総務 #防災・BCP#情報セキュリティ#IT機器#給与計算

停電・システム障害に備える総務のBCP|止まると困る業務の洗い出し、代替手段、給与支払日に間に合わせる手順

地震や台風だけでなく、停電、クラウドサービスの障害、ランサムウェアによるシステム停止でも業務は止まります。内閣府の事業継続ガイドラインの考え方に沿って、止まると困る業務の洗い出し、停電・システム障害ごとの代替手段、給与支払や勤怠など期限のある業務の手順、連絡体制と訓練の方法を整理します。

対象読者
従業員30〜300名の企業で、BCPやIT管理を兼務する総務担当者
難易度
実務
所要時間
読了8分
最終確認日

この記事のポイント

  • BCPは災害の種類ではなく「何が使えなくなるか」(電気・通信・システム・建物・人)で考える。止まると困る業務と、許容できる停止時間を先に決める
  • 給与の支払は、システム障害があっても所定の支払日に行う必要がある(賃金の毎月1回以上・一定期日払いの原則)。振込データの控え、手作業での計算方法、代替の振込手段を用意しておく
  • クラウドの障害時の連絡手段、オフラインで見られる連絡網・手順書、データのバックアップを準備し、年1回は机上訓練で確認する

朝出社したら、ビル全体が停電していた。勤怠システムにログインできない。給与計算ソフトがランサムウェアで暗号化された。こうした事態は、地震や台風がなくても起こります。

多くの会社のBCP(事業継続計画)は地震を想定して作られていますが、実際に業務を止める原因は、停電やシステム障害の方が身近です。この記事では、総務担当者が中心になって準備できる、停電・システム障害への備えを整理します。地震を想定した備蓄や帰宅困難者対策は中小企業の防災・BCPを参照してください。

「何が使えなくなるか」で考える

内閣府の事業継続ガイドラインは、あらゆる危機的事象を対象に、重要な業務を継続・早期復旧するための計画を求めています。原因ごとに計画を作ると数が増えすぎるため、使えなくなる資源で整理するのが実務的です。

使えなくなる資源 原因の例 影響
電気 ビルの停電、計画停電、災害 PC、照明、空調、電話、入退館
通信 回線障害、ルーターの故障 メール、クラウド、Web会議、IP電話
システム クラウドサービスの障害、ランサムウェア、アカウントの停止 勤怠、給与、会計、ファイル共有
建物 火災、設備の故障、立入禁止 オフィスで行う業務全般
人 感染症、交通機関の停止、担当者の急な不在 属人化した業務

止まると困る業務を洗い出す

総務・人事・経理の業務から、止まると影響が大きいものを選び、どのくらいの時間止まっても許容できるか(目標復旧時間)を決めます。

業務 期限・影響 許容できる停止時間の例
給与の支払 所定の支払日に支払う必要がある 支払日に間に合うこと
取引先への支払・請求 支払期日、資金繰り 数日
勤怠の記録 労働時間の把握義務、給与計算の基礎 数日(紙で代替)
安否確認・社内連絡 従業員の安全確保 数時間
顧客からの電話・メール 取引の継続 半日〜1日
入退社の手続き 社会保険の届出期限 数日

業務ごとに、担当者・使っているシステム・代替手段を1枚の表にまとめます。業務の洗い出しには業務引き継ぎ書やIT資産管理台帳の情報が使えます。

停電への備え

準備すること 内容
ビルの停電予定の把握 法定点検などの停電日を管理会社から受け取り、社内カレンダーに入れる
無停電電源装置(UPS) サーバー、ネットワーク機器、電話主装置に設置し、正常にシャットダウンできる時間を確認
ノートPCの充電 停電時でも数時間は作業できるよう、ノートPCを基本にする
通信手段 スマートフォンのテザリング、モバイルルーターでクラウドに接続できるか
入退館・電子錠 停電時に解錠・施錠できるか、非常時の鍵の保管場所
在宅勤務への切替え オフィスだけの停電なら、在宅勤務に切り替える判断基準(テレワーク規程)

システム障害への備え

クラウドサービスが止まったとき

  • 障害情報の確認先:利用している主要なサービスの稼働状況ページをブックマークしておく
  • 連絡手段の二重化:メールが使えないときのチャット、チャットが使えないときの電話・SMSを決めておく
  • オフラインの資料:緊急連絡網、主要な取引先の連絡先、業務手順書を、印刷物や端末内のファイルでも持っておく(安否確認の仕組み)

