来客用Wi-Fi(ゲストWi-Fi)の安全な設置と運用|業務ネットワークとの分離、パスワード管理、利用ルール
会議室で来客にWi-Fiを貸すとき、社内と同じネットワークのパスワードを教えていませんか。総務省の「公衆Wi-Fi提供者向け セキュリティ対策の手引き」を参考に、業務ネットワークとの分離、暗号化方式、パスワードの変更ルール、機器の管理、利用規約とログの扱いまで、総務が決めておくことを整理します。
- 対象読者
- 来客・取引先・面接者向けにWi-Fiを提供している、または設置を検討している従業員30〜300名の企業の総務・情報システム担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 来客用Wi-Fiは業務用ネットワークと必ず分ける。別回線・別機器の物理分離か、VLANなどの論理分離で、来客の端末から社内のPCや複合機に届かないようにする
- 暗号化はWPA2またはWPA3を使い、WEPは使わない。パスワードは定期的に変え、掲示する場所や伝え方を決める。管理用パスワードは初期設定のまま使わない
- 機器はサポート期限内のものを使い、ファームウェアを最新に保つ。不要な機能を無効にし、設定が勝手に変わっていないか定期的に確認する
会議室で来客に「Wi-Fiのパスワードを教えてください」と言われ、社員用と同じパスワードを伝えている会社は少なくありません。社員用のネットワークにつながると、来客の端末から社内のPC、ファイルサーバー、複合機が見えてしまうことがあります。来客の端末がウイルスに感染していれば、社内に被害が広がるおそれもあります。
この記事では、総務省の「公衆Wi-Fi提供者向け セキュリティ対策の手引き」(令和7年2月版)を参考に、オフィスで来客用Wi-Fi(ゲストWi-Fi)を安全に提供するために総務が決めておくことを整理します。社内全体のセキュリティ対策は中小企業の情報セキュリティ対策を参照してください。
まず現状を確認する
次の質問に答えられるか確認してみましょう。
| 確認すること | 確認の仕方 |
|---|---|
| 来客に伝えているSSID(ネットワーク名)とパスワードは何か | 受付・会議室の掲示、担当者への聞き取り |
| そのネットワークは社員用と同じか | ルーター・アクセスポイントの設定画面、ネットワーク構成図 |
| 来客の端末から社内のPCや複合機が見えるか | 来客用ネットワークに試験用端末をつなぎ、共有フォルダやプリンターが表示されないか確認 |
| 機器の管理者は誰か、管理用パスワードは変更済みか | IT資産台帳、保守業者との契約 |
| 機器のメーカーサポートは続いているか | 型番とメーカーのサポート情報 |
「社員用と同じネットワーク」「管理者がいない」「サポートが切れている」のいずれかに当てはまれば、見直しが必要です。
業務用ネットワークと分離する
手引きは、業務用のネットワークを使ってWi-Fiを提供することは避け、業務用とWi-Fi提供用のネットワークを分離するよう求めています。分け方は2つあります。
| 方法 | 内容 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| 物理分離 | 来客用に別の回線・別のルーターを用意する | 小規模オフィス。仕組みが単純で間違いが起きにくい |
| 論理分離 | 同じ機器の中でVLANなどを使い、別のネットワークとして動かす | 法人向けアクセスポイントを使っている会社。設定は保守業者に依頼することが多い |
インターネット回線を共用する場合は、ファイアウォールなどで業務用と来客用の通信が行き来しないようにします。多くの法人向け機器や一部の家庭用ルーターには「ゲストネットワーク」機能があり、来客用ネットワークから社内側へのアクセスを遮断できます。来客同士の端末が互いに見えないようにする設定(端末間の通信の遮断)があれば、あわせて有効にしましょう。
設定したら、必ず来客用ネットワークに試験用の端末をつないで、社内の共有フォルダやプリンターが見えないことを確かめます。設定画面上の「オン」だけで安心しないことが大切です。
暗号化とパスワードのルール
暗号化方式
手引きは、暗号化を行う場合はWPA2またはWPA3を設定し、機器がWPA3に対応していればWPA3も有効にするよう勧めています。WEPは短時間で解読する方法が知られているため使いません。古い方式を使うSSIDが同じ機器に残っていないかも確認します。
パスワードの管理
来客用のパスワードは、多くの人に伝わる前提で運用します。
- 定期的に変える:例えば四半期ごと、または大きな来客イベントの後に変える
- 社員用とは別のものにする:来客用が漏れても社員用ネットワークには入れないようにする
- 伝え方を決める:会議室内のカードで伝える、受付で手渡すなど。建物の外や廊下から見える場所には掲示しない
