ワークフロー(稟議)システムの選び方:承認経路・決裁権限・電子帳簿保存法の確認ポイント
稟議書や購買申請を紙とハンコで回していると、承認待ちや紛失、進み具合が分からないといった問題が起きます。ワークフローシステムを選ぶ前に整理すること、承認経路と決裁権限の設定、添付書類と電子帳簿保存法、比較とトライアルで確かめる点を、特定の製品に寄らずに解説します。
- 対象読者
- 紙やメールで回している稟議・各種申請を電子化したい、従業員30〜300名の企業の総務・管理部門担当者
- 難易度
- 基本
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 導入前に、電子化する申請の一覧と、決裁権限(誰がいくらまで承認できるか)を規程で整理しておく
- 比較の中心は「承認経路の設定のしやすさ」「不在時の代理承認」「履歴の残り方」「添付書類の保存」「他システムとの連携」
- 見積書や請求書の電子データを添付する場合は、電子帳簿保存法の電子取引データの保存要件を満たす保存場所を決めておく
稟議書を印刷して上長の机に置き、押印を待つ。出張中の役員の承認が下りず、発注が止まる。どこまで承認が進んだのか、申請者にも総務にも分からない。紙とハンコで回す稟議には、こうした問題がつきものです。
ワークフローシステムは、稟議や各種申請を画面上で回し、承認の状況と履歴を残す仕組みです。この記事では、特定の製品をすすめるのではなく、導入前に整理することと比較で確かめるポイントを紹介します。
導入前に整理すること
電子化する申請を一覧にする
まず、社内にある申請・届出を洗い出します。
| 申請の例 | 主な担当 | 他のシステムで対応できるか |
|---|---|---|
| 稟議(購買・契約・投資) | 総務・経理 | ワークフローシステムで対応 |
| 備品・消耗品の購入申請 | 総務 | 購買サービスの承認機能でもよい(→備品・消耗品の購買サービスの選び方) |
| 経費精算 | 経理 | 経費精算システム(→経費精算システムの選び方) |
| 休暇・残業申請 | 人事 | 勤怠管理システム(→勤怠管理システムの選び方) |
| 押印申請・契約書の確認 | 総務・法務 | ワークフロー、または電子契約サービス |
| 各種届出(住所変更など) | 人事 | 労務管理クラウド、またはワークフロー |
すでに別のシステムで承認できる申請まで、ワークフローに集める必要はありません。重複すると、申請者がどこから出せばよいか迷います。
決裁権限を規程で整理する
ワークフローは、決められた承認経路を正確に回す道具です。「誰が、何を、いくらまで承認できるか」が決まっていないと、システムに設定できません。
| 整理する項目 | 例 |
|---|---|
| 決裁区分 | 購買・契約・人事・投資 |
| 金額の段階 | 10万円未満は部長、100万円未満は担当役員、それ以上は社長 |
| 合議(確認のみ)の部署 | 契約は総務、IT機器は情報システム担当 |
| 例外 | 緊急時の事後承認の扱い |
職務権限規程や稟議規程がない、または実態と合っていない場合は、導入に合わせて見直します(→社内規程の体系と管理、社内規程を改定するときの手順)。
比較のポイント
1. 承認経路の設定のしやすさ
| 確かめること | 理由 |
|---|---|
| 金額・部署・申請の種類で経路を分けられるか | 決裁権限をそのまま設定するため |
| 組織変更・人事異動のときの更新方法 | 年に数回の更新を担当者が自分でできるか |
| 差し戻し・取り下げ・再申請の流れ | 申請者に分かりやすいか |
| 承認者の追加(回覧)を申請者ができるか | 運用の自由度と統制のバランス |
2. 不在時の代理承認
承認者の出張・休暇で止まらないよう、代理承認の設定ができるかを確かめます。代理で承認した場合に、誰が代理で承認したかが履歴に残るかも確認します。
3. 申請様式の作りやすさ
稟議書や申請書の項目を、担当者がノーコードで作成・変更できるかを確かめます。金額の自動計算、必須項目、添付ファイルの要否を設定できると、記入漏れによる差し戻しが減ります。
4. 履歴と検索
| 確かめること | 理由 |
|---|---|
| 申請・承認・差し戻しの日時と操作者が残るか | 後から経緯を確かめるため |
| 過去の稟議を件名・金額・日付・取引先で検索できるか | 監査や過去の判断の確認に使う |
| 退職者の申請・承認の履歴が残るか | アカウント削除後の扱い |
| データを一括で出力できるか | 乗り換えや保存のため |
5. 添付書類と電子帳簿保存法
稟議には、見積書・請求書・契約書案を添付することがよくあります。取引先からメールやウェブで受け取った見積書・請求書などは電子取引データにあたり、電子帳簿保存法に沿って電子データのまま保存する必要があります。
国税庁の案内では、電子取引データの保存には、改ざんを防ぐための「真実性の確保」(事務処理規程を定めて守る方法もある)と、見読性や検索などの「可視性の確保」が求められます。
| 確かめること | 内容 |
|---|---|
| ワークフローを保存場所にするか | するなら、取引年月日・金額・取引先で検索できるか、訂正削除の履歴が残るか |
| 別の保存場所にするか | 文書管理システムや経理のシステムに保存し、稟議には参照を付ける |
| 社内の事務処理規程 | 保存場所と手順を規程に書く |
どこを保存場所にするかは、経理担当とあわせて決めます(→文書管理システムの選び方)。
6. 他システムとの連携
| 連携先 | 確かめること |
|---|---|
| チャットツール・メール | 承認依頼の通知が届くか |
| 会計・経費精算 | 承認済みの稟議と支払いを結び付けられるか |
| 電子契約 | 稟議の承認後に契約の送信へ進めるか(→電子契約サービスの選び方) |
| アカウント管理 | シングルサインオン、退職時のアカウント停止 |
7. セキュリティと権限
閲覧できる範囲(人事関係の申請は人事担当だけなど)を設定できるか、ログインの多要素認証に対応しているかを確かめます(→情シス兼任総務の情報セキュリティ最低限チェック)。
費用の比べ方
料金はユーザー数や機能の範囲で変わるのが一般的です。各社の最新の料金は公式サイトや見積もりで確かめ、次の項目をそろえて比べます。
| 項目 | 確かめること |
|---|---|
| 対象ユーザー | 申請だけする人も課金対象か |
| 初期費用・設定支援 | 経路や様式の初期設定を依頼できるか |
| 保存容量 | 添付ファイルが増えたときの扱い |
| 契約期間 | 月単位か年単位か、解約時のデータ出力 |
トライアルで確かめること
- 実際の決裁権限どおりに、金額別の経路を設定できるか
- 承認者・申請者がスマートフォンから迷わず操作できるか
- 代理承認と、その履歴の残り方
- 組織変更を想定した経路の一括変更
- 過去の申請の検索と、一括出力の形式
まとめ
- 電子化する申請を一覧にし、他のシステムで対応できるものは分ける
- 決裁権限を規程で整理してから、承認経路を設定する
- 経路設定・代理承認・様式・履歴と検索・添付書類・連携・権限で比べる
- 電子取引データを添付するなら、電子帳簿保存法に沿った保存場所を経理と決める
- 料金・機能は各社の公式資料で確認し、確認日を記録する