職場のリスクアセスメントをAIで下書きする:作業の洗い出し、危険の特定、低減措置の案を表にまとめる手順
リスクアセスメントは、職場の危険を洗い出し、重大さと起こりやすさで優先順位をつけて対策する取組みです。厚生労働省の指針の手順に沿って、生成AIで作業の洗い出しと危険の特定、低減措置の案を表に下書きし、現場で確かめる手順を、プロンプト例つきで解説します。
- 対象読者
- 倉庫・工場・店舗・事務所の安全衛生を担当しているが、リスクアセスメントを形にできていない、従業員30〜300名の企業の総務・安全衛生担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- リスクアセスメントは、危険性・有害性の特定、リスクの見積り、低減措置の検討、措置の実施の順で進める。AIには作業の洗い出しと危険の候補出し、低減措置の案の整理を任せる
- リスクの見積り(重篤度と可能性の評価)、措置の優先度と実施の判断は、作業を知る職長や現場の人が行う。AIの候補は現場を見て確かめる
- 事故にあった社員の氏名やけがの詳細、健康情報などの個人情報はAIに入力しない。作業内容と設備の記述だけを渡す
「リスクアセスメントをやるように」と言われても、何から書けばよいか分からず、ひな形の表が空欄のままになっている。安全衛生を兼務する担当者からよく聞く悩みです。
リスクアセスメントは、職場の危険を事前に洗い出し、重大さと起こりやすさで優先順位をつけて対策する取組みです。労働安全衛生法第28条の2は、一定の業種の事業者に努力義務として求めており、厚生労働省は「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」で進め方を示しています。対象の業種に当たらない会社でも、労働災害を防ぐ方法として役立ちます。
この記事では、指針の手順に沿って、生成AIで表の下書きを作る方法を紹介します。
指針が示す進め方
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 危険性・有害性の特定 | 作業を洗い出し、作業ごとに危険の原因を特定する |
| 2. リスクの見積り | 負傷・疾病の重篤度と、発生する可能性の度合を見積もる |
| 3. 低減措置の検討 | 優先度を決め、低減措置の内容を検討する |
| 4. 低減措置の実施 | 優先度に応じて措置を実施する |
指針は、作業内容を詳しく把握している職長などに、危険の特定、リスクの見積り、低減措置の検討を行わせるよう努めることとしています。AIは職長の代わりにはなりません。職長が考える前の「たたき台」を作る道具として使います。
AIに任せること・任せないこと
| 作業 | AIの使い方 | 人が行うこと |
|---|---|---|
| 作業の洗い出し | ○ 作業手順書から作業を分解させる | 非定常作業(清掃・点検・トラブル対応)の抜けを現場に確認する |
| 危険の候補出し | ○ 作業ごとに起こりうる災害の型を挙げさせる | 現場を見て、実際にあるかを確かめる |
| リスクの見積り | 参考の案のみ | 職長・作業者が重篤度と可能性を評価する |
| 低減措置の案 | ○ 指針の優先順位に沿って案を整理させる | 費用・実現性を考えて決める |
| 法令で定められた措置の確認 | 使わない | 法令・労働基準監督署の資料で確認する |
入力しない情報
- 入力しない:過去に事故にあった社員の氏名、けがの部位や治療の経過、健康診断の結果、マイナンバーなどの個人情報
- 注意する:労災の報告書をそのまま貼ること。個人が特定できる記述が含まれる
- 入力してよい形:「台車で段ボールを運ぶ作業で、段差につまずいて転倒した事例が過去にある」のような、人を特定しない事実
社内のAI利用ルールに沿って使います(→社内の生成AI利用ガイドライン)。
手順1:作業を洗い出す
指針は、作業標準や作業手順書などをもとに、危険を特定するのに必要な単位で作業を洗い出すとしています。定常作業だけでなく、非定常作業も対象に含めます。
あなたは中小企業の安全衛生担当者を支援するアシスタントです。
次は当社の倉庫での出荷作業の手順です。リスクアセスメントのために、
危険を特定できる単位で作業を分解し、番号つきの一覧にしてください。
定常作業に加えて、清掃・点検・荷崩れなどのトラブル対応といった
非定常作業も、想定されるものを挙げてください。
