定年後の継続雇用の説明資料をAIで作る:本人面談用の資料、よくある質問、意向確認書の文案と確認すること
定年を迎える社員には、継続雇用の制度と再雇用後の働き方、社会保険や給付の手続きをわかりやすく説明する必要があります。高年齢者雇用安定法のルールを確認したうえで、面談用の説明資料、よくある質問、意向確認書の文案を生成AIで下書きする手順と、AIに入れない情報を整理します。
- 対象読者
- 定年を迎える社員に再雇用の条件を説明し、意向を確認する、従業員30〜300名の企業の人事担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了7分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 定年が65歳未満の会社は、65歳までの雇用確保措置(定年引上げ・定年廃止・継続雇用制度)のいずれかを講じる義務がある。継続雇用制度の対象は原則として希望者全員
- AIには、自社の就業規則の条文をもとにした説明資料の構成、平易な言い換え、よくある質問と回答の下書き、意向確認書の文案を任せる。賃金や年金の個別の試算はさせない
- 本人の氏名・生年月日・賃金・年金の見込額・健康状態はAIに入力しない。説明資料は就業規則と照らして人が確認し、条件は面談で本人に書面で示す
定年を迎える社員から「再雇用されたら給料はどうなるのか」「年金はもらえるのか」と聞かれて、うまく答えられなかった経験はないでしょうか。説明があいまいなままだと、本人の不安が大きくなり、条件の合意も難しくなります。
この記事では、継続雇用の説明資料、よくある質問、意向確認書の文案を生成AIで下書きし、人が確認する手順を整理します。制度と手続きの全体像は定年と継続雇用の実務で解説しています。
まず押さえる法律のルール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定年の下限 | 定年を定める場合は60歳以上(高年齢者雇用安定法第8条) |
| 65歳までの雇用確保措置 | 定年が65歳未満なら、定年の引上げ、定年制の廃止、継続雇用制度の導入のいずれか(第9条)。義務 |
| 継続雇用の対象 | 原則として希望者全員。労使協定で対象者を限定できた経過措置は2025年3月31日で終了 |
| 70歳までの就業確保措置 | 65歳から70歳までの就業機会を確保する措置(第10条の2)。努力義務 |
説明資料は、このルールと自社の就業規則の内容を、本人にわかる言葉で伝えるものです。AIが一般論として書いた内容が、自社の規程と違うことがある点に注意します。
AIに任せること・任せないこと
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| AIに任せる | 説明資料の構成、就業規則の条文の平易な言い換え、よくある質問の洗い出しと回答の下書き、意向確認書や案内メールの文案 |
| 人が決める・確認する | 再雇用後の職務・勤務時間・賃金、本人ごとの条件、社会保険・給付の扱い、説明内容が規程と合っているか |
| AIに入力しない | 本人の氏名・生年月日・社員番号、現在と再雇用後の賃金、年金の見込額、健康状態や家族の事情、面談の記録 |
年金の受給額や給付金の金額は、本人の加入歴や賃金で変わります。AIに試算させず、本人には日本年金機構の窓口や「ねんきんネット」での確認を案内します。
手順1:就業規則の条文から説明資料の骨組みを作る
自社の就業規則と再雇用規程から、定年と継続雇用に関する条文を抜き出します。条文には個人情報が含まれないので、そのままAIに渡せます。
次は当社の就業規則のうち、定年と継続雇用に関する条文です。
定年を迎える社員に配る説明資料(A4で2〜3枚)の構成案を作ってください。
・「定年の日」「継続雇用を希望する場合の手続き」「再雇用後の契約」
「社会保険などの手続き」「相談先」の順で
・条文にない内容は書かず、「(人事に確認)」と書いてください
・専門用語には一言説明を添えてください
(定年・継続雇用の条文)
出てきた構成で、「(人事に確認)」となった部分を人が埋めます。たとえば、再雇用後の賃金の決め方や、勤務日数を選べるかどうかは、規程に書かれていないことが多い項目です。
手順2:よくある質問と回答を作る
本人が気にするのは、制度の説明より「自分はどうなるか」です。AIに質問を洗い出させ、回答は人が自社の制度に合わせて書きます。
| よくある質問(例) | 回答で確認すること |
|---|---|
| 再雇用後の給料はどう決まるか | 規程の賃金の決め方。個別の金額は面談で書面で示す |
| 契約は何年ごとか、何歳まで働けるか | 契約期間、更新の基準、上限年齢 |
| 仕事の内容や勤務時間は変わるか | 職務・勤務時間の決め方、短時間勤務を選べるか |
| 社会保険はどうなるか | 定年後すぐに再雇用する場合の手続き(同日得喪) |
| 年金や給付金はもらえるか | 受給の確認先。会社が手続きをするものとしないもの |
| 再雇用を希望しない場合は | 退職の手続き、退職金の支払時期 |
社会保険では、60歳以上の人が定年で退職し、1日の間もなく再雇用されたときは、資格喪失と取得の届を同時に出すことができます(同日得喪。日本年金機構「60歳以上の方を、退職後1日の間もなく再雇用したとき」)。再雇用後の給与に応じた標準報酬月額で保険料が決まるため、本人にとっても関心の高い点です。
