給与支払報告書をeLTAXで提出する手順|30枚基準への引下げ、源泉徴収票のみなし提出、税額通知の電子受取
令和9年1月提出分(令和8年分)から、給与支払報告書の電子提出義務の基準が30枚以上に下がり、市区町村への提出で税務署への源泉徴収票の提出が不要になる「みなし提出」も始まります。eLTAXで提出するまでの準備、提出時の注意、特別徴収税額通知を電子で受け取る条件を整理します。
- 対象読者
- 1月の給与支払報告書を紙で各市区町村に郵送しており、eLTAXへの切り替えを検討している従業員30〜300名の企業の労務・経理担当者
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この記事のポイント
- 令和9年1月1日以後、前々年の源泉徴収票の提出枚数が30枚以上の会社は、給与支払報告書をeLTAXまたは光ディスク等で出す必要がある。令和8年分の提出期限は令和9年2月1日(月)
- 令和9年1月1日以後は、市区町村に給与支払報告書を出せば、税務署に源泉徴収票を提出したものとみなされる。従業員への源泉徴収票の交付は引き続き必要
- eLTAXで提出すると、特別徴収税額通知を電子データで受け取れる。メールアドレスの登録と受給者番号の記載が必要で、ダウンロードできる期間は60日間(横浜市の案内)
年末調整が終わると、従業員の住所地の市区町村ごとに給与支払報告書をそろえて郵送する作業が待っています。従業員の住所が多くの市区町村に分かれていると、それだけで数日かかることもあります。
令和9年1月に提出する令和8年分から、給与支払報告書の電子提出義務の基準が下がり、税務署への源泉徴収票の提出もなくなります。この記事では、地方税の電子手続の仕組みである**eLTAX(エルタックス)**で給与支払報告書を出すまでの準備と、提出後に届く特別徴収税額通知の受け取り方を整理します。
令和9年1月から変わる2つのこと
電子提出義務の基準が30枚以上に
国税庁の提出義務基準の案内によると、令和9年1月1日以後に提出する法定調書は、種類ごとに前々年(基準年)に提出すべきだった枚数が30枚以上であれば、e-Tax・クラウド等・光ディスク等での提出が必要です(令和8年12月31日までは100枚以上)。
市区町村に出す給与支払報告書も同じ基準です。長野市の案内は、令和9年1月1日以降は「30枚以上」に基準が引き下げられるとして、eLTAX等での提出の準備を呼びかけています。板橋区の案内でも、基準年の源泉徴収票の提出枚数が30枚以上の場合はeLTAXまたは光ディスク等での提出が義務とされています。判断に使うのは従業員数ではなく、基準年に税務署へ提出すべきだった源泉徴収票の枚数です。
源泉徴収票の「みなし提出」
国税庁のみなし提出の特例の特設ページによると、令和9年1月1日以後に市区町村へ給与支払報告書を提出すると、税務署に給与所得の源泉徴収票を提出したものとみなされます。税務署に出す分の源泉徴収票を作る必要がなくなります。
| 項目 | 令和8年分(令和9年1月提出)からの扱い |
|---|---|
| 税務署への源泉徴収票 | 給与支払報告書を市区町村に出せば提出不要 |
| 従業員への源泉徴収票 | これまでどおり全員に作成・交付が必要 |
| 電子提出義務の基準 | 前々年の枚数が30枚以上 |
| eLTAXとe-Taxの一元化機能 | 令和8年9月で終了 |
源泉徴収票と給与支払報告書を一度に作って出せた「eLTAXでの電子的提出の一元化機能」は令和8年9月で終了したと、同じ特設ページに書かれています。法定調書合計表の書き方は法定調書合計表と支払調書の作り方を参照してください。
eLTAXで提出するまでの準備
ステップ1 利用届出をする
中野区の案内のとおり、まずいずれか1つの市区町村に対してeLTAXの利用届出を行います。どの市区町村に出しても、承認されればほかの市区町村への提出にも使えます。
ステップ2 送信に使うソフトを決める
送信には、無料のeLTAX対応ソフト(PCdesk)か、eLTAXに対応した市販の給与・税務ソフトを使います(中野区の案内)。選ぶときは次の点を確かめます。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 給与ソフトから直接送れるか | 送信機能があれば、データの書き出しや取り込みの手間が減る |
| 受給者番号を出力できるか | 税額通知を電子で受け取るときに必要(後述) |
| 訂正分を出し分けられるか | 提出後の訂正で「新規」として出し直さないため |
| 新しい様式に対応しているか | 令和8年度(令和7年分)から様式が変わり、旧様式は受け付けられない(中野区) |
ステップ3 総括表と個人別明細を作って送る
eLTAXでは、複数の市区町村への提出を1回でまとめて行えます(中野区)。総括表で納入書の要否も選べます。
令和8年分の提出期限は、1月31日が日曜日のため**令和9年2月1日(月)**です(板橋区)。年末調整の進め方は2026年(令和8年分)年末調整の変更点とスケジュールを確認してください。
