勤務間インターバル制度の導入手順|努力義務の内容・休息時間の決め方・就業規則の規定例
終業から翌日の始業までに一定の休息時間を確保する勤務間インターバル制度は、2019年4月から事業主の努力義務です。制度の考え方、インターバル時間数の決め方、翌日の始業時刻と重なるときの2つの扱い、適用除外の決め方、就業規則の規定例、中小企業向け助成金の概要を、厚生労働省のマニュアルをもとに整理します。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業で、長時間労働対策や働き方の見直しを担当する人
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この記事のポイント
- 勤務間インターバル制度は、労働時間等設定改善法により2019年4月から事業主の努力義務。導入しなくても罰則はないが、長時間労働対策や健康確保措置として有効
- インターバル時間数は労使で決める。厚生労働省のマニュアルは、11時間を望ましい水準、9時間を最低限の水準とするなど段階的な設定方法も示している
- 翌日の始業と重なる場合は「重なる時間を働いたものとみなす」か「始業時刻を繰り下げる」かを就業規則で定める。適用除外の範囲と手続きもあらかじめ決めておく
夜遅くまで残業した翌朝も、いつもどおり9時に出社する。こうした働き方が続くと、睡眠時間が削られ、健康を損なうリスクが高まります。勤務間インターバル制度は、1日の勤務が終わってから翌日の勤務が始まるまでに、一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を確保する仕組みです。
この記事では、努力義務の内容と、制度を設計・導入するときの手順を整理します。時間外労働の上限そのものは36協定の基本と残業時間の上限規制を参照してください。
努力義務の内容
労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(労働時間等設定改善法)2条1項は、事業主に対し、「健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定」などの措置を講ずるよう努めなければならないと定めています。働き方改革関連法で追加され、2019年4月1日から施行されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 義務の性質 | 努力義務(導入しなくても罰則はない) |
| 対象 | すべての事業主 |
| 時間数 | 法律上の定めはなく、労使で決める |
努力義務とはいえ、次のような場面で制度が求められたり、役立ったりします。
- 裁量労働制の健康・福祉確保措置の選択肢の1つになっている(裁量労働制の要件)
- 36協定の特別条項で、限度時間を超えて働く人の健康・福祉確保措置を検討するときの選択肢になる
- 中小企業向けの助成金の対象になる(後述)
制度設計で決めること
厚生労働省のマニュアルは、制度を設計するときの検討項目として次の7つを挙げています。
| No. | 検討項目 | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 適用対象 | すべての従業員を対象とするのが基本 |
| 2 | インターバル時間数 | 実態を調べたうえで労使で決める |
| 3 | 翌日の始業時刻と重なるときの扱い | 「働いたものとみなす」か「繰り下げ」か |
| 4 | 確保できないことが認められるケース(適用除外) | やむを得ない事情を限定して定める |
| 5 | 確保に関する手続き | 申請の要否、上司の承認など |
| 6 | 確保できなかった場合の対応 | 代わりの休息、面談など |
| 7 | 労働時間管理方法の見直し | 終業・始業時刻を客観的に把握する |
インターバル時間数の決め方
まず、勤怠データから「終業から翌日の始業まで」の時間を従業員ごとに集計し、何時間を下回る日がどれくらいあるかを確認します。そのうえで、労使で話し合って時間数を決めます。
マニュアルでは、次のような設定方法が紹介されています。
- 「11時間は望ましい水準、9時間は最低限確保してほしい水準」のように、拘束力の異なる複数の時間を設定する
- 導入当初は短めの時間から始め、運用しながら段階的に延ばす
- 職種や部門ごとに時間数を分ける
参考情報として、EUの労働時間指令が24時間ごとに最低連続11時間の休息を求めていることも紹介されています。
