労務 #変形労働時間制#労働時間#労使協定

1週間単位の非定型的変形労働時間制とは|30人未満の小売・旅館・飲食店の要件、前週までの書面通知、労使協定の届出

1週間単位の非定型的変形労働時間制は、常時30人未満の小売業・旅館・料理店・飲食店の事業場が、労使協定により1日10時間まで、週40時間の範囲で日ごとの労働時間を決められる制度です。対象事業と人数の数え方、週の開始前の書面通知と緊急時の変更、協定届(様式第5号)、割増賃金と18歳未満・妊産婦の扱いを条文に沿って整理します。

対象読者
小売店・飲食店・旅館などを運営する、規模の小さい事業場の労務担当者
難易度
実務
所要時間
読了7分
最終確認日

この記事のポイント

  • 対象は、常時使用する労働者が30人未満の小売業・旅館・料理店・飲食店の事業。労使協定を結び様式第5号で労働基準監督署に届け出れば、1日10時間まで、週40時間以内で各日の労働時間を決められる
  • 各日の労働時間は、その週が始まる前に書面で通知する。緊急でやむを得ない事由があるときは、変更しようとする日の前日までに書面で通知すれば変更できる
  • 週44時間の特例は使えず、週40時間が上限。18歳未満には適用できず、妊産婦が請求したときは1日8時間・週40時間を超えて働かせられない

天候や予約の入り方で、日によって忙しさが大きく変わる。そうした小さな店舗や旅館のために、労働基準法には「1週間単位の非定型的変形労働時間制」という制度があります。1か月単位や1年単位の変形労働時間制ほど知られていませんが、翌週のシフトを週ごとに組む店舗では使いやすい面があります。

この記事では、対象となる事業、労使協定と届出、書面通知のルール、割増賃金の考え方を整理します。1か月単位・1年単位の制度は変形労働時間制の基本を参照してください。

制度の概要

労働基準法第32条の5は、日ごとの業務に著しい繁閑の差が生じることが多く、就業規則などで各日の労働時間を特定することが難しい事業について、労使協定があれば1日10時間まで労働させることができると定めています。

項目 内容 根拠
対象事業 小売業、旅館、料理店、飲食店 施行規則第12条の5第1項
規模 常時使用する労働者が30人未満 施行規則第12条の5第2項
1日の上限 10時間 法第32条の5第1項
1週の上限 40時間 労働局の案内(特例対象事業場も同じ)
必要な手続 労使協定の締結と、様式第5号による労働基準監督署長への届出 法第32条の5第3項、施行規則第12条の5第4項
労働者への通知 1週間の各日の労働時間を、週の開始前に書面で 法第32条の5第2項、施行規則第12条の5第3項

週44時間の特例との関係

常時10人未満の商業・接客娯楽業などは、週44時間の特例措置の対象になります(週44時間の特例措置)。しかし労働局の案内では、1週間単位の非定型的変形労働時間制では特例対象事業場も週40時間とされています。週44時間で運用してきた店舗が導入すると、週の上限はかえって短くなる点に注意します。

労使協定で定めること

労働局の案内では、労使協定で次の点を定めることが要件とされています。

  1. 1週間の労働時間を40時間以下とすること
  2. その時間を超えて労働させた場合には、割増賃金を支払うこと

協定の相手は、労働者の過半数で組織する労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者です(過半数代表者の選び方)。締結した協定は、様式第5号で所轄の労働基準監督署長に届け出ます。

就業規則の始業・終業時刻の定めも、この制度を使うことと、各日の時間は週ごとに書面で通知することが分かるように整えておきます(労使協定の一覧)。

書面通知のルール

各日の労働時間は、その1週間が始まる前に、書面で通知しなければなりません(施行規則第12条の5第3項)。

場面 ルール
通常 週の開始前に、その週の各日の労働時間を書面で通知する
緊急でやむを得ない事由があるとき 変更しようとする日の前日までに書面で通知すれば、通知済みの時間を変更できる

「緊急でやむを得ない事由」は、台風などで予約が大量にキャンセルされたような、使用者の主観ではなく客観的な事情を想定したものと考えておくのが安全です。当日になってからの変更は、このルールでは認められていません。

