建物・設備の点検の委託先の選び方|消防設備・定期調査・受水槽・電気設備で必要な資格と、見積・契約で確認すること
消防用設備等の点検、建築基準法の定期調査・検査、受水槽の検査、電気設備の保安管理は、法令で点検できる人や機関が決まっています。点検の種類ごとに必要な資格や登録、1社にまとめるか分けるかの考え方、見積と契約で確認することを、特定の事業者に寄らずに整理します。
- 対象読者
- 自社ビル・自社工場の消防設備や建物の法定点検を外部の業者に頼む、または委託先の見直しを考えている従業員30〜300名の企業の総務担当者
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この記事のポイント
- 消防用設備等は一定の防火対象物では消防設備士または消防設備点検資格者が点検する。建築基準法の定期調査は一級・二級建築士または建築物調査員が行う。委託先を選ぶときは、点検の種類ごとに資格者が誰かを確認する
- 自家用電気工作物(高圧受電設備など)は、電気主任技術者を選任するか、要件を満たす者に保安管理業務を委託して産業保安監督部長などの承認を受ける
- 見積は点検の範囲・回数・報告書の提出代行・不良箇所の改修の扱いをそろえて比べる。点検や報告の義務は委託しても会社(所有者・管理者・関係者)に残る
自社ビルや自社工場を持つ会社では、消防設備、建物と建築設備、受水槽、高圧受電設備などの点検を、毎年どこかの業者に頼んでいます。「前任者の時代から同じ業者」「ビル管理会社にまとめて任せている」という状態だと、何の点検を誰がしているのか、総務でも把握しきれていないことがあります。
この記事では、点検の種類ごとに誰が点検できるかを法令で確認したうえで、委託先の選び方と見積・契約の確認点を整理します。点検の義務と周期は自社ビル・自社工場の法定点検の一覧と消防用設備等の点検と報告、清掃の委託はオフィス清掃の委託先の選び方で扱っています。
点検の種類と、点検できる人
| 点検 | 根拠 | 点検・検査をする人 | 報告・結果の提出先 |
|---|---|---|---|
| 消防用設備等の点検 | 消防法第17条の3の3 | 政令で定める防火対象物は消防設備士または消防設備点検資格者。それ以外は関係者が自ら点検できる | 消防長または消防署長 |
| 建築物の定期調査 | 建築基準法第12条第1項 | 一級建築士、二級建築士または建築物調査員 | 特定行政庁 |
| 建築設備・防火設備・昇降機の定期検査 | 建築基準法第12条第3項 | 一級建築士、二級建築士または各設備の検査員 | 特定行政庁 |
| 受水槽(簡易専用水道)の検査 | 水道法第34条の2 | 地方公共団体の機関または国土交通大臣・環境大臣の登録を受けた検査機関 | ― |
| 自家用電気工作物の保安 | 電気事業法第43条、同法施行規則第52条 | 選任した電気主任技術者、または承認を受けて保安管理業務を委託した者 | ― |
東京消防庁の案内では、延べ面積1,000㎡以上の建物などは消防設備士または消防設備点検資格者による点検が必要で、それ以外の建物では、消火器などの点検を関係者が自ら行うこともできるとされています。自社の建物がどちらに当たるかは、所轄の消防署で確認します。
電気設備は「選任」か「委託承認」か
高圧で受電する自家用電気工作物の設置者は、電気主任技術者を選任しなければなりません(電気事業法第43条)。電気事業法施行規則第52条第2項は、電圧7,000ボルト以下で受電する需要設備などについて、保安管理業務を要件を満たす者に委託する契約を結び、経済産業大臣(産業保安監督部長)の承認を受けた場合は、電気主任技術者を選任しないことができると定めています。中小企業の自社ビルや工場では、この委託承認の形をとることが多くあります。委託先を替えるときは承認の手続きも変わるため、所轄の産業保安監督部の案内を確認します。
1社にまとめるか、分けるか
| 方法 | 向いている会社 | 注意点 |
|---|---|---|
| ビル管理会社に一括で委託 | 設備が多く、日常の管理や修繕もまとめて頼みたい | 実際に点検するのが下請けの会社になることがある。点検ごとに資格者が誰かを確認する |
