長時間労働者への医師の面接指導|月80時間超の判定・本人への通知・産業医への情報提供の流れ
時間外・休日労働が月80時間を超えた従業員には、会社から本人への通知が必要です。疲労の蓄積があり本人から申出があれば、医師による面接指導を行い、医師の意見を聴いて事後措置を講じます。80時間の算定方法、通知の時期と方法、産業医への情報提供、研究開発業務の例外、記録の保存までを手順で整理します。
- 対象読者
- 従業員30〜300名の企業で、勤怠集計や長時間労働対策を担当する人事・労務担当者
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この記事のポイント
- 時間外・休日労働(週40時間を超えた時間)は毎月1回以上、一定の期日を定めて算定する。月80時間を超えた人には、その時間を速やかに(おおむね2週間以内)本人に通知する
- 月80時間超で疲労の蓄積があり、本人から申出があれば、医師による面接指導を遅滞なく行う。管理監督者や裁量労働制の人も対象
- 面接指導後は医師の意見を聴き、労働時間の短縮などの事後措置を講じる。結果の記録は5年間保存する
長時間労働は、脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調の大きな要因です。労働安全衛生法は、長時間働いた従業員に医師による面接指導を行う仕組みを定めています。
36協定で月80時間を超える残業が可能な会社はもちろん、繁忙期だけ一時的に残業が増える会社でも、毎月の勤怠集計の中に「80時間チェック」を組み込んでおく必要があります。この記事では、その手順を整理します。
面接指導の全体の流れ
| 手順 | 誰が | 時期 |
|---|---|---|
| 1. 時間外・休日労働時間を算定する | 会社 | 毎月1回以上、一定の期日を定めて |
| 2. 月80時間超の人に通知する | 会社→本人 | 算定後、速やかに(おおむね2週間以内) |
| 3. 産業医に情報提供する | 会社→産業医 | 算定後、速やかに(おおむね2週間以内) |
| 4. 面接指導を申し出る | 本人→会社 | 算定の期日後、遅滞なく |
| 5. 医師による面接指導を行う | 会社(医師) | 申出後、遅滞なく |
| 6. 医師から意見を聴く | 会社 | 面接指導後、遅滞なく |
| 7. 事後措置を講じ、記録を保存する | 会社 | 記録は5年間保存 |
厚生労働省のパンフレットでは、「速やかに」はおおむね2週間以内とされています。「遅滞なく」については、申出から面接指導まで、面接指導から意見聴取までをそれぞれおおむね1か月以内とする目安が示されています。
1. 80時間の算定方法
対象となる時間は、休憩時間を除き1週間あたり40時間を超えて労働させた時間です。法定休日の労働も含みます。36協定の「時間外労働」(1日8時間・週40時間を超える時間)とは数え方が少し違う点に注意してください。
- 会社の所定労働時間が週40時間未満でも、基準は法定の週40時間
- 算定は毎月1回以上、一定の期日を定めて行う(例:毎月の給与締め日)
- 1か月の時間外・休日労働時間は、おおむね「1か月の総労働時間 −(1か月の暦日数 ÷ 7 × 40時間)」で計算できる
対象になる人
労働時間の状況の把握と面接指導は、高度プロフェッショナル制度の対象者を除く、すべての労働者が対象です。管理監督者、裁量労働制の適用者、事業場外みなし労働時間制の適用者、パート・有期雇用労働者も含まれます。管理監督者は残業代の対象外でも、健康確保の対象からは外れません(管理監督者の範囲)。
労働時間の状況は、タイムカード、PCのログイン・ログアウト記録などの客観的な方法で把握し、記録を3年間保存します。詳しくは労働時間の適正な把握義務を参照してください。
派遣労働者は、派遣先が労働時間の状況を把握し、派遣元が面接指導を行います。派遣先は、労働時間の情報を派遣元に確実に伝えましょう(派遣社員を受け入れるときの実務)。
