社内資料・研修での新聞記事・書籍・ネット画像の利用と著作権|私的使用にならない理由、引用の条件、許諾の取り方
新聞記事をコピーして会議で配る、書籍のページを研修資料に貼る、ネットの画像をイントラに載せる。業務での複製は著作権法第30条の私的使用にあたらず、原則として権利者の許諾が必要です。引用(第32条)の条件、許諾なしで使えるもの、クリッピングの許諾の取り方、フリー素材の利用規約、生成AIを使うときの考え方を整理します。
- 対象読者
- 研修資料・会議資料・社内イントラの掲載物を作る、または社内の著作権ルールを整えたい従業員30〜300名の企業の総務担当者
- 難易度
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この記事のポイント
- 著作権法第30条の私的使用のための複製は、個人的・家庭内などの限られた範囲での使用が目的の場合に限られる。文化庁の資料は「仕事での利用は×」としており、社内資料・研修資料・イントラ掲載は原則として許諾が必要
- 許諾なしで使えるのは、引用(第32条)の条件を満たす場合や、法令・通達、事実の伝達にすぎない時事の報道など権利の対象外のものに限られる。引用は「明確に区別」「主従関係」「必要最小限」「出所の明示」がそろうこと
- 新聞・書籍のコピーは、管理団体や新聞社の許諾の仕組みを使う。フリー素材は利用規約の範囲で使う。生成AIの出力も、既存の著作物と類似し依拠していれば侵害になりうる
「業界紙の記事をコピーして会議で配りたい」「研修資料に本の図を載せたい」「イントラの記事にネットで見つけた画像を使いたい」。総務には、こうした相談がよく来ます。社内だけで使うのだから問題ないだろう、と考えがちですが、著作権法の考え方は違います。
この記事では、社内での利用が私的使用にならない理由、許諾なしで使える場合、許諾の取り方、社内ルールの作り方を整理します。社内報での写真や記事の扱いは社内報の始め方でも触れています。
社内での利用は「私的使用」にならない
著作権者の許諾なく複製できる場合の代表が、著作権法第30条の「私的使用のための複製」です。条文は、個人的に、または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用することを目的とする場合に、使用する本人が複製できると定めています。
文化庁著作権課の講習会資料は、この条件を次のように整理しています。
| 条件 | 文化庁資料の説明 |
|---|---|
| ① 目的 | 個人的に、または家庭内など限られた範囲での使用が目的であること。仕事での利用は× |
| ② 複製する人 | 使用する本人が複製すること。業者が行うことは× |
| ③ 除外 | 誰でも使える状態で設置してあるダビング機などでの複製、コピーガードの解除などは× |
会議資料、研修資料、社内イントラへの掲載、メールでの社内転送は、いずれも業務での利用です。社員が「自分の勉強のため」と言っても、業務の参考資料としてコピーするのであれば私的使用とは言えません。日本複製権センターの資料も、社員が執務の参考資料として出版物をコピーする場合は権利者の許諾などが必要としています。
学校などの教育機関での複製を認める第35条は、営利を目的として設置されている教育機関を除いており、企業の社内研修には使えません。
許諾なしで使える場合
引用(第32条)
公表された著作物は、公正な慣行に合致し、報道・批評・研究その他の引用の目的上正当な範囲内であれば、引用して利用できます。文化庁の資料が示す条件は次のとおりです。
| 条件 | 具体的には |
|---|---|
| 公表された著作物であること | 未公表のものは× |
| 引用の必然性があること | 自分の説明や論評のために、その部分が必要 |
| 明確に区別されていること | かぎ括弧や枠で、どこが引用部分か分かる |
| 主従関係があること | 自分の文章が「主」、引用部分が「従」 |
| 必要最小限度であること | 必要な部分だけを使う |
| 出所を明示すること | 著作者名、題名、媒体、発行年などを示す(第48条) |
たとえば、研修資料で「〇〇新聞の記事によれば」と1〜2文を引いて自社の対応を説明するのは引用になりえますが、記事全体を貼り付けて「参考資料」とするのは引用になりません。文化庁の資料は、近年の判例には目的・方法・著作権者への影響などを総合的に考慮して判断するものもあると注記しています。迷う場合は、要点を自分の言葉でまとめて出典を示す方法が安全です。
