生成AIの社内利用ガイドラインのつくり方(ひな形付き)
社員が生成AIを業務で使い始めたら、早めに社内ルールを決めておくことが大切です。ガイドラインに盛り込むべき項目、個人情報・マイナンバー・機密情報の扱い、そのまま使えるひな形の本文、運用の進め方を解説します。
- 対象読者
- 社内での生成AI利用ルールづくりを任された、従業員30〜300名の企業の総務・人事担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了10分
- 最終確認日
この記事のポイント
- ガイドラインには「対象サービス」「入力禁止情報」「出力の確認」「権利・表示」「相談窓口」の5つを必ず入れる
- 個人情報・マイナンバー・機密情報の入力禁止を明記し、使ってよいサービスと設定を会社が指定する
- 最初から完璧を目指さず、A4で2〜3枚の簡潔な版をつくり、半年〜1年ごとに見直す
社員が業務で生成AIを使い始めると、「顧客情報を入力していいのか」「AIが作った文章をそのまま社外に出していいのか」といった疑問が出てきます。ルールがないまま利用が広がると、情報漏えいや誤情報の発信につながりかねません。
この記事では、中小企業が最初につくる「生成AIの社内利用ガイドライン」の考え方と、そのまま編集して使えるひな形の本文を紹介します。
なぜガイドラインが必要か
生成AIの利用には、主に次のリスクがあります。
| リスク | 例 |
|---|---|
| 情報漏えい | 入力した個人情報や社外秘情報が、サービス提供者の学習などに使われる |
| 誤情報 | AIがもっともらしい誤り(ハルシネーション)を出し、それを社外に発信する |
| 権利侵害 | 生成物が他者の著作物に似ている、他者の権利を含む素材を入力する |
| 差別・偏り | 採用・評価などでAIの出力に含まれる偏りをそのまま使う |
| 規約違反 | サービスの利用規約に反する使い方(商用利用の制限など) |
個人情報保護委員会は、事業者が個人データを含むプロンプトを入力する場合、そのデータが応答以外の目的(機械学習など)に使われないことを十分に確認するよう注意喚起しています。また、経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン」では、AIを業務で使う企業(AI利用者)にも、適切な利用やリスクへの対応が求められています。
ガイドラインに入れるべき5つの項目
1. 対象と利用できるサービス
どのサービスを、誰が、どの業務に使ってよいかを決めます。会社として「入力データが学習に使われない設定・プラン」を確認したサービスを指定し、それ以外の個人アカウントでの業務利用を禁止するのが基本です。
2. 入力してはいけない情報
最も重要な項目です。具体例を挙げて明記します。
- マイナンバー(個人番号):番号法で利用範囲が限定されているため、いかなる場合も入力しない
- 個人情報(氏名・住所・電話番号・メールアドレス・社員番号など)
- 要配慮個人情報(健康状態・病歴・障害・犯罪歴など)
- 人事評価・給与・懲戒などの人事情報
- 顧客・取引先から預かった情報、契約上の秘密情報
- 未公表の経営情報(決算・M&A・新製品など)
- パスワード・APIキーなどの認証情報
3. 出力の確認
AIの出力を使う前に、人が確認する責任を明記します。特に、法令・金額・期限・数値は一次情報で確認すること、社外に出す文書は上長などの確認を経ることを定めます。
4. 権利と表示
他者の著作物や画像をむやみに入力しないこと、生成物が既存の作品に似ていないか確認すること、必要に応じて「AIを利用して作成」と表示することなどを定めます。
5. 相談窓口と違反時の対応
迷ったときの相談先と、誤って禁止情報を入力したときの報告先を明記します。「報告した人を責めない」ことを書いておくと、早期の報告につながります。
ひな形(本文)
以下は、従業員30〜300名規模の会社を想定したひな形です。自社の体制に合わせて編集してください。
このひな形は一般的な例です。自社の業種、取り扱う情報、利用するサービスの規約に合わせて調整し、必要に応じて弁護士などの専門家に確認してください。
生成AI利用ガイドライン
第1条(目的) 本ガイドラインは、当社の役員および従業員(以下「従業員等」)が業務で生成AIを利用する際のルールを定め、情報の漏えいや誤った情報の発信を防ぎつつ、業務の効率化を図ることを目的とする。
第2条(対象) 本ガイドラインは、文章・画像・音声・プログラムなどを生成するAIサービス(以下「生成AI」)を業務で利用するすべての従業員等に適用する。
