総務の年間予算の立て方と経費削減の進め方:費目の整理・前年実績の見方・削減の優先順位
総務の予算は、家賃・水道光熱費・通信費・消耗品・保険料など費目が多く、前年の数字をそのまま使いがちです。費目の整理と固定費・変動費の分け方、前年実績から来期の予算を積み上げる手順、税務上の区分(少額減価償却資産・交際費)との関係、契約の見直しを中心にした経費削減の優先順位を整理します。
- 対象読者
- 来期の総務予算の作成を任された担当者、総務経費の見直しを求められている管理部門の責任者
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- 実務
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この記事のポイント
- 総務の費目を「固定費(家賃・リース・保険・SaaSの月額)」「変動費(消耗品・郵送・交通)」「スポット(移転・更新・イベント)」に分け、前年実績と来期の予定から積み上げる
- 備品の購入は、取得価額10万円未満・20万円未満・中小企業者等の特例(2026年4月以後の取得は40万円未満)で税務上の処理が変わる。交際費も税務上の区分がある。予算の区分を経理と合わせておく
- 経費削減は、単価の交渉より先に「契約・サービスの棚卸し」から始める。使っていないSaaS、自動更新の契約、重複した保険などを洗い出す
来期の予算を作る時期になると、総務には「去年と同じでいいか」「経費をもう少し減らせないか」という声が届きます。総務の費目は細かく数が多いため、前年の数字を少し動かすだけになりがちです。しかし、根拠のない予算は、期中の急な出費や削減の要求に説明ができません。
この記事では、総務の年間予算を前年実績と来期の予定から積み上げる手順と、経費削減の進め方を整理します。
総務の費目を整理する
まず、総務が管理している費目を一覧にします。会社によって勘定科目の名前は違うため、経理の勘定科目と対応させておきます。
| 区分 | 主な費目 | 例 |
|---|---|---|
| 固定費 | 地代家賃・共益費 | 本社・拠点の賃料、駐車場 |
| 固定費 | リース料・保守料 | 複合機、電話設備、空調の保守 |
| 固定費 | 通信費(月額) | インターネット回線、携帯電話、電話サービス |
| 固定費 | ソフトウェア利用料 | SaaSの月額・年額 |
| 固定費 | 保険料 | 火災保険、賠償責任保険など |
| 変動費 | 消耗品費 | 事務用品、トナー、日用品 |
| 変動費 | 水道光熱費 | 電気・水道・ガス |
| 変動費 | 通信費(従量) | 郵送料、宅配料、通話料 |
| 変動費 | 旅費交通費 | 出張・交通費(総務管理分) |
| スポット | 備品・IT機器の購入 | パソコンの入替え、什器 |
| スポット | 修繕費 | 内装の補修、設備の修理 |
| スポット | 行事・福利厚生 | 社内イベント、健康診断、慶弔 |
| スポット | 移転・更新 | オフィスの契約更新料、移転費用 |
固定費・変動費・スポットに分ける理由
| 区分 | 予算の立て方 | 削減のしかた |
|---|---|---|
| 固定費 | 契約書の金額と契約期間から計算する | 契約の見直し・解約・まとめて契約 |
| 変動費 | 前年実績 × 来期の人員や拠点の変化 | 使い方のルール・発注の集約 |
| スポット | 来期の計画(入替え・更新・行事)を一つずつ積み上げる | 時期の見直し・優先順位づけ |
固定費は一度削減すると毎月効果が続きます。経費削減は固定費から手をつけるのが基本です。
前年実績から予算を積み上げる
手順
| 手順 | やること | 使う資料 |
|---|---|---|
| 1 | 前年(直近12か月)の実績を費目ごとに集計する | 会計ソフトの部門別・科目別の集計 |
| 2 | 実績のうち、一時的な支出(移転・故障の修理など)を取り除く | 稟議・請求書 |
| 3 | 固定費は、契約書から来期の金額を計算する。値上げ・更新・解約の予定を反映する | 契約書管理台帳 |
| 4 | 変動費は、来期の人員・拠点の計画に合わせて増減させる | 採用計画・出社率 |
| 5 | スポットの支出を来期の計画から積み上げる | 備品台帳・IT資産台帳・行事の計画 |
| 6 | 合計し、前年との差の理由を一言で説明できるようにする | — |
前年との差は理由を書く
| 費目 | 前年実績 | 来期予算 | 差の理由 |
|---|---|---|---|
| ソフトウェア利用料 | 360万円 | 390万円 | 利用人数の増加、1サービスの値上げ |
| 消耗品費 | 120万円 | 110万円 | 紙の申請書の廃止で印刷量が減る見込み |