翌日の始業時刻と重なるときの2つの扱い
たとえばインターバル時間を11時間とし、所定の始業が9時の会社で、前日の終業が23時だった場合、翌日は10時まで休息が必要です。9時〜10時の1時間をどう扱うかを決めておきます。
| 方法 | 内容 | 賃金・時間の扱い |
|---|---|---|
| ① 重なる部分を働いたものとみなす | 10時に始業し、9時〜10時は労働したものとみなす | 1時間分の賃金を減らさない。終業時刻は通常どおり |
| ② 始業時刻を繰り下げる | 10時に始業し、終業時刻も1時間繰り下げる | その日の労働時間は所定どおり |
①は従業員の負担が少なく、マニュアルでも採用する企業が多い方法として紹介されています。②は終業時刻も遅くなるため、翌日以降も遅い時間帯の勤務が続きやすい点に注意が必要です。フレックスタイム制の会社では、コアタイムとの関係も整理しておきます(フレックスタイム制)。
適用除外の決め方
緊急のトラブル対応などで、どうしてもインターバル時間を確保できない場合に備えて、適用除外を定めることができます。マニュアルでは、例として次のような業務が挙げられています。
- 重大なクレーム(品質問題・納入不良など)への対応
- 突発的な設備トラブルへの対応
- 予算・決算・資金調達などの業務
- 海外の現地時間に合わせた会議
- 労働基準法33条にもとづく災害その他避けられない事由による臨時の必要がある場合
適用除外を設ける場合は、「誰が判断するか」「認める回数の上限」「適用除外になったときの健康確保措置」もあわせて決めておきます。適用除外が常態化すると、制度の意味がなくなるためです。
就業規則の規定例
厚生労働省は、次のような規定例を示しています。
(勤務間インターバル) 第〇条 いかなる場合も、労働者ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに少なくとも、〇時間の継続した休息時間を与える。 2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、当該始業時刻から満了時刻までの時間は労働したものとみなす。
始業時刻を繰り下げる方法をとる場合は、第2項を「翌日の始業時間は、前項の休息時間の満了時刻まで繰り下げる」とします。災害などに備えた例外を設ける場合は、「ただし、災害その他避けることができない場合は、その限りではない」と加えます。
インターバル制度は始業・終業時刻にかかわる定めなので、就業規則の変更として過半数代表者の意見を聴き、監督署に届け出ます(常時10人以上の事業場)。手順は就業規則の作成・変更を参照してください。
導入後の運用
- 終業時刻を客観的に記録する:ICカードやパソコンのログなど、客観的な方法で終業・始業時刻を把握します(労働時間の把握義務)
- アラートを出す:勤怠システムで、インターバルが不足しそうな人と上司に通知する設定を使います(勤怠管理システムの選び方)
- 確保できなかった日を集計する:月ごとに不足日数を確認し、多い部署は業務量や人員配置を見直します
- 定期的に見直す:時間数や適用除外の範囲が実態に合っているか、労使で確認します
助成金の概要
中小企業が勤務間インターバル制度を導入する場合、「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」の対象になることがあります。就業規則の整備や労務管理用のソフトウェア導入などの費用の一部が助成され、上限額はインターバル時間数や適用する労働者の割合によって異なります。
2026年度(令和8年度)の交付申請の期限は2026年11月30日で、予算の状況により早く締め切られる場合があります。対象となる事業主の要件、成果目標、助成額は年度ごとに見直されるため、申請を検討する場合は厚生労働省のページで最新の支給要領を確認してください。助成金全般の探し方は中小企業が使える助成金でまとめています。
まとめ
- 勤務間インターバル制度は2019年4月からの努力義務。罰則はないが、長時間労働対策・健康確保措置として有効
- インターバル時間数は実態を調べて労使で決める。11時間と9時間の2段階にするなど段階的な設定もできる
- 翌日の始業と重なる時間は「働いたものとみなす」か「繰り下げ」かを就業規則に定める
- 適用除外は範囲・判断者・回数・健康確保措置まで決め、常態化させない
- 中小企業向けの助成金がある。要件と申請期限は最新の支給要領で確認する