総務が担う省エネ・ペーパーレスの進め方:電子帳簿保存法・e-文書法の範囲で正しく電子化する
電気代や紙のコストを下げたい、取引先から環境への取組みを聞かれた――そんなときに総務ができる省エネとペーパーレスの進め方を解説します。空調・照明の見直しと労働衛生の基準の関係、電子取引データの保存義務、スキャナ保存、労務書類や源泉徴収票の電子化の要件を、国税庁・厚生労働省の資料に沿って整理します。
- 対象読者
- コスト削減や環境対応を任された総務担当者、紙の書類を減らしたい管理部門の担当者
- 難易度
- 実務
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この記事のポイント
- 空調の温度は「省エネ」と「事務所衛生基準規則の努力目標(18〜28℃)」の両方を見て決める。照明は手元300ルクス以上を確保したうえで減らす
- メールやクラウドで受け取った請求書・契約書などの電子取引データは、紙に印刷せず電子のまま保存する義務がある。紙の書類のスキャナ保存は任意で、要件を満たす必要がある
- 労働基準法の書類はすぐに表示・印刷できるなどの条件で電子保存できる。源泉徴収票・給与明細の電子交付は従業員の承諾が前提
電気代の上昇や、取引先からの環境対応に関する問い合わせをきっかけに、「省エネとペーパーレスを進めてほしい」と総務が任されることが増えています。どちらも小さな工夫の積み重ねで効果が出ますが、労働衛生の基準や、書類の保存に関する法令とぶつからないように進めることが大切です。
この記事では、オフィスでできる省エネの進め方と、電子帳簿保存法・e-文書法の範囲で正しく電子化する方法を整理します。
まず現状を数字で把握する
やみくもに「節電しましょう」と呼びかけても長続きしません。まず、何にどれだけ使っているかを把握します。
| 項目 | 把握の方法 |
|---|---|
| 電気 | 電力会社の明細(月ごとの使用量)、ビル管理会社からの按分請求 |
| 紙 | コピー用紙の購入量、複合機のカウンター(部署別・個人別) |
| 印刷コスト | 複合機のリース・保守料金、トナー代 |
| 郵送 | 切手・郵送料、請求書・給与明細などの郵送件数 |
| 書類の保管 | 書庫・倉庫の面積、外部保管サービスの費用 |
前年同月と比べられるよう、表計算ソフトで月1回記録するだけで十分です。
省エネ法では、一定規模以上のエネルギーを使う事業者に、使用状況の届出や定期報告が義務づけられています。判定は事業所ごとではなく会社全体(本社・支店・営業所などの合計)で行うため、拠点が多い会社は資源エネルギー庁の基準で該当しないかを確認しておきましょう。
空調・照明の省エネ
空調は「衛生基準」と両立させる
オフィスの電気使用量で大きいのが空調です。ただし、事務所衛生基準規則では、空気調和設備を設けている場合の室の気温を18℃以上28℃以下、相対湿度を40%以上70%以下にするよう努めることとされています(→事務所衛生基準規則のポイント)。冷房時に外気温より著しく低くしないことも求められています。
環境省は、クールビズの「28℃」はエアコンの設定温度ではなく室温の目安であり、冷やしすぎない室温管理を呼びかけていると説明しています。設定温度を一律に決めるより、室温計を置いて実際の温度を見ながら調整するほうが、快適さと省エネを両立できます。
| 取組み | ポイント |
|---|---|
| 室温計の設置 | 窓際・中央など複数か所に置き、場所ごとの差を把握する |
| フィルターの清掃 | 空調の効率が落ちないよう定期的に清掃する(ビル管理の範囲を確認) |
| ブラインド・カーテン | 夏は日射を遮り、冬は窓からの冷気を防ぐ |
| サーキュレーター | 空気を循環させて温度のムラを減らす |
| 服装のルール | クールビズ・ウォームビズの期間と服装の目安を周知する |
| 退社時の消し忘れ防止 | 最終退出者のチェック項目に入れる |
暑さ対策が必要な季節には、省エネを優先しすぎて熱中症のリスクを高めないよう注意します(→職場の熱中症対策の義務化で総務がやること)。
照明は「手元の明るさ」を確保してから減らす
照明の間引きは手軽な節電策ですが、事務所衛生基準規則では、一般的な事務作業の作業面の照度を300ルクス以上とする必要があります。間引く前に照度計で手元の明るさを測り、基準を下回らない範囲で行います。
LED照明への交換や、人感センサー・タイマーの導入は、照度を確保しながら電力を減らせる方法です。賃貸ビルでは照明設備の交換にビルオーナーの承諾が必要なことが多いので、管理会社に相談します。
機器の省エネ
- パソコン・モニターの省電力設定(スリープまでの時間)を社内で統一する
- 複合機・シュレッダー・電気ポットなどの待機電力を見直す
- 備品を買い替えるときは省エネ性能を選定基準に入れる(→備品購入・発注ルール)
ペーパーレスの進め方
ペーパーレスは「紙をなくすこと」ではなく、探す・回す・保管する手間を減らすことを目的にすると進めやすくなります。