さらに、使用者は各日の労働時間を定めるにあたり、労働者の意思を尊重するよう努めなければなりません(同条第5項)。シフトの希望を聞く手順を決めておきます。

通知書の例

日 月 火 水 木 金 土 日
労働時間 休日 4時間 5時間 6時間 7時間 9時間 9時間
始業〜終業 — 17:00〜21:00 16:00〜21:30(休憩30分) 15:00〜21:45(休憩45分) 14:00〜21:45(休憩45分) 11:00〜21:00(休憩1時間) 11:00〜21:00(休憩1時間)

この例は合計40時間です。週の合計が40時間を超えないように組み、1日10時間を超える日を作らないようにします。休憩は労働時間に応じて必要です(休憩時間のルール)。週1日の休日の確保も通常どおり必要です。

割増賃金の考え方

この制度でも、時間外労働をさせるには36協定が必要です(36協定の基本)。時間外労働になる時間は、1か月単位の変形労働時間制と同じく、次の考え方で判断するのが一般的です。

単位 時間外労働になる時間
1日 通知した時間が8時間を超える日はその時間を超えた時間、8時間以下の日は8時間を超えた時間
1週 40時間を超えた時間(1日単位で時間外とした時間を除く)

上の例で、土曜日(通知9時間)に10時間働いたら、9時間を超えた1時間が時間外労働です。火曜日(通知4時間)に6時間働いた場合は8時間以内なので、1日単位では時間外になりませんが、週の合計が40時間を超えれば週単位で時間外になります。計算方法に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確認してください。

適用できない人・配慮が必要な人

対象 扱い 根拠
18歳未満の者 この制度は適用されない 法第60条第1項
妊産婦(妊娠中・産後1年以内)が請求した場合 1日8時間・1週40時間を超えて労働させてはならない 法第66条第1項

高校生アルバイトが多い飲食店では、18歳未満の人だけは通常の労働時間(1日8時間・週40時間)でシフトを組みます(年少者を雇うときの制限)。妊娠を申し出た従業員への対応は妊娠・出産の申出への対応を参照してください。

導入前に比べたい制度

制度 向いている場面
1週間単位の非定型的変形労働時間制 30人未満の小売・旅館・飲食で、翌週の忙しさがその週になるまで読めない
1か月単位の変形労働時間制 月の中の繁閑がある程度予測でき、月単位でシフトを組める
1年単位の変形労働時間制 季節による繁閑がはっきりしている
シフト制(変形なし) 1日8時間以内で組めるなら、変形制は不要

シフト制全般の注意点はシフト制勤務の労働時間管理にまとめています。

まとめ

  • 常時30人未満の小売業・旅館・料理店・飲食店が、労使協定と様式第5号の届出で導入できる。1日10時間・週40時間が上限で、週44時間の特例は使えない
  • 各日の労働時間は週の開始前に書面で通知する。変更は緊急でやむを得ない場合に前日までの書面通知でのみ可能
  • 通知した時間・8時間・週40時間を基準に時間外労働を判断し、36協定と割増賃金で対応する
  • 18歳未満には適用できず、妊産婦が請求したときは1日8時間・週40時間を超えられない

この記事に出てくる用語

36協定
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて残業させたり、法定休日に働かせたりするために、会社と労働者の過半数代表が結び、労働基準監督署に届け出る労使協定です。
就業規則
労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
時間外労働
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働のことです。36協定の締結・届出と、25%以上の割増賃金の支払いが必要です。
変形労働時間制
一定期間を平均して週40時間以内であれば、特定の日や週に法定労働時間を超えて働かせても時間外労働にならない制度です。1か月単位・1年単位・1週間単位があります。
労使協定
会社と、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数代表者)との間で結ぶ書面の協定です。法律の原則を例外的に変える効果があります。
労働基準監督署
労働基準法・労働安全衛生法などが守られているかを監督する厚生労働省の機関です。36協定や就業規則の届出先で、労災保険の給付の窓口でもあります。
割増賃金
時間外労働・休日労働・深夜労働をさせたときに、通常の賃金に上乗せして支払う賃金です。率は労働基準法と政令で定められています。

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出典・参考資料

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