電子取引データの索引簿とファイル名をAIで整える:メールで届いた請求書を「日付・金額・取引先」で探せるようにする手順
メールやWebで受け取った請求書などの電子取引データは、電子帳簿保存法により、日付・金額・取引先で検索できる形で保存する必要があります。専用システムを使わずに対応する「索引簿」と「規則的なファイル名」の作り方を、国税庁の資料に沿って整理し、生成AIで作業を効率化する手順を解説します。
- 対象読者
- メールやWebで届く請求書・領収書のデータ保存を、総務・経理の兼任で担当している従業員30〜300名の企業の担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 電子取引データは、改ざん防止の措置、確認用のディスプレイ等の備付け、「日付・金額・取引先」で検索できることが原則のルール。検索は表計算ソフトの索引簿や規則的なファイル名でも満たせる
- AIには、ファイル名のルール案づくり、請求書のPDFから日付・金額・取引先を読み取って索引簿の行にする作業、事務処理規程の読み合わせを手伝わせる
- 読み取った金額や日付は人が原本と照合する。取引先の担当者名や口座番号など、検索に不要な情報はAIに渡さない
メールで届いたPDFの請求書、Webサイトからダウンロードした領収書。こうした電子取引のデータは、印刷して紙で保存するだけでは足りず、データのまま保存する必要があります。
専用のシステムを入れていない会社では、「フォルダにためているだけで、探せる状態になっていない」ことがよくあります。この記事では、国税庁の資料に沿って、索引簿と規則的なファイル名で検索できる状態にする方法と、その作業を生成AIで効率化する手順を紹介します。税額の計算や個別の判断は、税理士や所轄の税務署に確認してください。
電子取引データの保存のルール
国税庁のパンフレットは、原則的な保存のルールを次の3つにまとめています。
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 1. 改ざん防止の措置 | タイムスタンプ付きのデータを受け取る、受け取ったデータにタイムスタンプを付ける、訂正・削除の履歴が残るシステムで授受・保存する、改ざん防止のための事務処理規程を作って運用する、のいずれか |
| 2. 確認する機器の備付け | 保存したデータを見るためのディスプレイやプリンタ等を備える |
| 3. 検索できること | 「日付・金額・取引先」で検索できる。加えて、範囲指定や組み合わせの検索ができるか、税務調査でデータのダウンロードの求めに応じられること |
基準期間(2年前または2期前)の売上高が5,000万円以下の場合などは、税務調査でダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、3の検索要件は不要とされています。また、ルールへの対応が間に合わないことに相当の理由があり、ダウンロードの求めと印刷した書面の提示・提出の求めに応じられる場合の猶予措置もあります。どれに当たるかは、国税庁の資料で確認してください。
専用システムなしで検索要件を満たす2つの方法
国税庁の資料は、次のような簡易な方法でも検索要件を満たせるとしています。
- 索引簿:表計算ソフトで、連番・日付・金額・取引先・備考の一覧を作り、データと連番で結びつける
- 規則的なファイル名:日付・金額・取引先の順にファイル名を付け、特定のフォルダに集める
国税庁は索引簿の作成例(Excel)と、改ざん防止のための事務処理規程の例(Word)を公開しています。まずこれをダウンロードし、自社用に整えるのが近道です。
AIに任せること・任せないこと
| 作業 | AIの使い方 | 人が行うこと |
|---|---|---|
| ファイル名のルール案 | ○ 日付の書き方、区切り文字、取引先名の略し方を提案させる | 社内で1つに決めて周知する |
| 索引簿の行づくり | ○ 請求書の文面から日付・金額・取引先を抜き出させる | 原本と1件ずつ照合する |
| 事務処理規程の整え方 | ○ 国税庁の例と自社の運用の違いを洗い出させる | 規程の内容を決め、運用する |
| 保存義務の範囲の判断 | 使わない | 国税庁の資料や税理士で確認する |
入力しない情報
- 入力しない:取引先の担当者の氏名・電話番号・メールアドレス、振込先の口座番号、個人事業主の取引先の住所
- 注意する:請求書のPDFをまるごと読ませること。検索に不要な個人の情報が含まれる
- 入力してよい形:日付・金額・取引先名(法人名)・書類の種類だけを抜き出したテキスト