ランサムウェアや不正アクセスのとき

感染が疑われたら、まずネットワークから切り離し、IT担当者や委託先に連絡します。バックアップがネットワーク上の同じ場所にあると、一緒に暗号化されることがあります。バックアップは別の場所(オフライン、別サービス)にも保管し、復元できるかを定期的に試します。IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は、インシデントへの対応体制の準備を含めた対策をまとめています(情報セキュリティ規程)。

個人情報が漏えいしたおそれがある場合は、個人情報保護委員会への報告が必要になることがあります(個人情報の漏えい対応)。

給与支払日に間に合わせる手順

賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません(労働基準法第24条)。システム障害があっても、支払日を遅らせてよいという例外はありません。給与計算の時期にシステムが止まった場合に備えて、次の準備をしておきます。

準備 内容
前月の給与データの控え 前月の支給控除一覧と振込データを、システムの外にも保管する
手計算の手順 基本給・固定的な手当・社会保険料・源泉所得税の計算方法を手順書にする
暫定支給のルール 残業代などの変動部分が確定できない場合、前月の実績で暫定支給し、翌月に精算する方針を決めておく
振込手段の代替 銀行のインターネットバンキングで総合振込データを直接作成できるか、窓口での手続きは可能か
振込の締切 金融機関の給与振込データの受付期限(支払日の何営業日前か)を確認しておく

暫定支給で後から精算する場合は、従業員に理由と精算方法を書面で知らせます。給与振込の仕組みは給与の口座振込、支払の原則は賃金支払いの5原則で解説しています。

連絡体制と訓練

誰が何を判断するか

役割 担当の例
全体の判断(在宅切替え、業務の優先順位) 総務部長(不在時は管理部長)
システムの状況確認・復旧 IT担当者、保守委託先
従業員への連絡 総務担当者
取引先・顧客への連絡 各部署の責任者

保守委託先の緊急連絡先と、夜間・休日の対応範囲を契約書で確認しておきます(契約書の管理)。

年1回の机上訓練

「給与計算の3日前に、給与計算ソフトが使えなくなった」など、具体的な場面を1つ決め、関係者で30分ほど手順を確認します。実際に前月のデータの控えを開けるか、手計算で1人分計算できるかを試すと、足りない準備が見えてきます。防災訓練のシナリオ作りは防災訓練のシナリオと振り返りをAIで作るも参考になります。

まとめ

  • BCPは「電気・通信・システム・建物・人」のどれが使えなくなるかで考える
  • 止まると困る業務と許容できる停止時間、代替手段を1枚の表にまとめる
  • 給与は所定の支払日に支払う必要がある。データの控え、手計算の手順、暫定支給と振込手段の代替を準備する
  • 連絡手段を二重化し、オフラインで見られる連絡網と手順書を持つ
  • 年1回、具体的な場面を決めて机上訓練をする

この記事で使えるテンプレート

DOCX 総務 防災・BCP 備えチェックリスト 地震・風水害などの災害に備えて、総務が点検すべき項目をまとめたチェックリストです。体制・連絡網、防火管理、オフィスの安全対策、備蓄品、事業継続(BCP)、訓練までを確認できます。 CSV 総務 IT資産・SaaSアカウント管理台帳 PC・スマートフォンなどの端末と、会社で契約しているSaaS(クラウドサービス)のアカウントを1つの台帳で管理するシートです。利用者、管理者権限、多要素認証、契約更新日、月額費用、退職時の返却・削除日を記録し、退職者アカウントの消し忘れや不要な契約の放置を防ぎます。 CSV 総務 緊急連絡網・安否確認 連絡先一覧 地震・台風などの災害時に従業員の安否を確認するための連絡先一覧です。連絡網の順番、複数の連絡手段、緊急連絡先、帰宅・出社の目安、安否確認の結果欄までを1行にまとめています。

この記事に出てくる用語

安否確認
地震などの災害が起きたとき、従業員とその家族の安全や出社の可否を会社が確認することです。連絡網や安否確認サービスを使い、発動基準と手順を事前に決めておきます。
帰宅困難者
大地震などで鉄道などの交通機関が止まり、職場や外出先から自宅に帰れなくなる人のことです。東京都などの条例は、事業者に従業員の一斉帰宅の抑制と備蓄を求めています。
BCP
「Business Continuity Plan」の略で、地震・水害・感染症・システム障害などの緊急事態が起きても、重要な業務を止めない、または早く再開するための計画です。
ランサムウェア
パソコンやサーバーのデータを暗号化して使えなくし、元に戻す代わりに身代金を要求するコンピュータウイルスです。データを盗んで公開すると脅す「二重恐喝」の手口もあります。

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出典・参考資料

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