がある」など従業員を責めるような書き方が入ることがある。義務を負うのは会社である点に注意する
まとめ
- 年10日以上付与される労働者には、基準日から1年以内に5日の年休を取得させる。管理簿には時季・日数・基準日を記録する
- AIには集計表の設計、取得日数を数える式、判定の式、案内文の下書きを任せる
- 式は架空のサンプルで答えを確かめてから使い、判定結果と時季指定は人が判断する
- 氏名・社員番号・取得日の実データや、休んだ理由はAIに入力しない
年休管理の集計や勤怠データの確認を、AIでどこまで効率化できるか相談したいときは、Otsumu株式会社のAIツール診断をご利用ください。
この記事で使えるテンプレート
労務 年次有給休暇管理簿 法律で作成・保存が義務づけられている年次有給休暇管理簿のひな形です。基準日・付与日数・取得日・残日数に加え、年5日の取得義務の達成状況と時季指定の有無を従業員ごとに管理できます。この記事に出てくる用語
- 育児休業
- 子を養育するために、原則として子が1歳になるまで取得できる休業です。育児・介護休業法にもとづき、保育所に入れないなどの場合は最長2歳まで延長できます。
- 管理監督者
- 労働基準法の労働時間・休憩・休日の規定が適用されない「監督若しくは管理の地位にある者」です。役職名ではなく、職務内容・権限・待遇の実態で判断されます。
- 休職
- 病気やけがなどで働けない社員について、労働契約を続けたまま一定期間、労働義務を免除する制度です。法律上の義務ではなく、会社が就業規則で内容を決めます。
- 計画的付与
- 労使協定を結び、年次有給休暇のうち5日を超える部分について、会社があらかじめ取得日を決めて与える制度です。
- 就業規則
- 労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
- 時間単位年休
- 労使協定を結ぶことで、年次有給休暇を1時間単位で取得できるようにする制度です。年5日分が上限です。
- 賃金台帳
- 労働者ごとに賃金計算の基礎となる事項や支払額を記録する帳簿で、労働基準法で作成と保存が義務づけられています。法定三帳簿の一つです。
- 年次有給休暇
- 一定期間働いた労働者に与えられる、賃金が支払われる休暇です。6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤すると10日付与され、勤続に応じて最大20日まで増えます。
- 労働者名簿
- 事業場ごとに、労働者の氏名・生年月日・履歴などを記録する名簿で、労働基準法で作成と保存が義務づけられています。法定三帳簿の一つです。
出典・参考資料
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