第3条(利用できるサービス)
- 業務で利用できる生成AIは、別表に定めるサービス(以下「許可サービス」)に限る。
- 許可サービスは、会社が発行したアカウントで利用し、個人のアカウントを業務に使用してはならない。
- 許可サービス以外の生成AIを業務で利用したい場合は、事前に____(担当部署)に申請する。
第4条(入力禁止情報) 従業員等は、生成AIに次の情報を入力してはならない。
- マイナンバー(個人番号)
- 個人を特定できる情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレス、社員番号、顔写真等)
- 健康状態、病歴、障害その他の要配慮個人情報
- 人事評価、給与、懲戒その他の人事に関する情報
- 顧客・取引先の情報および秘密保持契約の対象となる情報
- 未公表の経営情報、技術情報
- パスワード、認証情報
- その他、会社が機密として指定した情報
第5条(出力の確認)
- 生成AIの出力は、誤りを含む可能性があることを前提に利用する。
- 法令、金額、期限、数値その他の事実に関する内容は、公的機関の公表資料などの一次情報で確認してから利用する。
- 社外に提出・公開する文書に生成AIの出力を利用する場合は、____(上長等)の確認を受ける。
第6条(判断への利用の制限) 採用の可否、人事評価、懲戒その他従業員等の権利や処遇に関わる判断を、生成AIの出力のみに基づいて行ってはならない。
第7条(権利の尊重)
- 第三者の著作物、画像、商標等を、権利者の許諾なく生成AIに入力してはならない。
- 生成物を利用する際は、既存の著作物等と類似していないかを確認する。
第8条(事故時の報告) 禁止情報を誤って入力した場合、または生成AIの利用により問題が生じた(そのおそれがある)場合は、直ちに____(担当部署)に報告する。会社は、速やかに報告した者に対し、報告したことを理由として不利益な取扱いをしない。
第9条(相談窓口) 本ガイドラインに関する相談は、____(担当部署・連絡先)で受け付ける。
第10条(見直し) 本ガイドラインは、法令やサービスの変更等をふまえ、原則として年1回見直す。
別表(許可サービス)
| サービス名 | プラン | 学習への利用 | 利用できる業務 |
|---|---|---|---|
| ____ | ____ | 利用されない設定を確認済み | ____ |
制定日:____年__月__日
つくり方と運用の進め方
ステップ1:利用実態を把握する
まず、社員がどのサービスを、どの業務に使っているかを簡単なアンケートで把握します。禁止する前提ではなく「実態を知りたい」と伝えると、正直な回答が集まりやすくなります。
ステップ2:許可サービスを決める
利用規約やプライバシーポリシーで、入力データの学習利用、保存期間、管理者機能を確認し、許可サービスを決めます。比較の観点は人事・労務・総務でAIに任せられる業務の線引きも参考にしてください。
ステップ3:ひな形を自社向けに編集する
上のひな形をもとに、担当部署、許可サービス、確認者を埋めます。最初はA4で2〜3枚程度に収め、細かな運用は別のQ&Aにまとめるほうが読まれます。就業規則の服務規律との関係が気になる場合は、就業規則・社内規程の改定案をAIで作る手順もあわせて確認してください。
ステップ4:周知と研修
全社員に配布し、短い説明会を開きます。「入力してはいけない情報」の具体例を、実際の業務に即して示すと効果的です。
ステップ5:定期的に見直す
生成AIのサービスや機能は短い期間で変わります。AI事業者ガイドラインも改訂が続いています。半年〜1年ごとに、許可サービスの規約変更や社内での事故・ヒヤリハットをふまえて見直しましょう。
まとめ
- ガイドラインには「対象サービス」「入力禁止情報」「出力の確認」「権利・表示」「相談窓口」を入れる
- マイナンバー・個人情報・機密情報の入力禁止を、具体例で明記する
- 判断(採用・評価・懲戒)をAIの出力だけで行わないことを定める
- 簡潔な版から始めて、定期的に見直す
許可サービスの選定や、社内の業務にどのAIツールが合うかの整理には、Otsumu株式会社のAIツール診断をご利用いただけます。
この記事で使えるテンプレート
総務 社内規程 一覧・改定管理表 就業規則・賃金規程・育児介護休業規程・ハラスメント防止規程など、社内規程を一覧にして改定履歴を管理する表です。根拠法令、監督署への届出の要否、最終改定日、周知方法、次回見直し時期を記録できます。出典・参考資料
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