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カスハラ対応マニュアルをAIで作る:自社の場面に合わせた応対例・打ち切り基準・記録様式の下書き手順

カスタマーハラスメント対策が事業主の義務になり、現場で使える対応マニュアルが必要になりました。生成AIで自社の業務場面を洗い出し、応対例・対応を打ち切る基準・記録様式の下書きを作る手順を、プロンプト例つきで解説します。実際の顧客名や従業員の情報を入力しない注意点もまとめます。

対象読者
2026年10月のカスハラ対策義務化を受けて、自社の対応マニュアルづくりを任された従業員30〜300名の企業の総務・人事担当者
難易度
実務
所要時間
読了8分
最終確認日

この記事のポイント

  • カスハラの定義と会社の義務は、厚生労働省の資料から引く。AIは自社の場面の洗い出しと応対例の下書きに使う
  • 実際のクレームの記録は、顧客名・従業員名・連絡先を消し、内容を一般化してから渡す。マイナンバーなどの個人情報は入力しない
  • 対応を打ち切る基準や警察・弁護士への相談の判断は、会社が決めて責任者が承認する。AIの案をそのまま採用しない

2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(カスハラ)から従業員を守るための措置が、すべての事業主の義務になりました。方針を決めて周知するだけでなく、現場の従業員が「どこまで対応し、いつ上司に代わるか」を判断できる手順が必要です。

この記事では、生成AIを使って自社向けのカスハラ対応マニュアルを下書きする手順を紹介します。義務の内容は「カスハラ対策・求職者等へのセクハラ防止措置の義務化」、ハラスメント対策の全体像は「ハラスメント防止対策」を参照してください。

AIに任せること・任せないこと

作業 AIの使い方 人が行うこと
定義・会社の義務 使わない 厚生労働省の資料から引用する
自社で起こりそうな場面の洗い出し ○ 現場へのヒアリングで漏れを確認する
応対の言い回し(例文) ○ 自社の言葉づかい・サービス方針に合わせて直す
対応を打ち切る基準 案出しのみ 責任者が決めて承認する
警察・弁護士への相談の判断 使わない 会社の手順として決める
記録様式 ○ 項目に過不足がないか確認する

カスハラの定義は、法令で示された3つの要素(顧客などの言動であること、社会通念上許容される範囲を超えていること、就業環境が害されること)に沿って書きます。AIの説明は、改正前の情報や他国の考え方が混ざることがあるため、そのまま使いません。

入力しない情報

マニュアルづくりでは、過去のクレームの記録を参考にしたくなります。そのまま貼り付けると、顧客や従業員の個人情報をAIサービスに渡すことになります。

  • 入力しない:顧客の氏名・会社名・電話番号・住所、従業員の氏名、録音データ、メールの原文、マイナンバーなどの個人情報
  • 注意する:日時・店舗名・金額の組み合わせ。少ない情報でも、社内の人には誰の件か分かることがある
  • 入力してよい形:「電話で長時間、同じ要求を繰り返された」のように、一般化した場面の説明

会社が契約している法人向けのAIサービスでも、社内のAI利用ルールに従います。ルールがまだない場合は「社内の生成AI利用ガイドライン」を先に整えてください。

手順1:自社の場面を洗い出す

まず、自社でカスハラが起こりうる場面を洗い出します。店舗がない会社でも、電話・メール・訪問先・SNSで発生します。

あなたは中小企業の総務担当者を支援するアシスタントです。
当社は従業員80名のBtoBの設備保守会社です。顧客対応の窓口は
「電話受付」「メール問い合わせ」「現地作業(顧客先への訪問)」「請求・入金の連絡」の4つです。

各窓口で起こりうる、社会通念上許容される範囲を超える顧客の言動の例を、
「時間拘束型」「威圧・暴言型」「過剰な要求型」「SNS・ネット上」「性的な言動」に分けて
表にしてください。正当なクレームとの違いが分かるよう、境目の例も1つずつ挙げてください。

出てきた表は、現場の担当者に見せて「実際にあった」「これはない」「これが抜けている」を確認します。現場の声を加えると、使われるマニュアルになります。

手順2:応対例を作る

場面ごとに、最初の応対・繰り返されたときの応対・打ち切るときの言い回しを作ります。

次の場面について、電話受付担当者が使う応対例を作ってください。
場面:同じ要求(作業費の全額返金)を、説明後も30分以上繰り返される

条件:
- 「最初の説明」「要求が繰り返されたとき」「上司に代わるとき」「通話を終えるとき」の4段階
- 丁寧だが、できないことは「できない」と伝える
- 相手を責める表現、法的な脅しと受け取られる表現は使わない
- 各段階で担当者が記録すべきこと(時刻・要求内容)を添える

