過半数代表者の選び方|36協定・就業規則の意見聴取で無効にならない選出手順と記録の残し方
労働組合がない会社では、36協定などの労使協定の締結や就業規則の意見聴取の相手として「過半数代表者」を選びます。管理監督者でないこと、目的を明らかにした投票・挙手などで選ぶこと、会社の意向で選ばないことが要件です。選出の手順、よくある無効の例、会社がすべき配慮、記録の残し方を整理します。
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- 従業員30〜300名で労働組合がない企業の労務担当者(36協定や就業規則の届出を担当する人)
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この記事のポイント
- 過半数代表者は、管理監督者でない人の中から、協定の締結などのために選ぶことを明らかにした投票・挙手などで選ぶ。会社が指名した人や親睦会の幹事を自動的に充てる方法は認められない(労働基準法施行規則第6条の2)
- 要件を満たさない人と結んだ36協定は無効になる。パート・アルバイトを含む全労働者が手続に参加できるようにし、過半数の支持を確認する
- 会社は、代表者であることなどを理由に不利益に扱ってはならず、意見集約に必要な事務機器や事務スペースの提供などの配慮をしなければならない
36協定や賃金控除協定、就業規則の届出に添える意見書。労働組合がない会社では、これらの相手方として「過半数代表者」が必要です。ところが、毎年同じ人に「今年もお願いします」と頼んでいる、総務の担当者が自動的に署名している、といった運用は少なくありません。
選び方を誤ると、36協定そのものが無効になり、残業させることが法違反になるおそれがあります。この記事では、無効にならない選出の手順を整理します。
過半数代表者が必要になる場面
事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合、次のような手続で過半数代表者が相手方になります。
| 手続 | 内容 |
|---|---|
| 36協定 | 時間外・休日労働をさせるための協定(→36協定の基本) |
| 賃金控除協定 | 社宅費・親睦会費などを給与から控除するための協定(→賃金控除協定) |
| 変形労働時間制・フレックスタイム制 | 1年単位の変形労働時間制、フレックスタイム制などの協定 |
| 年休の計画的付与・時間単位年休 | 計画的付与、時間単位年休の協定 |
| 就業規則の作成・変更 | 意見を聴き、意見書を届出に添付する(→就業規則の作成・変更) |
協定の一覧は会社が結ぶ労使協定の一覧にまとめています。過半数代表者は事業場(支店・工場など)ごとに選びます。本社でまとめて選んだ1人を、全支店の代表として扱うことはできません。
過半数代表者の要件
労働基準法施行規則第6条の2は、過半数代表者を次の両方に当てはまる人としています。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 1. 管理監督者でないこと | 労働基準法第41条第2号の「監督又は管理の地位にある者」でないこと(→管理監督者とは) |
| 2. 適正な手続で選ばれたこと | 協定などをする者を選出することを明らかにして実施される投票・挙手などの方法で選ばれ、使用者の意向に基づいて選ばれた者でないこと |
「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」は、2019年4月の改正で明記されました。厚生労働省は、要件を満たさない場合はその36協定は無効になるとしています。
認められない選び方の例
| 選び方 | 問題点 |
|---|---|
| 社長や人事が指名した | 使用者の意向に基づく選出 |
| 親睦会の幹事・総務担当者を自動的に充てた | 協定のために選ばれていない |
| 目的を告げずに「代表を決めて」とだけ伝えた | 選出の目的が明らかでない |
| 正社員だけで選んだ | パート・アルバイトを含む全労働者が参加できていない |
| 部長・工場長などの管理監督者を選んだ | 管理監督者は代表者になれない |
| 毎年同じ人に、手続なしで継続してもらっている | 協定ごとの選出手続がない |
選出の手順
厚生労働省は、投票、挙手、労働者による話し合い、持ち回り決議などの方法で、労働者の過半数がその人を支持していることが明確になる民主的な手続を求めています。
- 目的を明示して告知する:「2027年度の36協定の締結当事者となる過半数代表者を選出します」のように、何のための代表かを書く。複数の協定や就業規則の意見聴取をまとめて任せる場合は、すべて列挙する
- 立候補・推薦を受け付ける:会社が候補者を決めない。期間を区切って受け付ける
- 信任の手続をする:投票、挙手、メールやフォームでの信任投票など。パート・アルバイト、休日の人、テレワークの人も参加できる方法にする
- 過半数の支持を確認する:対象となる労働者数と、信任した人数を数える