| 備品・IT機器 | 200万円 | 450万円 | 4年経過したパソコン30台の入替え |
| 修繕費 | 80万円 | 50万円 | 前年は空調の故障修理(一時的) |
数字の例は架空のものです。差の理由を書いておくと、承認者への説明が簡単になり、期中の見直しの基準にもなります。
パソコンなどの入替え計画
パソコンやスマートフォンは、取得年月がわかればいつ入替えが必要になるか予測できます。IT資産台帳で取得年月を管理し、入替えの時期が特定の年に集中しないように計画すると、毎年の予算が平準化します(IT資産・ライセンス管理)。
税務上の区分と予算の関係
備品や交際費は、税務上の扱いによって、その期の費用になるか、資産として複数年に分けて費用になるかが変わります。予算の区分を経理と合わせておかないと、「予算内で買ったのに、決算で思った数字にならない」ということが起きます。
備品・IT機器
| 取得価額(1つあたり) | 主な処理 |
|---|---|
| 10万円未満 | 取得した期に全額を費用にできる |
| 20万円未満 | 3年間で均等に費用にする方法(一括償却資産)を選べる |
| 中小企業者等の特例の対象 | 青色申告の中小企業者等は、一定の要件のもとで全額をその期の損金にできる。2026年4月1日以後の取得は40万円未満が対象で、年間の合計額は300万円まで |
| 上記以外 | 資産として計上し、耐用年数にわたって減価償却する |
特例の改正内容は少額減価償却資産の特例の改正にまとめています。全額を損金にした資産でも、固定資産税(償却資産)の申告の対象になることがある点にも注意します(償却資産申告の総務実務)。
交際費
取引先との飲食や贈答は、税務上の交際費にあたることがあります。資本金1億円以下の法人などは、年800万円の定額控除限度額までは損金にできるなどの特例があります。また、1人あたり1万円以下の飲食費(社内の人だけの飲食を除く)は、一定の書類を保存すれば交際費から除かれます。社内イベントの費用の考え方は社内イベントの企画と運営を参照してください。
経費削減の進め方
優先順位
| 優先度 | 取り組み | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 契約・サービスの棚卸し(使っていないものを解約) | 効果が大きく、業務への影響が少ない |
| 2 | 重複の解消(同じ機能のSaaS、重複した保険) | 同上 |
| 3 | 発注の集約(部署ごとの購入を一本化) | 単価交渉の材料になる |
| 4 | 単価の見直し・相見積もり | 手間はかかるが効果が見える |
| 5 | 使い方のルール(印刷・郵送・出張) | 従業員の協力が必要で、効果が出るまで時間がかかる |
契約・サービスの棚卸し
| 確認する対象 | 見るポイント |
|---|---|
| SaaS | 利用者数と契約数の差、退職者のアカウント、同じ機能のサービスの重複 |
| リース・保守 | 契約期間の終了時期、使っていない機器、保守の範囲 |
| 通信 | 使っていない回線・携帯電話、FAX回線(FAX・紙の申請をなくす手順) |
| 保険 | 補償の重複、事業の実態との差(会社の保険契約の見直し) |
| 自動更新の契約 | 更新の何か月前に解約を申し出る必要があるか |
自動更新の契約は、解約の申出期限を過ぎるとさらに1年続くことがあります。契約書管理台帳に「解約の申出期限」の欄を設け、予算作成の時期にまとめて確認します(契約書管理の基本)。
発注の集約
部署ごとに事務用品や備品を買っていると、同じものを別々の価格で買っていることがあります。購入の窓口を総務に集約するか、購買サービスを全社で使うようにすると、価格と在庫を管理しやすくなります(備品・消耗品の購入の見直し、備品購入サービスの選び方)。
削減の目標は「金額」と「期限」で
「経費を減らす」だけでは進みません。「SaaSの年額を来期中に○%減らす」「複合機の契約更新時に保守費を見直す」のように、対象・金額・期限を決めて進めます。削減した結果は四半期ごとに予算と実績を比べて確認します。
期中の管理
- 月次で予算と実績を比べ、差が大きい費目は理由を確認する
- 予算にない支出は、稟議で承認を得てから行う(稟議・社内申請のワークフローの作り方)
- 半期で見直しの機会を設け、下期の予算を調整する
まとめ
- 総務の費目を固定費・変動費・スポットに分け、前年実績と来期の計画から積み上げる
- 前年との差は理由を一言で書く。パソコンの入替えなどは台帳から計画的に見込む
- 備品の取得価額や交際費の区分で税務上の処理が変わる。予算の区分を経理と合わせる
- 経費削減は契約・サービスの棚卸しから始め、重複の解消、発注の集約、単価の見直しの順に進める
- 自動更新の契約は解約の申出期限を台帳で管理し、予算作成の時期にまとめて確認する