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プライバシーマークとISMS認証の違い|取引先に求められたときの判断、審査の流れ・更新周期・費用の確認先

取引先のセキュリティチェックで、プライバシーマークやISMS認証の有無を聞かれることが増えています。2つの制度の違い(対象・基準・範囲・有効期間)、審査の流れと更新の周期、費用の確認先、取得しない場合に委託先チェックへどう答えるかを、運営主体のJIPDEC・ISMS-ACと個人情報保護委員会の資料で整理します。

対象読者
取引先から「PマークかISMSを取得していますか」と聞かれ、取得するか判断を任された従業員30〜300名の企業の総務担当者
難易度
実務
所要時間
読了8分
最終確認日

この記事のポイント

  • プライバシーマークは個人情報の保護体制(JIS Q 15001準拠の指針)を法人単位で評価する国内制度。有効期間は2年で、更新申請は有効期間終了の8か月前から4か月前までに行う
  • ISMS認証は情報資産全般のセキュリティ管理(JIS Q 27001/ISO/IEC 27001)を評価する国際整合の制度。部門単位でも取得でき、通常1年ごとのサーベイランス審査と3年ごとの再認証審査がある
  • どちらも法律上の義務ではない。個人情報保護法が求めるのは安全管理措置と委託先の監督で、取得しない場合も規程・点検記録・委託先チェックシートへの回答で体制を示せる

取引先から届くセキュリティチェックシートに「プライバシーマーク(Pマーク)またはISMS認証を取得していますか」という質問が入っていることがあります。取得していないと取引できないのか、どちらを取ればよいのか、費用はどのくらいか。総務担当者が判断を任されることも多いテーマです。

この記事では、2つの制度の違い、審査と更新の流れ、費用の確認先、取得しない場合の答え方を、制度の運営主体と個人情報保護委員会の資料をもとに整理します。

まず確認すること:法律上の義務ではない

プライバシーマークもISMS認証も、民間の第三者評価制度で、取得は任意です。個人情報保護法が事業者に求めているのは、次のような措置です。

条文 内容
第23条(安全管理措置) 個人データの漏えい・滅失・毀損の防止など、安全管理のために必要かつ適切な措置を講じる
第24条(従業者の監督) 個人データを扱う従業者に対して必要かつ適切な監督を行う
第25条(委託先の監督) 個人データの取扱いを委託する場合、委託先に対して必要かつ適切な監督を行う

取引先がPマークやISMSを確認するのは、第25条の委託先の監督の一環として、預ける情報を適切に扱える会社かを見たいからです。認証は「体制を示す手段の一つ」と考え、取引先が本当に必須としているのか、代わりの資料でもよいのかを最初に確認します。

自社の安全管理措置の基本は、中小企業の個人情報・マイナンバー管理の基本を参照してください。

プライバシーマークとISMSの違い

項目 プライバシーマーク ISMS認証
守る対象 個人情報 情報資産全般(個人情報、技術情報、営業秘密など)
基準 JIS Q 15001に準拠した「プライバシーマークにおける個人情報保護マネジメントシステム構築・運用指針」 JIS Q 27001(ISO/IEC 27001に対応)
対象の範囲 法人単位(国内に活動拠点を持つ事業者) 範囲は組織が決める。全社のほか事業部・部・課単位でも取得できる
評価する仕組み 付与機関JIPDECと、指定を受けた審査機関が審査 ISMS-ACが認定した認証機関が審査
有効期間・審査周期 有効期間2年。2年ごとに更新 通常1年ごとのサーベイランス審査、3年ごとの再認証審査
通用する範囲 国内制度 国際規格に基づく制度

どちらが向いているか

  • 個人情報を大量に預かる業務が中心(名簿・顧客データの処理、人事・給与の受託、通販など):プライバシーマークを求められることが多い。法人全体で取得するため、会社全体の個人情報の扱いを示せる
  • システム開発・クラウドサービス・技術情報を扱う業務、海外の取引先がある:ISMSが求められることが多い。認証範囲を特定の事業部門に絞ることもできる

ただし、ISMSは範囲を限定できるぶん、取引先は「その業務が認証範囲に入っているか」を確認します。ISMS認証では認証範囲が明記されるので、取得する場合は取引先から求められている業務が範囲に入るように設計します。