AIの例文は、謝罪の言葉が多すぎたり、逆に突き放した表現になったりすることがあります。自社の顧客対応方針に合わせ、実際に声に出して読める言い回しに直します。電話応対の基本は「電話対応のルールづくり」も参考になります。

手順3:打ち切り基準と連絡ルートを決める

もっとも大切なのは「担当者がひとりで抱えない」仕組みです。AIには選択肢を出させ、決定は会社が行います。

決めること 例
上司に代わる目安 同じ要求が3回繰り返されたとき、暴言があったとき
対応を打ち切る目安 通話が○分を超えたとき、脅迫と受け取れる発言があったとき
現地作業での退避 身の危険を感じたら作業を中断し、その場を離れてよい
連絡先 一次:所属長、二次:総務部長、緊急時:110番
弁護士・警察への相談 判断する役職を決めておく

「○分」「○回」の数字は、業種や商慣習で適切な値が変わります。AIに数字を決めさせず、現場と責任者で話し合って決めます。

手順4:記録様式と相談後の流れを作る

対応記録は、事後の対応や従業員のケアに欠かせません。AIに記録項目の案を出させ、社内のハラスメント相談記録と項目をそろえます。社内相談の記録には「ハラスメント相談記録票」が使えます。

記録項目の例は次のとおりです。

  • 発生日時・窓口(電話・メール・訪問など)
  • 言動の内容(できるだけ発言のまま)と、それに対する応対
  • 対応した従業員と、交代・同席した上司
  • 従業員の心身の状態と、休養・配置の配慮の要否
  • その後の対応(警告、取引条件の見直し、外部への相談)

被害を受けた従業員のケアも、マニュアルに書いておきます。メンタル面の相談先は「メンタルヘルスの4つのケア」を参照してください。

AIで作るときによくある失敗

失敗 起きること 防ぎ方
一般的な例文をそのまま使う 自社の業務に合わず、現場で使われない 窓口・業務の説明をプロンプトに書き、現場が読んで直す
正当なクレームまでカスハラとして扱う 顧客の信頼を失い、改善の機会も逃す 「境目の例」を必ずマニュアルに入れる
打ち切りの数字をAIの案で決める 業種の実態に合わない基準になる 現場と責任者で話し合い、試行して見直す
作って配っただけで終わる 従業員が存在を知らず、判断に迷う 研修で読み合わせ、ロールプレイを行う

ロールプレイの台本づくりにもAIは使えます。マニュアルの場面と応対例を渡して「顧客役のせりふ」を作らせ、従業員が応対の練習をすると、言い回しが身につきます。研修資料の作り方は「社内研修資料をAIで作るときの注意点」も参照してください。

仕上げのチェックリスト

  • □ カスハラの定義と会社の方針は、厚生労働省の資料に沿って書いた
  • □ 正当なクレームまで拒む書き方になっていない
  • □ 応対例は現場の担当者が読み、使える言い回しになっている
  • □ 打ち切りの目安・連絡先・退避のルールを責任者が承認した
  • □ AIに渡した情報に、顧客・従業員の個人情報が含まれていない
  • □ 研修で読み合わせを行い、年に1回見直す日を決めた

まとめ

  • カスハラ対応マニュアルは、定義と義務を一次情報から引き、場面・応対例・打ち切り基準・記録の4つで構成する
  • AIは場面の洗い出しと応対例、記録項目の下書きに使い、基準や判断は会社が決める
  • 過去のクレームは一般化してから渡し、顧客名・従業員名・連絡先・マイナンバーなどの個人情報は入力しない

カスハラ対策の手順書づくりや記録の仕組みに、AIをどう取り入れるか相談したいときは、Otsumu株式会社のAIツール診断をご利用ください。

この記事で使えるテンプレート

DOCX 労務 ハラスメント相談記録票 社内のハラスメント相談窓口で使う相談記録票です。相談内容を5W1Hで整理し、相談者の意向、説明した事項(プライバシー保護・不利益取扱いの禁止)、事実確認と対応の経過までを記録できます。2026年10月施行のカスハラ対策義務化にも対応しています。 CSV 総務 社内規程 一覧・改定管理表 就業規則・賃金規程・育児介護休業規程・ハラスメント防止規程など、社内規程を一覧にして改定履歴を管理する表です。根拠法令、監督署への届出の要否、最終改定日、周知方法、次回見直し時期を記録できます。

この記事に出てくる用語

カスタマーハラスメント
顧客や取引先などの言動のうち、社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されることです。2026年10月1日から、すべての事業主に防止措置が義務づけられました。
マイナンバー
住民票を持つすべての人に1人1つ指定される12桁の番号です。会社は社会保障・税・災害対策の法定の手続に限って従業員などのマイナンバーを取り扱えます。

用語集の一覧を見る →

出典・参考資料

この業務、AIでどこまで減らせるか診断します。Otsumu の「AIツール診断」で、自社の業務フローから自動化できる作業を洗い出します。

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