2. 本人への通知
月80時間を超えた人には、超えた時間に関する情報(時間外・休日労働時間数)を通知します。
- 方法は書面や電子メールなどが適当とされています
- 給与明細に時間外・休日労働時間数が記載されていれば、それで通知としても差し支えありません
- 面接指導の申出方法・時期の案内をあわせて送ることが望まれます
給与明細で通知する場合でも、80時間を超えた人には面接指導の申出先を別途案内しておくと、申出につながりやすくなります。
3. 産業医への情報提供
産業医を選任している事業場(常時50人以上)は、月80時間を超えた人の氏名と、超えた時間を産業医に提供します。該当者がいない月は「該当者なし」と伝える必要があります。
50人未満の事業場は、医師または保健師への情報提供が努力義務です。地域産業保健センターを利用して面接指導を受けることもできます。
4〜5. 申出と面接指導
月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる人が申し出た場合、会社は医師による面接指導を行わなければなりません。申出の手続きをとった人は、疲労の蓄積がある人として扱います。
- 面接指導の費用は会社が負担する
- 産業医は、対象者に申出を勧奨できる
- 本人が会社指定の医師を希望しない場合は、他の医師の面接指導を受け、その結果を証明する書面を提出してもよい
- 算定の期日前1か月以内に面接指導を受けた人などで、医師が不要と認めた人は除かれる
医師は、勤務の状況、疲労の蓄積の状況、その他の心身の状況を確認します。
申出がなくても面接指導が必要な人
| 対象 | 要件 |
|---|---|
| 研究開発業務の従事者 | 時間外・休日労働が月100時間を超えた場合、申出の有無にかかわらず面接指導を行う |
| 高度プロフェッショナル制度の対象者 | 健康管理時間が週40時間を超えた時間が月100時間を超えた場合、申出の有無にかかわらず面接指導を行う |
80時間に届かない人
月80時間以下でも、健康への配慮が必要な人には、面接指導やそれに準ずる措置を講じるよう努めることとされています。会社として「月45時間超が2か月続いたら保健師面談」などの独自基準を決めておく方法もあります。
6〜7. 医師の意見聴取と事後措置
面接指導の後、会社は医師から、健康を保持するために必要な措置について意見を聴きます。そのうえで、必要と認めるときは次のような措置を講じます。
- 就業場所の変更、作業の転換
- 労働時間の短縮、深夜業の回数の減少
- 医師の意見の衛生委員会等への報告
面接指導の結果の記録には、実施日、本人の氏名、医師の氏名、疲労の蓄積の状況、心身の状況、医師の意見を記載し、5年間保存します。
面接指導の記録は健康情報です。人事評価の資料と同じ場所に保管せず、閲覧できる人を限定してください。
毎月の運用チェックリスト
- 給与締め日などの期日に、全員の時間外・休日労働時間を算定する
- 80時間超の人を抽出し、本人に通知と面接指導の案内を送る
- 産業医に対象者の氏名と時間を提供する(該当者なしも連絡)
- 申出があれば面接指導の日程を調整する
- 医師の意見を聴き、上司と業務量の調整などの措置を決める
- 記録を保存し、衛生委員会で長時間労働の状況を報告する
あわせて、36協定の上限(原則月45時間・年360時間、特別条項でも単月100時間未満・複数月平均80時間以内)を超えていないかも確認します(36協定の作り方と上限規制)。長時間労働が続く背景には業務量の偏りがあることが多いため、面接指導を「受けさせて終わり」にせず、業務の見直しにつなげましょう。
まとめ
- 週40時間を超えた時間(休日労働を含む)を毎月一定の期日に算定し、月80時間超の人に速やかに通知する
- 産業医には対象者の氏名と時間を提供する。該当者がいない月もその旨を伝える
- 疲労の蓄積があり申出があれば、医師の面接指導を遅滞なく行う。管理監督者も対象
- 医師の意見を聴いて事後措置を講じ、記録を5年間保存する