取引先がどちらを求めているかは、チェックシートの文言や担当者に確認するのが確実です。「PマークまたはISMS」とあれば、どちらか一方で足りることが多いでしょう。

取得までの流れ

プライバシーマーク

JIPDECの案内による新規申請の流れは次のとおりです。

段階 内容
1. 体制の構築・運用 構築・運用指針に沿って、個人情報の特定、規程類の整備、教育、内部監査などの仕組み(PMS)を作り、運用する
2. 申請 JIPDECまたは指定審査機関に申請(Pマークポータルからのオンライン申請も可)。申請先は業種や本社所在地で決まる
3. 形式審査〜文書審査 提出書類と規程類の審査
4. 現地審査 事業所で運用状況を確認
5. 審査結果の連絡 指摘事項があれば対応する
6. 付与契約 付与適格と決定された後、契約を結んでマークを使用できる

申請資格として、個人情報保護管理者と監査責任者を置く必要があるため、社会保険・労働保険に加入している正社員または登記された役員(監査役を除く)が2名以上いることが求められています。

更新申請は、有効期間が終了する8か月前から4か月前までに行います。期限を過ぎると更新扱いにならないので、総務の年間スケジュールに組み込んでおきます。

ISMS認証

段階 内容
1. 体制の構築・運用 適用範囲を決め、リスクアセスメント、管理策の選択(適用宣言書)、教育、内部監査、マネジメントレビューを行う
2. 認証機関を選んで申請 ISMS-ACが認定した認証機関の中から選ぶ。見積りを取って比較できる
3. 審査 原則として第一段階と第二段階の2段階
4. 登録・公表 認証機関からISMS-ACに報告され、ISMS-ACのサイトで公表される
5. 維持 通常1年ごとのサーベイランス審査、3年ごとの再認証審査

どちらも、体制を作って一定期間運用し、その記録を審査で見てもらう制度です。規程を作っただけでは取得できません。準備から付与までの期間は、会社の規模や準備状況、審査機関の受付状況で大きく変わります。取引先に取得時期を約束する前に、審査機関・認証機関に目安を確認してください。

費用の確認先

制度 費用の内訳 確認先
プライバシーマーク 申請料・審査料・付与登録料。審査料と付与登録料は事業者規模(小規模・中規模・大規模)で変わる。現地審査の交通費等は別途 JIPDECの「費用」ページ(2026年10月1日に料金を改定)
ISMS認証 認証機関ごとに異なる。適用範囲や組織の規模で審査日数・工数が変わる 各認証機関の見積り

JIPDECが公表している2026年10月1日適用の料金表(税込)では、小規模事業者の新規申請で合計33万6,600円、更新で合計24万4,200円です。中規模・大規模はこれより高く、規模の区分は同ページから確認できます。

このほか、社内の工数(担当者の作業時間、教育・内部監査の実施)がかかります。コンサルタントに支援を依頼する場合はその費用も必要です。2年・3年ごとに繰り返しかかる費用として、予算に組み込んでおきます(総務の年間予算の立て方)。

取得しない場合の対応

取引先が認証を必須としていない場合は、自社の体制を資料で示します。

示すもの 内容
個人情報取扱規程・情報セキュリティ規程 責任者、取扱いのルール、委託・持出し・廃棄の手順を定めたもの
個人情報の管理台帳 どの情報を、どこで、誰が扱っているか
教育の記録 年1回以上の研修の実施日・参加者
点検の記録 アクセス権限、パスワード・多要素認証、端末の暗号化などの自己点検結果
漏えい時の手順 報告・連絡の流れ(個人情報の漏えいが起きたときの初動対応)
SECURITY ACTION IPAの自己宣言制度。一つ星・二つ星(情報セキュリティ最低限チェック)

個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、安全管理措置として講じるべき内容(基本方針の策定〈望ましい措置〉、個人データの取扱いに係る規律の整備、組織的・人的・物理的・技術的安全管理措置など)と、中小規模事業者向けの手法の例を示しています。チェックシートの質問はこの区分と重なることが多いので、ガイドラインの項目に沿って自社の対応を整理しておくと、回答を毎回ゼロから作らずに済みます。

