副業・兼業の届出の確認と労働時間の上限管理をAIで整える:届出の確認項目、管理モデルの通知文、毎月の確認表を作る手順
副業・兼業を認める会社が増え、届出の内容確認や雇用型の副業の労働時間の通算が人事の負担になっています。生成AIで届出の確認項目と回答文、厚生労働省の「管理モデル」を使う場合の通知文、毎月の確認表を作る手順と、制限できる場合の判断や労働時間の確認を人が行うポイントを解説します。
- 対象読者
- 副業・兼業の届出が増え、届出の確認や労働時間の把握を個別に対応している従業員30〜300名の企業の人事・労務担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- AIには、届出書の確認項目のチェックリスト、確認結果の回答文、管理モデルの導入を提案する通知文、毎月の労働時間の確認表を下書きさせる
- 副業・兼業先でも雇用されて働く場合は労働時間が通算される。厚生労働省の管理モデルでは、本業の法定外労働時間と副業先の労働時間の合計が単月100時間未満・複数月平均80時間以内となるよう、それぞれ上限を決める
- 副業先の会社名・業務内容、本人の健康状態や家庭の事情はAIに入力しない。副業を制限するかの判断は、就業規則とガイドラインに照らして人が行う
副業・兼業の届出が月に何件も届くようになると、届出の内容を確認し、本人に返事をし、雇用型の副業なら労働時間の把握もしなければなりません。担当者が一人だと、確認の観点や返事の文面が毎回ばらつきがちです。
この記事では、副業・兼業の届出の確認項目、回答文、管理モデルの通知文、毎月の確認表を生成AIで作る手順を解説します。副業・兼業の労務管理の全体像は副業・兼業を認めるときの労務管理で扱っています。
AIに任せること・任せないこと
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| AIに任せる | 届出書の確認項目のチェックリスト、確認結果の回答文の型、管理モデルの通知文の下書き、毎月の確認表の様式と関数 |
| 人が確認する | 副業を制限するかの判断、雇用型か業務委託型か、労働時間の上限の設定、健康確保の措置 |
| AIに入力しない | 本人の氏名・社員番号、副業先の会社名・業務の詳細、収入、健康状態や家庭の事情 |
AIには、自社の就業規則の副業の条文と、届出書の様式だけを渡します。個別の届出の中身は人が確認し、AIには「雇用型・週10時間」のような条件だけを伝えます。
前提:ガイドラインの考え方を押さえる
厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、労働者が労働時間以外の時間をどう使うかは基本的に労働者の自由であるとし、制限できる場合として、労務提供上の支障がある場合、業務上の秘密が漏えいする場合、競業により自社の利益が害される場合、自社の名誉や信用を損なう場合を挙げています。
労働時間については、労働基準法第38条第1項により、事業場を異にする場合も通算されます。副業先でも雇用されて働く場合は通算の対象で、業務委託やフリーランスとして働く場合など労働基準法が適用されない場合は通算されません。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 原則的な通算 | 所定労働時間を契約の先後で通算し、所定外労働時間は実際に行われた順に通算する |
| 管理モデル | 本業(先契約)の法定外労働時間と副業先(後契約)の労働時間の合計が、単月100時間未満・複数月平均80時間以内となるよう、それぞれ上限を決める。副業先は自社の労働時間全体を法定外労働時間として割増賃金を払う |
管理モデルの上限を超えない限り、相手先の実労働時間を把握しなくても労働基準法を守れる仕組みです。
手順1:届出の確認項目を作る
次の就業規則の副業・兼業の条文と届出書の様式をもとに、人事が届出を確認するチェックリストを作ってください。
列:確認項目/確認の理由(就業規則の条文番号、またはガイドラインの制限事由)/確認の方法/判断に迷う場合の対応
確認項目に含めるもの:雇用か業務委託か、勤務時間帯と週の時間数、業務内容が競業に当たらないか、
自社の秘密情報を使わないか、深夜や休日に及ばないか、健康への影響
(ここに就業規則の条文と届出書の様式を貼り付け)
チェックリストの各項目に条文番号やガイドラインの制限事由を対応させておくと、制限するときの理由の説明がしやすくなります。
手順2:確認結果の回答文を作る
| 結果 | 回答文に入れること |
|---|---|
| 承認・受理 | 届出の内容、守ってほしいこと(秘密の保持、労働時間の報告など)、内容が変わったときの再届出 |
| 条件付き | 条件の内容と理由(例:勤務時間の上限)、条件を守れない場合の扱い |
| 認めない | 理由(就業規則の条文とガイドラインの制限事由)、相談の窓口 |
副業・兼業の届出への回答文を、承認・条件付き・認めないの3種類作ってください。
・本人の氏名や副業先は[氏名][副業先]と記号にしてください
・条件付きの例:本業との合計の時間外労働が月〇時間を超えないよう、副業先での労働時間を月〇時間以内とする
・認めない場合は、理由を就業規則の条文に沿って書く欄を設けてください
・です・ます調で、それぞれ300字以内