- 変更したら掲示物を差し替える:差し替え漏れがないよう、掲示場所を一覧にしておく
面接者や短時間の来訪者には、期限付きの接続コードを発行できる機器もあります。来客数が多い会社は、こうした機能の導入も検討しましょう。
機器の管理
手引きは、提供者自身のための対策として次の点を挙げています。
| 対策 | 総務がやること |
|---|---|
| 管理用パスワードを安全なものにする | 初期設定のまま使わない。管理用パスワードはパスワード管理の仕組みで保管する(→パスワード管理) |
| ファームウェアを最新に保つ | 自動更新を有効にする。保守業者がいる場合は更新の確認を契約に含める |
| サポート期限内の機器を使う | IT資産台帳に機器の型番とサポート期限を記録し、期限前に入れ替える(→IT資産台帳) |
| 不要な機能を無効にする | 外部からの管理画面への接続、使っていないVPN機能、UPnPなど |
| 設定を定期的に確認する | 見覚えのない設定やアカウントが増えていないか、半年に1回など決めて確認する |
| 第三者が触れない場所に置く | 会議室や受付の机の上ではなく、天井や施錠できる棚に設置する |
機器の設置場所にも注意が必要です。来客が出入りする会議室にルーターを置くと、LANケーブルを差し替えられたり、電源を抜かれたりする可能性があります。
利用ルールと記録
利用規約を用意する
来客にWi-Fiを提供するときは、簡単な利用規約を用意しておくと、トラブルのときに説明しやすくなります。
- 利用できる範囲(業務上の連絡・資料の閲覧など)と、禁止事項(違法な行為、大容量の通信など)
- 通信の暗号化の有無と、重要な通信は利用者側でもHTTPSなどで保護してほしいこと
- 会社は通信の内容を見ないこと、障害時の補償をしないこと
接続時に規約の画面を表示する機能(キャプティブポータル)がある機器もありますが、小規模なら会議室の案内カードに要点を書く形でも構いません。
ログの扱い
手引きは、利用者がいつ、どこにアクセスしたかというアクセスログは、業務上必要な場合のみ記録・保存が認められ、利用者の意に反する使い方はできないとしています。来客用Wi-Fiでメールアドレスなどを登録してもらう場合は、利用目的を示し、個人情報として適切に管理します(→個人情報の管理)。
社員の私物端末との関係
来客用Wi-Fiを用意すると、社員が私物のスマートフォンをつなぐことがあります。私物端末を業務に使うルール(BYOD)を決めている場合は、どのネットワークに接続してよいかを規程に書いておきましょう(→私物スマホの業務利用ルール)。情報セキュリティ規程には、来客用Wi-Fiの位置づけと管理者を明記します(→情報セキュリティ規程)。
担当者のチェックリスト
- □ 来客用と社員用のネットワークを分け、来客側から社内機器が見えないことを確認した
- □ 暗号化方式をWPA2またはWPA3にし、WEPのSSIDが残っていない
- □ 来客用パスワードを社員用と別にし、変更の時期と掲示場所を決めた
- □ 管理用パスワードを初期設定から変更し、管理者を決めた
- □ 機器のサポート期限を台帳に記録し、ファームウェアの更新を確認している
- □ 利用規約(案内カード)を用意した
まとめ
- 来客用Wi-Fiは業務用ネットワークと物理的または論理的に分け、来客の端末から社内に届かないことを確かめる
- 暗号化はWPA2またはWPA3。来客用のパスワードは社員用と分け、定期的に変える
- 機器の管理用パスワード、ファームウェア、サポート期限、不要な機能を定期的に点検する
- 利用規約とログの扱いを決め、個人情報を集める場合は目的を示して管理する
この記事で使えるテンプレート
総務 情報セキュリティ基本規程(ひな形) IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版の組織的・人的・物理的・技術的対策の区分に沿って、基本方針、管理体制、情報資産の管理、アクセス制御とパスワード、端末・メール・クラウドの利用、バックアップ、委託先管理、事故対応までを条文にした情報セキュリティ基本規程のひな形です。 総務 IT資産・SaaSアカウント管理台帳 PC・スマートフォンなどの端末と、会社で契約しているSaaS(クラウドサービス)のアカウントを1つの台帳で管理するシートです。利用者、管理者権限、多要素認証、契約更新日、月額費用、退職時の返却・削除日を記録し、退職者アカウントの消し忘れや不要な契約の放置を防ぎます。この記事に出てくる用語
- BYOD
- 「Bring Your Own Device」の略で、従業員が私物のスマートフォンやパソコンを業務に使うことです。端末費用を抑えられる一方、情報漏えいのリスクや通信費の負担のルールを決める必要があります。