| 段階 | 対象の例 |
|---|---|
| 1. 社内で完結する紙 | 会議資料、社内回覧、各種申請書(休暇・経費・備品) |
| 2. 社外とやりとりする紙 | 請求書・見積書・契約書の受け取りと発行 |
| 3. 保存している紙 | 過去の帳簿書類・契約書・労務書類 |
社内の申請書は、ワークフローシステムやフォームに置き換えるのが第一歩です(→経費精算のルールづくりと電子化)。契約書は電子契約に移行すると、印紙税や郵送の手間も減らせます(→印章管理と押印規程のつくり方、電子契約サービスの選び方)。
電子化の法的な要件
書類を電子化するときは、その書類の保存を定めた法令ごとに要件を確認します。
電子帳簿保存法の3つの区分
税法上保存が必要な帳簿・書類を電子で扱う場合のルールは、電子帳簿保存法で定められています。
| 区分 | 内容 | 義務か任意か |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフトなどで作成した帳簿・書類を電子データのまま保存する | 任意 |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った・作成した書類をスキャンや撮影で保存する | 任意 |
| 電子取引データの保存 | メール・クラウド・電子契約などで受け取った・送った請求書・領収書・契約書などのデータを保存する | 義務 |
電子取引データは、2024年1月以降、紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存する必要があります。国税庁のリーフレットでは、原則として次の対応が求められています。
- 改ざん防止の措置をとる(タイムスタンプ、訂正削除の記録が残るシステムの利用、不当な訂正削除の防止に関する事務処理規程の制定・遵守など)
- 「日付・金額・取引先」で検索できるようにする
- ディスプレイ・プリンタや操作説明書を備え付ける
基準期間(2年前)の売上高が5,000万円以下の事業者などは、税務調査でデータのダウンロードの求めに応じられるようにしておけば、検索の要件が不要になります。
スキャナ保存は、解像度やタイムスタンプ、入力の期限などの要件を満たせば、紙の原本を廃棄できる制度です。要件を満たさずに原本を捨ててしまうと、税法上の保存義務を果たしていないことになるおそれがあるため、導入前に国税庁の特設サイトで要件を確認し、顧問税理士にも相談してください。
e-文書法と労務書類
税法以外の法令で保存が義務づけられた書類については、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」(いわゆるe-文書法)と、各省庁の省令で電子保存のルールが定められています。
労働基準法の労働者名簿・賃金台帳などについて、厚生労働省は、パソコンで作成・保存する場合に次の要件を示しています。
- 法令で定められた要件を備え、画面に表示し印字できること
- 労働基準監督官の臨検時などに、直ちに必要事項を明らかにして提出できること
- 誤って消去されないこと
- 長期にわたって保存できること
システムを乗り換えるときに過去のデータが見られなくならないよう、保存期間内のデータの出力・移行も計画に入れておきます(→法定三帳簿の記載事項と保存期間、文書管理と保存期間の一覧)。
源泉徴収票・給与明細の電子交付
給与所得の源泉徴収票や給与の支払明細書は、従業員の事前の承諾を得れば電子で交付できます。国税庁のQ&Aでは、電磁的方法の種類と内容を示して承諾を得ること、承諾後でも従業員から書面を求められたら書面で交付することなどが示されています。期限までに回答がなければ承諾したものとみなす旨をあらかじめ通知する方法も認められています。
進めるときの注意点
- 一度に全部やらない:まず社内申請、次に請求書の受け取り、と段階を分ける
- 例外を残す:電子化が難しい取引先や、パソコンを使わない従業員への対応を決めておく
- ルールを規程にする:保存場所・ファイル名の付け方・廃棄のルールを文書管理規程に反映する(→社内規程の体系と管理)
- セキュリティも同時に:電子化した書類のアクセス権限やバックアップを決める(→情シス兼任総務の情報セキュリティ最低限チェック)
- 効果を見える化する:紙の購入量や電気使用量の変化を社内報などで共有すると、協力を得やすい(→社内報・社内コミュニケーションの小さな始め方)
まとめ
- 省エネは、電気・紙・郵送などの使用量を月ごとに記録するところから始める
- 空調は事務所衛生基準規則の努力目標(18〜28℃、湿度40〜70%)の範囲で、室温計を見て調整する。照明は手元300ルクス以上を確保する
- 電子取引データは電子のまま保存する義務がある。改ざん防止・検索・表示の要件を確認する
- スキャナ保存は任意。要件を満たさずに原本を廃棄しない
- 労務書類は表示・印刷・提出がすぐできる状態で電子保存できる。源泉徴収票・給与明細の電子交付は従業員の承諾が前提