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ハラスメント防止研修の事例教材をAIで作る:指針の6類型に沿った架空ケース、討議の問い、振り返りシートの作り方

ハラスメント防止の研修は、法令や指針の説明だけでは「自分ごと」になりにくいものです。厚生労働省のパワハラ指針の定義と6つの類型に沿って、架空の事例、グループ討議の問い、振り返りシートを生成AIで下書きする手順と、実際の相談事案をAIに入れない注意点を整理します。

対象読者
社内でハラスメント防止研修を企画・実施する、従業員30〜300名の企業の人事・総務担当者
難易度
実務
所要時間
読了8分
最終確認日

この記事のポイント

  • パワハラ指針は、①優越的な関係を背景とした言動で、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③就業環境が害されるもの、の3要素をすべて満たすものをパワハラとし、6つの類型を示している。研修は事業主の措置のひとつ
  • AIには、類型ごとの架空事例、「該当する・しない」の境目にある事例、討議の問い、振り返りシートの下書きを任せる。該当するかどうかの解説は指針と照らして人が確認する
  • 社内で実際にあった相談や調査の内容は、匿名にしてもAIに入力しない。事例は架空の設定で作り、特定の人を思い起こさせないようにする

ハラスメント防止研修を毎年実施していても、「定義を読み上げるだけで終わってしまう」「参加者の反応が薄い」という悩みはよく聞きます。身近な場面に近い事例を使って考えてもらうと、研修は格段に伝わりやすくなります。

この記事では、厚生労働省の指針に沿った架空の事例と討議の問いを生成AIで下書きする手順を整理します。会社が講じるべき措置の全体はハラスメント防止の措置、管理職向けの研修は管理職向けハラスメント研修で解説しています。

指針の定義と6つの類型

パワハラ指針は、職場におけるパワーハラスメントを、次の3つの要素をすべて満たすものとしています。

  1. 優越的な関係を背景とした言動であって
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワハラに該当しないとされています。指針は、代表的な言動を6つの類型に分けて示しています。

類型 内容(指針より)
身体的な攻撃 暴行・傷害
精神的な攻撃 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
人間関係からの切り離し 隔離・仲間外し・無視
過大な要求 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害
過小な要求 業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
個の侵害 私的なことに過度に立ち入ること

指針は、事業主が方針を明確にして労働者に周知・啓発する方法の例として、研修・講習などの実施を挙げています。2026年10月1日からは、カスタマーハラスメント対策と、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策も事業主の義務になりました。研修の範囲を見直す時期でもあります。

AIに任せること・任せないこと

区分 内容
AIに任せる 類型ごとの架空事例、判断が分かれる事例、グループ討議の問い、振り返りシート、確認テストの選択肢
人が確認する 事例の解説が指針と合っているか、自社の業種や職場に合っているか、特定の人を思い起こさせないか
AIに入力しない 社内で実際にあった相談・調査の内容、関係者の氏名・部署、懲戒処分の記録

実際の事案を「似た設定」で作り直そうとすると、社内の人には誰の話か分かってしまうことがあります。事例はあくまで架空の設定で作ります。

手順1:研修の対象とねらいを決める

AIに頼む前に、誰に向けた研修か、何ができるようになってほしいかを決めます。

対象 ねらい(例)
全従業員 何がハラスメントにあたるかを知り、相談窓口を知る
管理職 適正な指導とパワハラの違いを理解し、相談を受けたときの初動を知る
顧客対応の部署 カスタマーハラスメントを受けたときの対応と報告の流れを知る

手順2:架空の事例を作る

ねらいが決まったら、事例を作ります。業種と職場の様子を伝えると、身近な事例になります。

従業員80名の食品卸売業の会社で、管理職向けのハラスメント防止研修に使う
架空の事例を作ってください。
・厚生労働省のパワハラ指針の6つの類型(身体的な攻撃、精神的な攻撃、
  人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害)から1つずつ
・それぞれ200字程度。登場人物は「課長A」「社員B」のように記号にする
・6つとは別に、「適正な指導」と言えるかどうか判断が分かれる事例を2つ
・各事例の後に、指針の3つの要素に照らした考え方の解説を付ける

判断が分かれる事例は、研修でいちばん議論が深まる部分です。たとえば「ミスが続く部下に、改善のために業務の範囲を一時的に絞る」のような場面は、目的や期間、本人への説明によって評価が変わります。

