職場の熱中症対策の義務化(2025年6月施行)で総務がやること:報告体制・対応手順・周知の整え方
2025年6月の改正労働安全衛生規則により、暑い環境での作業がある会社には、熱中症の報告体制と悪化防止の手順の整備・周知が義務になりました。対象作業の判断から、手順書の作り方、来年の夏に向けた準備スケジュールまで、総務が進める実務を解説します。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業で安全衛生や職場環境を担当する総務担当者
- 難易度
- 実務
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- WBGT28度以上または気温31度以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間超の作業が見込まれる場合が対象
- 義務は「報告体制の整備」「悪化防止の手順の作成」「関係者への周知」の3つ。業種・規模は問わない
- 夏が終わった今の時期に今年の運用を振り返り、翌年4月までに体制と手順を更新しておく
2025年6月1日から、職場の熱中症対策が法令上の義務になりました。建設業や製造業だけの話と思われがちですが、倉庫作業、配送、営業の外回り、厨房、イベント設営など、暑い環境で一定時間働く人がいれば、業種や規模にかかわらず対象になり得ます。
この記事では、総務担当者が整える「報告体制」「対応手順」「周知」の具体的な進め方を整理します。制度の概要は「職場の熱中症対策の義務化」でもまとめています。
何が義務になったか
改正された労働安全衛生規則では、熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときに、事業者に次の3つが義務づけられました。
| 義務 | 内容 |
|---|---|
| 報告体制の整備 | 熱中症の自覚症状がある作業者や、そのおそれがある作業者を見つけた人が、その旨を報告できる体制を整える |
| 手順の作成 | 作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察・処置を受けさせることなど、症状の悪化を防ぐ措置の内容と実施手順を定める |
| 関係者への周知 | 報告体制と手順を、作業に従事する人に周知する |
対象になる作業
「熱中症を生ずるおそれのある作業」とは、WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の作業場で、継続して1時間以上、または1日あたり4時間を超えて行われることが見込まれる作業です。
WBGTは、気温だけでなく湿度や日射・照り返しの影響も加えた指標です。同じ気温でも、湿度が高い日や直射日光の下ではWBGTが高くなります。
総務がやること
1. 対象となる作業と人を洗い出す
まず、自社に対象作業があるかを確認します。屋外だけでなく、屋内も見落とさないようにします。
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 屋外作業 | 建設・設備工事、警備、駐車場整理、屋外イベントの設営 |
| 屋内の高温作業 | 倉庫・物流センター、工場、厨房、ボイラー室 |
| 移動をともなう業務 | 配送・訪問営業・点検など、屋外の移動が長い業務 |
出張先や移動中の作業も含まれる点に注意してください。夏場に一度、現場のWBGTを測っておくと、翌年以降の判断がしやすくなります。
2. 報告体制を決める
「誰が・誰に・どうやって」報告するかを具体的に決めます。
- 報告先:現場責任者 → 不在時は総務 → 緊急時は119番
- 報告手段:電話、チャット、無線など、現場ですぐ使えるもの
- 一人作業の場合:決まった時間の定時連絡や、巡回での声かけ
- 同じ現場で働く協力会社の人も報告できるようにする
「自分は大丈夫」と無理をしてしまう人も多いため、本人だけでなく周りの人も報告してよいことを明確にします。
3. 対応手順を1枚にまとめる
現場で迷わないよう、手順はA4用紙1枚程度にまとめます。
- 作業を中止させ、涼しい場所へ移動させる
- 衣服をゆるめ、首・わきの下・太ももの付け根などを冷やす
- 意識がおかしい、自力で水分がとれないなどの場合は、ためらわず救急車を呼ぶ
- 回復しても一人にしない。医療機関の受診をすすめる
- 発生日時・場所・状況・対応を記録し、総務に報告する
緊急連絡先、近くの医療機関、現場の住所(救急車を呼ぶときに伝える)も同じ紙に書いておきます。
4. 周知する
決めた体制と手順は、作業する人が確実に知ることができる方法で伝えます。
- 休憩所・現場事務所への掲示
- 朝礼やミーティングでの説明
- 社内チャットやメールでの配信
- 外国人の従業員には、理解できる言語でも案内する
5. 普段の予防策もあわせて見直す
義務の中心は報告体制と手順ですが、予防の取組みも欠かせません。
- WBGTの把握(測定器や環境省の暑さ指数情報の活用)
- 休憩時間・休憩場所の確保、水分・塩分の補給
- 通気性のよい服装、空調服などの検討
- 暑さに慣れていない新入社員・異動者への配慮
- 糖尿病や高血圧症など、熱中症に影響するおそれのある持病がある人への配慮(健康診断の結果や医師の意見を踏まえる)
健康診断の結果を活用する方法は「健康経営」、衛生面の推進役については「衛生推進者」の記事も参考にしてください。
手順書のひな形(例)
社内で使う手順書は、次のような構成にすると現場で使いやすくなります。自社の現場に合わせて書き換えてください。
| 項目 | 記載する内容 |
|---|---|
| 対象となる作業・場所 | 例:倉庫内のピッキング作業(7〜9月)、屋外での設営作業 |
| 報告先 | 現場責任者の氏名・電話番号、不在時の連絡先(総務) |
| こんなときは報告 | めまい、立ちくらみ、筋肉のけいれん、大量の汗、頭痛、吐き気、だるさ、いつもと様子が違う |
| すぐにやること | 作業中止、涼しい場所へ移動、体を冷やす、水分・塩分の補給 |
| 救急車を呼ぶ目安 | 意識がおかしい、呼びかけへの反応が悪い、自分で水分がとれない |
| 現場の住所・目印 | 救急車を呼ぶときに伝える情報 |
| 記録 | 発生日時・場所・本人の状態・対応・報告先 |
熱中症は、作業を終えて帰宅した後に悪化することもあります。症状があった人には、帰宅後も体調に注意するよう伝え、翌日の出勤前にも体調を確認しましょう。
協力会社・派遣労働者への対応
同じ現場で働く協力会社の作業者や、派遣労働者がいる場合は、報告体制と手順を共有しておきます。誰に報告すればよいかがわからないまま作業すると、初期症状の見逃しにつながります。現場の入場時の説明や、作業前の打合せで伝えるとよいでしょう。
来年の夏に向けたスケジュール
秋は、今年の夏の運用を振り返るのに適した時期です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 10〜11月 | 今夏の発生事例・ヒヤリハットを集め、手順の課題を洗い出す |
| 1〜3月 | 手順書・連絡先を更新。WBGT測定器や冷却用品の予算を確保 |
| 4月 | 体制・手順を全社に再周知。新入社員にも説明 |
| 5〜9月 | 運用。暑さ指数を確認しながら休憩・作業時間を調整 |
厚生労働省は毎年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施しています。4月が準備期間、5〜9月がキャンペーン期間、7月が重点取組期間です。毎年の点検のきっかけにしましょう。
まとめ
- WBGT28度以上または気温31度以上で、連続1時間以上・1日4時間超の作業があれば対象
- 「報告体制」「対応手順」「周知」の3点を、協力会社の人も含めて整える
- 秋に振り返り、翌年4月までに手順と連絡先を更新しておく
毎月の業務の流れは月次カレンダー(4月)でも確認できます。