チェックシートに回答するときの注意

取得を判断するときの観点

  1. 取引先が「必須」としているか、「あれば望ましい」程度か
  2. その取引先・業務の売上が、取得・維持の費用と工数に見合うか
  3. 今後、同じ要求をする取引先が増えそうか(業界の動向)
  4. 運用を担う担当者を2年・3年ごとの審査まで継続して確保できるか
  5. 取得を目標にすることで、社内の情報管理を見直す効果が期待できるか

一人総務で運用を抱え込むと、取得後の教育・内部監査・記録が回らなくなりがちです。取得する場合は、個人情報保護管理者と監査責任者を別の人にし、各部署に記録の担当を置く体制を先に決めましょう。

まとめ

  • Pマークは個人情報の保護体制を法人単位で評価し、有効期間は2年。ISMSは情報資産全般を対象に範囲を決めて認証し、毎年のサーベイランスと3年ごとの再認証がある
  • どちらも任意の制度。法律が求めるのは安全管理措置と委託先の監督
  • 費用はPマークはJIPDECの料金表(2026年10月改定)、ISMSは認証機関の見積りで確認する
  • 取得しない場合も、規程・台帳・教育と点検の記録・SECURITY ACTIONで体制を示し、チェックシートには実態どおりに回答する

この記事で使えるテンプレート

DOCX 総務 個人情報取扱規程(マイナンバー取扱いを含む) 個人情報保護委員会のガイドラインに沿って、利用目的の特定、取得・利用・保管・提供・廃棄の各段階のルール、安全管理措置、委託先の監督、漏えい等の報告、開示等の請求への対応を定め、マイナンバー(特定個人情報)の利用範囲、事務取扱担当者、取扱区域、本人確認、廃棄の章を加えた個人情報取扱規程のひな形です。 DOCX 総務 情報セキュリティ基本規程(ひな形) IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版の組織的・人的・物理的・技術的対策の区分に沿って、基本方針、管理体制、情報資産の管理、アクセス制御とパスワード、端末・メール・クラウドの利用、バックアップ、委託先管理、事故対応までを条文にした情報セキュリティ基本規程のひな形です。 CSV 総務 個人情報 管理台帳 社内で扱う個人データ(従業員名簿、給与データ、応募者情報、顧客名簿など)を一覧にする台帳です。個人情報保護委員会のガイドラインが例示する項目に、保管場所・保存期間・委託先・廃棄方法などを加えています。

この記事に出てくる用語

安全管理措置
個人データの漏えい・滅失・毀損を防ぐために会社が講じる措置です。基本方針の策定、規律の整備、組織的・人的・物理的・技術的な措置などがあり、規模にかかわらずすべての会社に義務づけられています。
委託先の監督
給与計算や名刺管理、書類の廃棄などで個人データの取扱いを外部に委託するとき、委託元の会社が委託先の安全管理を確認・監督する義務です。
個人情報保護法
個人情報を扱う事業者が守るべきルール(利用目的の特定、安全管理措置、第三者提供の制限、漏えい時の報告など)を定めた法律です。従業員数にかかわらず、個人情報を事業に使うすべての会社が対象です。
個人データ
検索できるように体系的に整理された個人情報の集まり(個人情報データベース等)を構成する個人情報のことです。社員名簿や顧客台帳、名刺管理ソフトの中の情報などが該当します。
SECURITY ACTION
中小企業が情報セキュリティ対策に取り組むことを自ら宣言する、IPAの制度です。取組みの段階に応じて「一つ星」と「二つ星」があり、補助金の申請要件になっていることもあります。
多要素認証
パスワードなどの「知っているもの」に加え、スマートフォンなどの「持っているもの」や指紋・顔などの「本人の特徴」を組み合わせてログインする認証方法です。
プライバシーマーク
個人情報を適切に取り扱う体制を整えている事業者を、JIPDECなどの審査を経て認定し、マークの使用を認める制度です。取得は任意ですが、取引の条件として求められることがあります。
労働保険
労災保険と雇用保険をまとめた呼び方です。労働者を1人でも雇うと加入が必要で、保険料は年度更新でまとめて申告・納付します。

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