| 点検の種類ごとに専門業者へ委託 | 設備が少なく、点検の種類も限られる | 日程の調整と報告書の管理を総務が行う。年間予定表を作る |
どちらの方法でも、建築基準法の報告や消防法の報告の義務を負うのは、建物の所有者・管理者や防火対象物の関係者です。委託しても義務がなくなるわけではないため、報告書の控えと提出の記録を会社で保管します。
見直しの前に現状を棚卸しする
委託先を比べる前に、今どの点検を誰に頼んでいるかを一覧にします。前任者からの引継ぎが不十分な会社では、この棚卸しで、報告していない点検や、契約が切れたまま続いている点検が見つかることがあります。
| 棚卸しの項目 | 確認する書類 |
|---|---|
| 点検の種類と対象の設備 | 前回の点検報告書、消防署・特定行政庁への報告書の控え |
| 委託先と契約期間 | 委託契約書、注文書、請求書 |
| 実際に点検した会社と資格者 | 報告書の点検者の欄 |
| 次回の点検・報告の時期 | 報告書、特定行政庁や消防署からの通知 |
| 不良の指摘と改修の状況 | 報告書の不良欄、改修の見積・作業報告書 |
賃貸ビルに入居している場合は、ビル側が手配している点検と、自社で手配すべき点検(テナントが設置した設備など)の境目を、管理会社に確認します。
委託先を比べるときの確認点
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 資格者 | 点検の種類ごとに、点検する人の資格(消防設備士、建築物調査員、検査員など)を確認する |
| 点検の範囲 | 対象の設備、階、テナント専有部への立入りの有無 |
| 回数・時期 | 機器点検・総合点検の回数、定期報告の時期、業務への影響が少ない日程にできるか |
| 報告の代行 | 消防署や特定行政庁への報告書の作成・提出を代行するか、控えの受け渡し方法 |
| 不良箇所の扱い | 不良の報告の形式、改修の見積を出すか、改修を別の業者に頼んでもよいか |
| 緊急時の対応 | 設備の故障や警報の誤作動のときの連絡先と対応時間 |
| 費用 | 点検料、報告手数料、立会い・夜間作業の割増、改修の費用が別かどうか |
建築物衛生法の対象となる特定建築物では、清掃や空気環境の測定、貯水槽の清掃などの事業者が、営業所ごとに都道府県知事の登録を受けることができます(第12条の2)。登録の有無は、委託先の体制を確かめる手がかりの一つになります。
契約と、契約後に総務がやること
- 契約書に、点検の範囲・回数、報告書の提出期限、再委託の可否、個人情報や建物の情報の取扱いを書く(業務委託契約書のチェックポイント)
- 点検の日程を社内に周知し、専有部への立入りや停電を伴う作業を調整する
- 報告書を受け取ったら、不良箇所を一覧にして改修の担当と期限を決める(設備点検の報告書から指摘事項をAIで一覧にする)
- 報告書の控え、改修の記録、委託承認などの書類を、次の点検まで見られる場所に保管する
年間の予定を一つの表にまとめる
点検の種類ごとに業者が違うと、日程の調整が総務に集中します。年度の初めに、点検の種類・業者・実施月・報告の期限・立会いの担当を1枚の年間予定表にまとめ、社内のカレンダーにも登録します。停電を伴う電気設備の点検や、全館の放送を伴う消防設備の点検は、業務への影響が大きいため、早めに社内へ周知します。
まとめ
- 消防設備、建物の定期調査、建築設備等の検査、受水槽の検査、電気設備の保安は、それぞれ点検できる人や機関が法令で決まっている。委託先を選ぶときは点検ごとに資格者を確かめる
- 高圧受電設備は、電気主任技術者を選任するか、保安管理業務を委託して承認を受ける
- 一括委託でも個別委託でも、報告の義務は会社に残る。報告書の控えと提出の記録を保管する
- 見積は、範囲・回数・報告の代行・不良箇所の扱い・緊急時の対応をそろえて比べる
この記事で使えるテンプレート
総務 防災・BCP 備えチェックリスト 地震・風水害などの災害に備えて、総務が点検すべき項目をまとめたチェックリストです。体制・連絡網、防火管理、オフィスの安全対策、備蓄品、事業継続(BCP)、訓練までを確認できます。この記事に出てくる用語
- 消防用設備等
- 消火器、自動火災報知設備、誘導灯、スプリンクラーなど、消防法で建物に設置が義務づけられている設備です。定期的な点検と、消防署への結果の報告が必要です。