提出後に誤りが見つかったときは、正しい提出区分を選んで、該当する人の分だけを出し直します。新規の区分で出し直すと、正しく審査されないおそれがあると中野区は案内しています。
特別徴収税額通知を電子で受け取る
eLTAXで給与支払報告書を出すと、市区町村から届く特別徴収税額通知を電子データで受け取れます。横浜市の案内に沿って条件をまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 選べる通知 | 特別徴収義務者用・納税義務者用のそれぞれについて、電子データか書面かを選ぶ(従業員ごとではなく会社単位) |
| 前提 | eLTAXで提出していること。書面や光ディスク等で出した場合は電子データを受け取れない |
| メールアドレス | どちらかで電子データを選んだら登録が必須。保護番号がこのアドレスに届く |
| 受給者番号 | 納税義務者用を電子で受け取るなら、給与支払報告書と異動届出書への記載が必要 |
| ダウンロード期間 | 60日間 |
| 従業員への配付 | 一覧ファイルで受給者番号と従業員を照合し、各人にファイルを渡す。紙は届かない |
納税義務者用を電子にすると、従業員一人ひとりにデータを配る作業が会社に残ります。給与明細のシステムで配れるか、メールで送るなら誤送信をどう防ぐかを決めてから選びましょう。受け取った税額通知を使った毎月の天引きは住民税の特別徴収の実務で解説しています。
初めてeLTAXで出すときのスケジュール例
初回は、利用届出の承認やソフトの設定に時間がかかります。年末調整と重ならないよう、次のように前倒しで進めます。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 11月 | 基準年の源泉徴収票の枚数を確認し、電子提出が義務かを判断する。給与ソフトのeLTAX対応と受給者番号の出力を確認する |
| 11〜12月 | いずれか1つの市区町村に利用届出をする。税額通知の受取方法(電子か書面か)と通知先のメールアドレスを決める |
| 12月 | 年末調整を終え、従業員の1月1日現在の住所を確定させる |
| 1月中旬 | 総括表と個人別明細を作り、テスト的に件数・金額を給与台帳と照合する |
| 1月下旬 | 送信し、受付結果を保存する。期限は令和9年2月1日(月) |
退職者の分も、提出先の市区町村や提出の要否を確認しておきます。住所が確定しない従業員がいると全体の提出が遅れるため、12月のうちに住所変更の届出を呼びかけておくと安心です。
まとめ
- 令和9年1月提出分から、前々年の源泉徴収票が30枚以上ならeLTAX等での提出が義務。令和8年分の期限は令和9年2月1日(月)
- 市区町村に給与支払報告書を出せば、税務署への源泉徴収票の提出は不要になる。従業員への交付は続く
- 利用届出は1つの市区町村に出せばよい。ソフトは受給者番号の出力と訂正の出し分けができるかを確認する
- 税額通知の電子受取にはメールアドレスと受給者番号が必要。従業員への配付方法も先に決めておく
自治体によって案内の細部が異なることがあります。提出前に、主な提出先の市区町村の案内も確認してください。
この記事で使えるテンプレート
労務 年末調整チェックリスト 年末調整の準備から書類回収、精算、源泉徴収票の交付、法定調書の提出までを時系列で確認できるチェックリストです。 労務 法定調書・給与支払報告書 作成対象の集計表(令和8年分・支払先ごとに提出の要否と提出先を判定する) 令和8年中に支払った給与・退職手当・報酬・不動産の使用料などを支払先ごとに1行で集計し、法定調書を提出するかどうか、提出先(税務署・市区町村)、本人への交付、番号の確認状況を一覧で管理する表です。源泉徴収票のみなし提出の特例と、退職所得の源泉徴収票の提出範囲の拡大に合わせています。この記事に出てくる用語
- 給与支払報告書
- 会社が従業員に支払った前年の給与の額などを、従業員の1月1日時点の住所地の市区町村へ報告する書類です。翌年度の住民税額の計算のもとになり、毎年1月31日までに提出します。
- 源泉徴収
- 給与や報酬などを支払う人が、支払の際に所得税を差し引いて国に納める仕組みです。差し引いた税額は、原則として支払った月の翌月10日までに納付します。
- 源泉徴収票
- 会社が1年間に支払った給与・賞与の額と、源泉徴収した所得税の額などを記載した書類です。従業員に交付するほか、法定調書として税務署に提出します。
- 住民税の特別徴収
- 会社が従業員の個人住民税を毎月の給与から天引きし、従業員に代わって市区町村に納める方法です。6月から翌年5月までの12回に分けて徴収し、翌月10日までに納めます。
- 年末調整
- 会社が、1年間に給与から源泉徴収した所得税の合計額と、その年の給与総額にもとづく本来の年税額との過不足を、年末に精算する手続です。
- 法定調書
- 給与・退職金・報酬・家賃などを支払った会社が、支払先や金額を税務署に報告するために提出する書類です。源泉徴収票や支払調書などがあり、原則として翌年1月31日までに合計表と一緒に提出します。