防災備蓄品の購入・入替サービスの選び方:3日分の必要量の出し方、賞味期限の管理、保管場所と入替時の処分で比べる
防災備蓄品は、まとめて購入する方法のほか、定期的な入替や保管・管理まで任せるサービスもあります。特定の製品をすすめずに、国と東京都が示す3日分の備蓄量の目安の出し方、賞味期限の管理、保管場所、入替時の処分や活用、見積もりで確認する点を整理します。
- 対象読者
- 防災備蓄品をまとめて買い替える時期が近づいている、または期限切れの備蓄品を毎回個別に処分している従業員30〜300名の企業の総務担当者
- 難易度
- 基本
- 所要時間
- 読了7分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 内閣府のガイドラインと東京都の帰宅困難者対策ハンドブックは、従業員1人あたり3日分として水9リットル(1日3リットル)、主食9食(1日3食)、毛布1枚を目安とし、外部の帰宅困難者のために10%程度を余分に備蓄することも示している。まず自社の必要量を出してから見積もりを取る
- サービスは「購入のみ」「定期入替つき」「保管・管理まで」に大きく分かれる。入替の周期、期限の通知、古い備蓄品の引取り・処分の範囲と費用を比べる
- 備蓄の量や品目の判断は会社が行う。サービスの提案をそのまま採用せず、従業員数・フロア・アレルギーや女性・高齢者への配慮を自社で確かめる
防災備蓄品は、一度そろえると数年は見直さないことが多く、気づくと賞味期限が一斉に切れている、ということが起こりがちです。買い替えのたびに必要量を計算し直し、古い備蓄品の処分先を探すのは、総務担当にとって負担の大きい仕事です。
この記事では、防災備蓄品の購入・入替サービスを選ぶときの比較ポイントを、特定の製品や業者をすすめずに整理します。帰宅困難者対策の考え方は帰宅困難者対策と一斉帰宅抑制、防災・BCP全体は防災・BCPの基本で扱っています。
まず自社の必要量を出す
東京都帰宅困難者対策条例第7条は、事業者に、従業者の一斉帰宅の抑制と、施設内での待機を維持するための3日分の飲料水・食糧などの備蓄に努めるよう求めています(努力義務)。内閣府のガイドラインと東京都のハンドブックは、備蓄量の目安を次のように示しています。
| 品目 | 1人あたりの目安(3日分) |
|---|---|
| 水 | 1日3リットル、計9リットル |
| 主食 | 1日3食、計9食 |
| 毛布 | 1枚 |
| その他 | 物資ごとに必要量を算定(簡易トイレ、衛生用品、敷物、携帯ラジオ、懐中電灯、乾電池、救急医療薬品類など) |
対象は、雇用形態を問わず事業所内で勤務する全従業員です。東京都のハンドブックは、来社中の顧客や取引先など外部の帰宅困難者のために、10%程度の量を余分に備蓄することも示しています。
| 計算に使う数字 | 確認先 |
|---|---|
| 拠点ごと・フロアごとの在館人数 | 社員名簿、派遣・常駐の委託先の人数を含める |
| 来客の平均人数 | 受付の記録 |
| 配慮が必要な人 | 食物アレルギー、女性用品、乳幼児連れの来客、高齢者・障害のある人 |
| 保管できる場所の広さ | フロアごと、エレベーター停止時に運べるか |
必要量を出してから見積もりを依頼すると、業者ごとの提案を同じ条件で比べられます。
サービスの種類
| 種類 | 主な内容 | 向いている会社 |
|---|---|---|
| 購入のみ | 備蓄品を一括で納品。管理は自社 | 拠点が少なく、総務で期限を管理できる |
| 定期入替つき | 賞味期限が近づいたら新しい品に入れ替え、古い品を引き取る | 期限切れが繰り返し起きている |
| 保管・管理まで | 備蓄品の保管、在庫の記録、期限の通知、配置の提案まで任せる | 拠点が多い、保管場所が足りない |
どの種類でも、備蓄の量や品目を最終的に決めるのは会社です。業者の提案する「推奨セット」が自社の人数や配慮事項に合っているかを確かめます。
比べるポイント1:賞味期限と入替の周期
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 賞味期限・使用期限 | 水・主食・簡易トイレ・電池など品目ごとの期限 |
| 入替の周期 | 期限の何か月前に入れ替えるか、品目ごとにずらせるか |