権利の対象にならないもの
| もの | 根拠 |
|---|---|
| 憲法その他の法令、国・自治体の告示・訓令・通達、判決 | 第13条(権利の目的とならない著作物) |
| 事実の伝達にすぎない雑報・時事の報道 | 第10条第2項(言語の著作物にあたらない) |
| 事実やデータそのもの | 思想・感情を創作的に表現したものではない(第2条第1項第1号) |
法令の条文や厚生労働省の通達を研修資料に載せるのは問題ありません。ただし、「事実の伝達にすぎない」報道は限られ、新聞記事の多くは記者の分析や表現を含むため、「ニュースだから自由に使える」とは考えないでください。省庁のパンフレットやイラストは、各サイトの利用規約に従って使います。
許諾の取り方
| 使いたいもの | 許諾の取り方の例 |
|---|---|
| 新聞・雑誌の記事のコピー・社内配信 | 日本複製権センター(JRRC)などの著作権管理団体と包括的な許諾契約を結ぶ、または新聞社・出版社に個別に申請する。特定の部署が高い頻度で継続的に新聞記事を複製する場合は、新聞社とのクリッピング契約が案内されている |
| 書籍の図表・ページ | 出版社に問い合わせる。管理団体の対象かを確認する |
| ネット上の画像・イラスト | サイトの利用規約を確認し、なければ作者に連絡する |
| フリー素材 | 利用規約の範囲(商用利用、加工、クレジット表記、点数の上限など)で使う |
| 外部講師の資料 | 研修の依頼時に、資料の社内配布・録画の配信範囲を契約で決める |
管理団体がすべての出版物を扱っているわけではありません。どの媒体が対象かは、利用前に団体や発行元に確認します。フリー素材は「無料」であっても「無条件」ではありません。利用規約は改定されることがあるので、ダウンロードした日と規約の内容を記録しておくと後で確認できます。外部に制作を頼む会社案内やロゴの著作権の扱いは、会社案内の作り方、名刺・書類テンプレートの統一で扱っています。
生成AIを使うときの考え方
文化審議会著作権分科会法制度小委員会の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)は、AIを道具として使う人が責任を負うことを前提に、次のような考え方を示しています。この文書自体に法的な拘束力はありません。
- AIの学習のための利用は、著作物の表現を享受することを目的としない利用として、第30条の4により原則として許諾なく行える(著作権者の利益を不当に害する場合などを除く)
- AIで生成したものを利用する段階では、通常の著作権侵害と同じく、既存の著作物との類似性と依拠性で判断する
- 利用者が既存の著作物を知らなかった場合でも、その著作物が学習データに含まれていれば、依拠性が推認されうる
社内資料でいえば、新聞記事や他社のスライドをAIに貼り付けて「書き換えて」と頼むと、元の表現が残ったまま使ってしまうおそれがあります。研修資料をAIで作るときの確認手順は社内研修資料をAIで作るときの注意を参照してください。
社内ルールにしておくこと
一人総務がすべての資料を確認するのは現実的ではありません。次の点を社内ルールにまとめ、資料を作る人が自分で判断できるようにします。
- 業務での新聞・書籍のコピー、スキャン、イントラ掲載、社内メールでの転送は、原則として許諾が必要
- 紹介するときは、見出しと要点を自分の言葉で書き、出典とリンクを示す
- 引用するときは、括弧で区別し、必要な部分だけにして、出所を明示する
- 画像は自社で撮影したもの、または利用規約を確認した素材を使う
- 外部講師の資料の配布範囲は、研修の依頼時に決める(→社内研修計画の立て方)
- 判断に迷うときは総務に相談する。総務も迷う場合は、権利者に問い合わせるか、顧問弁護士に相談する
まとめ
- 業務での複製は私的使用にあたらない。社内資料・研修資料・イントラ掲載でも、原則として権利者の許諾が必要
- 引用は、明確な区別、主従関係、必要最小限、出所の明示がそろって初めて認められる
- 法令・通達、事実の伝達にすぎない時事の報道は権利の対象外。新聞記事全般が自由に使えるわけではない
- 新聞・書籍は発行元や管理団体の許諾の仕組みを使い、フリー素材は利用規約の範囲で使う
- 生成AIの出力も、既存の著作物と類似し依拠していれば侵害になりうる