認めない判断や条件を付ける判断は、人が理由を確かめてから行います。AIの文面は理由を書く枠として使います。
手順3:管理モデルの通知文を作る
雇用型の副業で管理モデルを使う場合は、本業の会社から本人を通じて副業先に導入を提案できます。厚生労働省は「管理モデル導入(通知)様式例」を公表しています。
厚生労働省の管理モデルを使う場合に、副業先の会社に本人を通じて渡す通知文の下書きを作ってください。
・当社の1か月の法定外労働時間の上限:[〇時間]
・副業先の1か月の労働時間の上限としてお願いしたい時間:[〇時間]
・合計は単月100時間未満、複数月平均80時間以内となるよう設定していること
・副業先が導入に応じた場合に記入してもらう欄を付けてください
通知文は、厚生労働省の様式例と見比べて、必要な項目が抜けていないかを確かめます。上限の時間数は、自社の36協定の範囲内で人が決めます。
手順4:毎月の確認表を作る
副業・兼業をしている社員の毎月の確認表をスプレッドシートで作ります。
列:管理番号/雇用型か業務委託型か/管理モデルの有無/自社の法定外労働時間(当月)/
自社の上限/副業先の上限/本人申告の副業先の労働時間(原則的な通算の場合)/健康面の申告の有無/確認者
・自社の法定外労働時間が上限の8割を超えたら色を付ける関数を作ってください
・ダミーデータ3行で動作を確かめられるようにしてください
社員は管理番号で管理し、氏名や副業先の名前は別シートに置きます。上限に近づいた社員には、上司と人事から早めに声をかけ、必要なら長時間労働者への面接指導などの健康確保の措置を検討します。
健康確保と再届出の仕組みも作る
ガイドラインは、副業・兼業をしている労働者の健康確保に向けて、使用者と労働者がよく話し合うことなどを求めています。届出を受けて終わりにせず、定期的に状況を確かめる仕組みを作ります。
| 仕組み | 内容 |
|---|---|
| 定期の確認 | 半年に1回など、副業の内容や時間に変更がないかを本人に確認する |
| 再届出 | 副業先・業務内容・時間が変わったときは再届出を求める |
| 健康面の相談 | 疲労や睡眠不足の申出があったときの相談先(産業医・保健師など) |
| 記録 | 届出・確認・面談の記録を、個人情報として適切に保管する |
定期確認の案内文や再届出の様式はAIに下書きさせられます。本人の健康状態に関する情報は、AIには入力しません。
まとめ
- AIには、届出の確認項目、回答文の型、管理モデルの通知文、毎月の確認表を作らせる
- 雇用型の副業は労働時間が通算される。管理モデルでは本業の法定外労働時間と副業先の労働時間の合計が単月100時間未満・複数月平均80時間以内となるよう上限を決める
- 副業を制限するかは、就業規則とガイドラインの制限事由に照らして人が判断する
- 本人の氏名、副業先の会社名・業務の詳細、健康や家庭の事情はAIに入力しない
副業・兼業の届出や労働時間の管理にAIをどう組み込むか相談したいときは、Otsumu株式会社のAIツール診断をご利用ください。
この記事で使えるテンプレート
労務 副業・兼業 届出書(許可申請書) 従業員が副業・兼業を始める前に提出する届出書(許可制の会社は申請書)です。雇用か業務委託かの区別、副業先の所定労働時間と残業の見込み、競業・秘密保持の確認、会社の判断欄まで1枚で管理できます。 労務 副業・兼業規程(ひな形) 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」に沿って、届出制、禁止・制限できる4つの場合、労働時間の通算と管理モデル、健康確保、秘密保持・競業避止、状況報告、社会保険・労災の手続までを条文にした副業・兼業規程のひな形です。この記事に出てくる用語
- 36協定
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて残業させたり、法定休日に働かせたりするために、会社と労働者の過半数代表が結び、労働基準監督署に届け出る労使協定です。
- 産業医
- 労働者の健康管理について専門的な立場から指導・助言を行う医師です。常時50人以上の労働者を使用する事業場は選任が義務づけられています。
- 就業規則
- 労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
- 所定労働時間
- 就業規則や労働契約で会社が決めた、始業から終業までの時間から休憩時間を除いた労働時間です。法定労働時間の範囲内で定めます。
- 副業・兼業
- 本業の会社で働きながら、ほかの会社に雇われたり、個人で事業を行ったりすることです。厚生労働省のガイドラインは、原則として認める方向で検討することを求めています。
- 面接指導
- 長時間労働などで疲労が蓄積した労働者や、ストレスチェックで高ストレスと判定された労働者に、医師が面談して必要な指導を行うことです。
- 割増賃金
- 時間外労働・休日労働・深夜労働をさせたときに、通常の賃金に上乗せして支払う賃金です。率は労働基準法と政令で定められています。
出典・参考資料
この業務、AIでどこまで減らせるか診断します。Otsumu の「AIツール診断」で、自社の業務フローから自動化できる作業を洗い出します。
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