(作業手順書や作業の流れを貼る)
手順2:危険の候補を挙げさせる
手順1の作業ごとに、起こりうる災害を
「はさまれ・巻き込まれ」「墜落・転落」「転倒」「動作の反動・無理な動作」
「飛来・落下」「激突」「切れ・こすれ」などの型で挙げ、
「どんな状況で」「何が原因で」「どうなるか」を1行で書いてください。
表形式で、作業番号・災害の型・内容の列にしてください。
AIの候補は一般的な知識から作られます。通路の幅、棚の高さ、照明の明るさなど、現場の状況は反映されていません。職長と現場を歩き、候補を消したり足したりします。ヒヤリハットの記録があれば、それも材料にします(→ヒヤリ・ハット報告をAIで整理する)。
手順3:見積りは現場で行う
指針は、重篤度と可能性の度合を縦軸・横軸にしたマトリクスを使う方法、数値化して加算・乗算する方法、段階的に分岐させる方法などを示しています。また、過去に実際に起きた負傷の程度ではなく、最悪の状況を想定した最も重篤な負傷の程度で見積もることとしています。
次はマトリクスの一例です(区分や段階の数は会社で決めます。IIIが最も優先度が高い)。
| 重篤度\可能性 | 高い | 可能性あり | ほとんどない |
|---|---|---|---|
| 死亡・後遺障害 | III | III | II |
| 休業 | III | II | I |
| 軽傷(不休) | II | I | I |
AIに見積りの案を出させることはできますが、「可能性」は現場の頻度や慣れで大きく変わります。最終的な評価は、職長と作業者が話し合って決めます。
手順4:低減措置の案を整理させる
指針は、法令に定められた事項は必ず実施したうえで、次の優先順位で低減措置を検討するとしています。
- 危険な作業の廃止・変更など、設計や計画の段階で危険を除去・低減する措置
- インターロックや局所排気装置などの工学的対策
- マニュアルの整備などの管理的対策
- 個人用保護具の使用
次のリスク(作業・災害の内容・見積りの結果)ごとに、低減措置の案を
上の1〜4の優先順位の区分ごとに挙げてください。
「注意する」「気をつける」だけの案は挙げないでください。
「注意する」を除くよう指示すると、具体的な対策の案が出やすくなります。
手順5:記録と周知
指針は、洗い出した作業、特定した危険、見積もったリスク、設定した優先度、実施した措置の内容を記録するとしています。AIで整えた表をそのまま記録に使い、実施日と担当者を書き足します。
- □ 記録の表に、実施した措置と実施日を書いたか
- □ 結果を作業者に周知したか(衛生委員会・安全衛生委員会での報告も含む。→衛生委員会の設置と運営)
- □ 設備や作業方法を変えるとき、災害が起きたときに見直す手順を決めたか
- □ 新しく入った人への教育に反映したか(→雇入れ時の安全衛生教育)
よくある失敗
| 失敗 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| AIの候補一覧をそのまま記録にする | 現場にない危険が並び、実際の危険が抜ける | 職長と現場を歩いて、候補を消したり足したりする |
| 見積りをAIに任せる | 現場の頻度や慣れが反映されず、優先度がずれる | 重篤度と可能性は作業者と話し合って決める |
| 対策が「注意する」ばかりになる | 同じ災害が繰り返される | 作業の変更・設備の対策を先に検討する |
| 一度作って見直さない | 設備や人の入れ替わりで実態とずれる | 設備・作業方法の変更時と、災害の発生時に見直す |
まとめ
- リスクアセスメントは、危険の特定、リスクの見積り、低減措置の検討・実施の順で進め、結果を記録する
- AIには作業の洗い出し、危険の候補出し、低減措置の案の整理を任せる。見積りと措置の決定は現場を知る人が行う
- 低減措置は、作業の廃止・変更、工学的対策、管理的対策、保護具の順で検討する
- 事故にあった社員の氏名やけがの詳細などの個人情報はAIに入力しない
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この記事で使えるテンプレート
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出典・参考資料
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