| 期限の通知 | 拠点・品目ごとの期限の一覧を出してもらえるか、通知の方法 |
| 一斉に期限が来ない工夫 | 購入時期を分けて、毎年一部ずつ入れ替えられるか |
一度に全量を購入すると、期限も一度に来ます。数年に分けて購入し、毎年一部を入れ替える方法も検討します。
比べるポイント2:保管と配置
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 保管場所 | フロアごとに分散できるか。高層階ではエレベーター停止時に配れるか |
| 梱包の大きさ | 箱の大きさ・重さ、棚やロッカーに入るか |
| 在庫の記録 | 拠点・保管場所・品目・数量・期限の一覧を受け取れるか |
| 取り出しやすさ | 災害時に誰がどこから取り出すか、鍵の管理 |
東京都のハンドブックは、高層ビルではエレベーターが停止した場合に備え、保管場所を分散することも挙げています。オフィスのレイアウトやビルの管理規約で、置ける場所と量を確かめてから業者と相談します。
比べるポイント3:入替時の処分と活用
期限が近づいた備蓄品の扱いは、費用と手間に差が出るところです。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 引取りの範囲 | 食品だけか、簡易トイレや電池なども引き取るか |
| 処分の方法と費用 | 廃棄物として処分する場合の費用の有無 |
| 活用の方法 | 社員への配布、防災訓練での試食、フードバンクへの寄付の支援があるか |
| 記録 | 引取り・処分の記録や証明を受け取れるか |
期限前の食品を寄付する場合は、受け取る団体の条件(残りの賞味期限など)を事前に確認します。農林水産省はフードバンク活動の情報を公表しています。
見積もりで確認すること
| 項目 | 確認の内容 |
|---|---|
| 費用の内訳 | 品目ごとの単価、配送・設置費、入替・引取り・処分の費用 |
| 契約期間 | 複数年契約か、途中で人数が変わったときの増減 |
| 品目の変更 | アレルギー対応食や女性用品などを追加できるか |
| 対応地域 | 全拠点に対応できるか |
| 解約時の扱い | 保管中の備蓄品の引渡し、在庫データの引渡し |
価格や品目は業者ごとに異なり、時期によっても変わります。同じ必要量の表をもとに、2〜3社から見積もりを取って比べます。
導入後の点検の進め方
業者に入替を任せても、在庫が本当にそろっているかは会社が確かめます。年1回の点検では、次の点を見ます。
| 点検の項目 | 確認すること |
|---|---|
| 数量 | 拠点・フロアごとの在館人数の変化に、備蓄量が追いついているか |
| 期限 | 業者の期限一覧と、実際の保管品の表示が一致しているか |
| 保管状態 | 高温・多湿の場所に置いていないか、箱が破損していないか |
| 取り出し | 鍵の保管場所と、災害時に配る担当者が決まっているか |
| 配慮の品目 | アレルギー対応食、女性用品、常用薬の呼びかけなどが計画どおりか |
点検の結果は備蓄品の管理表に記録し、人数が増えた拠点は追加の見積もりを依頼します。防災訓練の日に合わせて点検すると、担当者の負担を抑えながら毎年続けられます。
社内で決めておくこと
- 備蓄品の管理責任者と、拠点ごとの担当者
- 年1回の在庫と期限の確認の時期(防災訓練と合わせると続けやすい)
- 災害時に備蓄品を配る手順と、配る人
- 社員自身の備え(常備薬、携帯電話用の電源など)を呼びかける方法
- 備蓄品の購入・入替の費用をどの予算から出すか(総務の年間予算に入替の費用を毎年計上しておくと、一斉の買い替えで予算が足りなくなるのを防げる)
- テナントビルの場合、ビル全体の防災計画や管理会社の備蓄との役割分担
まとめ
- 3日分の目安は1人あたり水9リットル・主食9食・毛布1枚。外部の帰宅困難者のために10%程度を余分に備蓄することも示されている
- サービスは「購入のみ」「定期入替つき」「保管・管理まで」に分かれる。自社の必要量を出してから見積もりを取る
- 賞味期限と入替の周期、保管と配置、入替時の処分と活用、契約の条件で比べる
- 量や品目の判断は会社が行い、配慮が必要な人への備えを自社で確かめる