個人事業主の取引先は、氏名がそのまま取引先名になります。会社が契約し、入力内容を学習に使わない設定のサービスに限って使うなど、社内のルールに沿って扱います(個人情報保護委員会の注意喚起も参照)(→社内の生成AI利用ガイドライン)。
手順1:ファイル名のルールを決める
電子帳簿保存法の電子取引データを、規則的なファイル名で保存したいです。
「日付_金額_取引先_書類の種類」の順で、ファイル名のルール案を作ってください。
条件:
・日付は8桁の数字(例 20261015)
・金額は税込の数字のみ、カンマなし
・取引先名の「株式会社」の扱いと、全角・半角のそろえ方も決める
・ルールの例を5つ示す
例:20261015_110000_霞商店_請求書.pdf
ルールは1つに決めて、関係者全員に周知します。人によって日付の書き方がばらばらだと、検索できなくなります。
手順2:索引簿の行を作らせる
請求書から必要な項目だけをテキストで写すか、AIに読ませる場合も、出力は索引簿の列に合わせます。
次の請求書の文面から、「日付(8桁)」「金額(税込・数字のみ)」
「取引先(法人名)」「書類の種類」を抜き出し、
タブ区切りの1行で出力してください。
読み取れない項目は「要確認」と書いてください。推測で埋めないでください。
出力を索引簿に貼り、連番をファイル名の先頭にも付けておくと、索引簿から原本をすぐ探せます。
手順3:事務処理規程を整える
国税庁の規程の例には、データの訂正・削除を原則禁止とすること、やむを得ず訂正・削除する場合の手続き、管理責任者などが書かれています。
次は国税庁の「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」の例と、
当社の現在の運用メモです。例の項目ごとに、当社の運用で決まっていないこと、
例と違うことを一覧にしてください。規程の文案は作らなくてかまいません。
違いの一覧をもとに、管理責任者と手続きを決めてから、規程を整えます。
毎月の運用の流れ
索引簿とファイル名は、ためてから一度に作ると負担が大きくなります。毎月の締めの作業に組み込みます。
| 時期 | 作業 | 担当 |
|---|---|---|
| 受け取ったとき | 決めたフォルダに保存し、ルールどおりのファイル名にする | 受け取った人 |
| 週1回 | 新しいファイルの日付・金額・取引先を索引簿に追記する | 経理・総務 |
| 月末 | 索引簿と会計の記帳を突き合わせ、漏れを確認する | 経理・総務 |
| 年1回 | 保存フォルダの権限と、事務処理規程の運用を見直す | 管理責任者 |
受け取る人が複数いる場合は、メールの転送先を1つにまとめる、保存フォルダを1つにするなど、データが散らばらない仕組みを先に作ります。経費精算で従業員が受け取る領収書のデータも対象になることがあるため、精算の手順とあわせて案内します(→経費精算の進め方)。
照合と運用のチェック
- □ 索引簿の日付・金額・取引先を、原本と照合したか
- □ ファイル名のルールを関係者全員に周知したか
- □ 保存フォルダの場所と、アクセスできる人を決めたか
- □ 事務処理規程を作り、備え付けたか
- □ 税務調査で求められたときに、データを提示・ダウンロードできるか
文書の保存期間や保管の考え方は文書管理の基本、請求書の受け取りをシステム化するときは請求書受領サービスの選び方も参考にしてください。
まとめ
- 電子取引データは、改ざん防止の措置、確認する機器の備付け、日付・金額・取引先での検索が原則のルール
- 専用システムがなくても、索引簿や規則的なファイル名で検索要件を満たせる。国税庁の作成例を使う
- AIには、ファイル名のルール案、索引簿の行づくり、規程の例との違いの洗い出しを任せる
- 読み取った数字は原本と照合し、取引先の担当者名や口座番号はAIに渡さない
経理・総務の書類の保存や処理にAIをどう組み込むか相談したいときは、Otsumu株式会社のAIツール診断をご利用ください。
この記事で使えるテンプレート
総務 経費精算書 従業員の立替経費を1件1行で記録する経費精算書です。インボイス(適格請求書)の登録番号、帳簿のみ保存の特例の該当、領収書の保存形式(紙・電子)まで記録でき、経理への引き渡しにそのまま使えます。この記事に出てくる用語
出典・参考資料
この業務、AIでどこまで減らせるか診断します。Otsumu の「AIツール診断」で、自社の業務フローから自動化できる作業を洗い出します。
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