手順3:解説を指針と照らして確認する

AIが付けた解説は、そのまま使わず、指針の本文と照らして確認します。

  • 「この言動は必ずパワハラになる」と断定していないか(指針は、言動の目的や経緯、頻度などを総合的に考慮するとしている)
  • 指針に書かれていない基準を、指針の内容のように書いていないか
  • 「優越的な関係」を上司と部下に限っていないか(同僚や部下からの集団による行為で、抵抗や拒絶が難しいものも含まれる)
  • セクハラ・マタハラ・カスハラの事例では、それぞれの指針の定義に合っているか

事例が実際にあった出来事に似すぎていないかも、人が読んで確認します。

手順4:討議の問いと振り返りシートを作る

事例を使ったグループ討議では、答えを1つに決めるより、考える筋道を共有することが大切です。問いはAIに複数案を出させて選びます。

問いの例 ねらい
この場面で、Aさんの言動の目的は何だと思いますか 業務上の必要性を考える
同じ目的を達成するために、別の伝え方はありますか 適正な指導の方法を考える
Bさんがこの後、誰かに相談するとしたら、どこに相談できますか 相談窓口を確認する
あなたがこの場面を見かけたら、何ができますか 周囲の人の行動を考える

振り返りシートには、「今日の研修で気づいたこと」「自分の職場で気をつけたいこと」「相談窓口の連絡先」の欄を設けます。シートの回答をAIで集計する場合は、氏名の欄を外してから使います。

研修後にやること

やること 内容
記録 実施日、対象者、内容、参加者数を残す
相談窓口の再周知 窓口の担当者と連絡方法を、研修資料と社内掲示で改めて知らせる
次回への反映 振り返りシートで分かりにくかった点を、次回の事例に反映する

研修の後に相談が増えることがあります。相談を受けたときの記録はハラスメント相談記録票が使えます。相談の内容はAIに入力しません。

確認テストの作り方

研修の最後に短い確認テストを入れると、理解の度合いを確かめられます。AIに選択式の問題を作らせる場合は、次のように頼みます。

今日の研修内容(パワハラの3要素、6類型、相談窓口)について、
○×式の確認問題を5問作ってください。
・各問に、正解とその理由を1〜2文で付ける
・「必ず」「絶対に」のような断定的な言い方は、正解の文に使わない

正解の理由が指針の内容と合っているかは、人が確認します。テストの結果は個人の評価に使わず、研修の改善に使うと伝えておくと、参加者も安心して答えられます。

まとめ

  • パワハラ指針は3つの要素と6つの類型を示しており、研修は事業主が講じる周知・啓発の措置のひとつ
  • AIには、自社の業種に合わせた架空の事例、判断が分かれる事例、討議の問い、振り返りシートの下書きを任せる
  • 解説は指針の本文と照らして人が確認し、断定しすぎていないかを見る
  • 実際の相談・調査の内容や関係者の情報は、匿名にしてもAIに入力しない

研修教材づくりや社内の周知資料にAIをどう使うか相談したいときは、Otsumu株式会社のAIツール診断をご利用ください。

この記事で使えるテンプレート

CSV 人事 年間研修計画表 1年間の社内研修・外部研修を一覧で計画し、実施結果まで記録できる表です。法定の教育と任意の研修を分け、対象者・時期・講師・費用・助成金の活用予定・受講実績を1行で管理できます。 DOCX 労務 ハラスメント相談記録票 社内のハラスメント相談窓口で使う相談記録票です。相談内容を5W1Hで整理し、相談者の意向、説明した事項(プライバシー保護・不利益取扱いの禁止)、事実確認と対応の経過までを記録できます。2026年10月施行のカスハラ対策義務化にも対応しています。

この記事に出てくる用語

カスタマーハラスメント
顧客や取引先などの言動のうち、社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されることです。2026年10月1日から、すべての事業主に防止措置が義務づけられました。
セクシュアルハラスメント
職場で行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働条件で不利益を受けたり、就業環境が害されたりすることです。男女雇用機会均等法により、事業主に防止措置が義務づけられています。
懲戒処分
職場の規律や秩序に違反した社員に対して、会社が制裁として行う処分です。就業規則に処分の種類と事由を定めておかなければ行えません。
パワーハラスメント
職場で優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動によって、労働者の就業環境を害することです。労働施策総合推進法により、すべての事業主に防止措置が義務づけられています。
マタニティハラスメント
妊娠・出産したことや、産休・育休などの制度を利用したことに関する上司・同僚の言動により、就業環境が害されることです。男女雇用機会均等法と育児・介護休業法で、防止措置が義務づけられています。

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出典・参考資料

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