手順3:意向確認書と案内メールの文案を作る
継続雇用の希望を確認する書類も、AIで文案を作れます。
定年を迎える社員に、継続雇用を希望するかどうかを確認する書類の文案を作ってください。
・「希望する」「希望しない」「相談したい」の選択欄
・希望する場合の勤務の希望(勤務日数・時間・職務)を書く欄
・提出期限と提出先は「__」の空欄
・希望しないことを選んでも不利益な扱いはしないことを書く
・会社が条件を提示し、面談で話し合うことを書く
提出期限は、条件の提示と面談、契約書の作成に間に合うように決めます。一例として、定年の6か月前ごろに意向を確認すると、準備の時間を取りやすくなります。
手順4:説明資料を規程と照らして確認する
AIが書いた説明資料は、配る前に次の点を確認します。
- 継続雇用の対象者を限定するような書き方になっていないか(原則は希望者全員)
- 「必ず〇〇円になる」など、個別の条件を約束する書き方になっていないか
- 社会保険・雇用保険・年金の説明が、日本年金機構や厚生労働省の案内と合っているか
- 70歳までの就業確保措置を導入していないのに、導入しているような書き方になっていないか
雇用保険の高年齢雇用継続給付は、2025年4月から支給率が縮小されています。金額の説明はせず、制度の名前と相談先を案内するにとどめます。
面談の進め方
面談のメモは、AIに渡さず社内で保管します。再雇用の契約書は定年後再雇用の契約書を使えます。
AIの文案で注意すること
- 「再雇用後の賃金は定年前の〇割が一般的」など、根拠のない相場を書くことがある。賃金は自社の規程と本人の職務で決める
- 「65歳までの雇用が保障されます」と書くと、更新の基準の説明と矛盾することがある。規程の書き方に合わせる
- 年金の受給開始年齢や給付金の支給率を古い制度のまま書くことがある。制度の説明は日本年金機構・厚生労働省の最新の案内で確認する
- 意向確認書に「希望しない場合は退職とみなす」など一方的な書き方が入っていないか確認する
まとめ
- 定年が65歳未満なら65歳までの雇用確保措置は義務で、継続雇用の対象は原則として希望者全員
- AIには就業規則の条文をもとにした説明資料の構成、よくある質問、意向確認書の文案を任せる
- 個別の賃金・年金・給付金の金額はAIに試算させず、規程と公的機関の案内で確認する
- 本人の氏名・生年月日・賃金・健康状態や面談の記録はAIに入力しない
定年や継続雇用の説明資料づくりに、AIをどう使うか相談したいときは、Otsumu株式会社のAIツール診断をご利用ください。
この記事で使えるテンプレート
人事 定年後再雇用 契約書(嘱託) 定年後に嘱託社員として再雇用するときの有期雇用契約書のひな形です。更新上限、無期転換の特例、待遇差の説明を求められる旨など、有期契約・パート有期法で必要な明示事項を盛り込んでいます。この記事に出てくる用語
- 継続雇用制度
- 定年に達した社員を、本人が希望すれば引き続き雇用する制度です。定年でいったん退職して新たに契約を結ぶ「再雇用制度」と、退職せずに雇用を続ける「勤務延長制度」があります。
- 高年齢雇用継続給付
- 60歳以降の賃金が60歳到達時点より大きく下がった人に、65歳になるまで雇用保険から支給される給付です。2025年4月から給付率が縮小されました。
- 高年齢者雇用確保措置
- 65歳未満の定年を定めている会社が、65歳までの雇用を確保するために講じなければならない措置です。定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の廃止のいずれかを選びます。
- 高年齢者就業確保措置
- 65歳から70歳までの就業機会を確保するために、事業主が講じるよう努めなければならない措置です。2021年4月から努力義務になりました。
- 雇用契約書
- 会社と労働者が労働契約の内容に合意したことを示すため、双方が署名・記名押印などをする書面です。法律上の作成義務はありませんが、トラブル防止のために多くの会社が作ります。
- 雇用保険
- 労働者が失業したときや、育児・介護で休業したときなどに給付を行う公的保険です。週20時間以上働き、31日以上雇用見込みがある人が原則として加入します。
- 就業規則
- 労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
- 短時間勤務制度
- 3歳に満たない子を養育する労働者などが申し出たときに、1日の所定労働時間を原則6時間に短縮する制度です。育児・介護休業法で会社に義務づけられています。
- 定年
- 一定の年齢に達したことを理由に労働契約が終了する制度です。定年を定める場合は60歳以上にしなければなりません。
- 標準報酬月額
- 健康保険・厚生年金保険の保険料や給付額を計算するために、毎月の給与などの報酬を区切りのよい幅(等級)に当てはめた金額です。
- 労使協定
- 会社と、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数代表者)との間で結ぶ書面の協定です。法律の原則を例外的に変える効果があります。
- 労働条件通知書
- 会社が労働者を雇い入れるときに、賃金・労働時間・就業場所などの労働条件を書面で知らせるための文書です。労働基準法の「労働条件の明示」を果たすために使います。
出典・参考資料
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