- 結果を周知する:選ばれた人の名前と、何の協定のための代表かを知らせる
- 記録を残す:告知文、投票の集計、選出日を保存する
社内チャットやフォームで信任投票をする場合、「回答しない人は信任とみなす」とする方法は、過半数の支持が明確にならないおそれがあります。期限までに回答を集め、信任の数を確認できる方法にしましょう。
協定届・意見書への記載
36協定届には、過半数代表者の選出方法を記入する欄と、要件を満たしていることを確認するチェックボックスがあります。チェックがない届出は形式上の不備になります。選出方法は「投票による選挙」「挙手による信任」のように具体的に書きます。点検は36協定 締結・届出チェックリストが使えます。
会社が守ること
施行規則第6条の2は、会社に次のことも求めています。
| 会社の義務 | 内容 |
|---|---|
| 不利益取扱いの禁止 | 過半数代表者であること、なろうとしたこと、正当な行為をしたことを理由に不利益に扱わない |
| 必要な配慮 | 協定などに関する事務を円滑に行えるよう配慮する。例として、意見集約に必要な事務機器(イントラネットや社内メールを含む)や事務スペースの提供 |
代表者が協定案に意見を出したり、締結を保留したりしたことを理由に、評価や配置で不利に扱うことはできません。協定案は締結日の直前ではなく、検討する時間をとれるよう早めに渡します。
よくある質問
任期を決めて、1年間は同じ人に任せてよいか
任期を定めて選ぶこと自体はできますが、選出の時点で「任期中にどの協定・手続を担うか」を明らかにしておく必要があります。任期中に新しい協定が必要になったときは、改めて選出するのが確実です。
管理監督者しかいない事業場はどうするか
管理監督者に当たる人しかいない事業場では、一部の手続(就業規則の意見聴取、賃金控除協定など)に限り、第1号の要件を満たさなくてよいとされています(施行規則第6条の2第2項)。ただし、適正な手続で選ぶ要件は残ります。
まとめ
- 過半数代表者は、管理監督者以外から、目的を明らかにした投票・挙手などで選ぶ。会社の指名や自動就任は不可
- 要件を満たさない代表者と結んだ36協定は無効。パート・アルバイトを含む全員が参加できる手続にする
- 事業場ごと・協定ごとに選出し、告知文と集計結果を記録として残す
- 代表者を不利益に扱わず、事務機器やスペースの提供など必要な配慮をする
この記事で使えるテンプレート
労務 36協定 作成・届出チェックリスト 時間外・休日労働に関する協定(36協定)を作成・届出するときのチェックリストです。上限規制(月45時間・年360時間、特別条項の上限)、過半数代表者の選出、本社一括届出、電子申請までを確認できます。 労務 就業規則(変更)届・意見書 セット 就業規則の作成・変更を届け出るときに必要な「就業規則(変更)届」「意見書」に、過半数代表者の選出記録と新旧対照表を加えた4点セットです。届出前の確認チェックリスト付きです。この記事に出てくる用語
- 過半数代表者
- 労働者の過半数で組織する労働組合がない事業場で、労使協定の締結や就業規則の意見聴取の相手方になる、労働者の過半数を代表する人です。
- 管理監督者
- 労働基準法の労働時間・休憩・休日の規定が適用されない「監督若しくは管理の地位にある者」です。役職名ではなく、職務内容・権限・待遇の実態で判断されます。
- 計画的付与
- 労使協定を結び、年次有給休暇のうち5日を超える部分について、会社があらかじめ取得日を決めて与える制度です。
- 36協定
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて残業させたり、法定休日に働かせたりするために、会社と労働者の過半数代表が結び、労働基準監督署に届け出る労使協定です。
- 就業規則
- 労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
- 時間外労働
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働のことです。36協定の締結・届出と、25%以上の割増賃金の支払いが必要です。
- 時間単位年休
- 労使協定を結ぶことで、年次有給休暇を1時間単位で取得できるようにする制度です。年5日分が上限です。
- 年次有給休暇
- 一定期間働いた労働者に与えられる、賃金が支払われる休暇です。6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤すると10日付与され、勤続に応じて最大20日まで増えます。
- フレックスタイム制
- 清算期間(最長3か月)の総労働時間を決めたうえで、日々の始業・終業時刻を労働者が自分で決められる制度です。就業規則と労使協定で導入します。
- 変形労働時間制
- 一定期間を平均して週40時間以内であれば、特定の日や週に法定労働時間を超えて働かせても時間外労働にならない制度です。1か月単位・1年単位・1週間単位があります。