面接の質問リストをAIで作り、聞いてはいけない質問を点検する:職務の要件から質問と評価の目安をそろえる手順
面接の質問が面接官任せだと、評価がばらつくうえ、家族や本籍など就職差別につながる質問が出てしまうことがあります。生成AIで職務の要件から質問リストと評価の目安を作り、厚生労働省が示す「配慮すべき事項」に当たる質問がないかを人が点検する手順を解説します。
- 対象読者
- 現場の管理職に面接を任せることが多く、質問や評価が面接官ごとにばらついている従業員30〜300名の企業の採用担当者
- 難易度
- 基本
- 所要時間
- 読了7分
- 最終確認日
この記事のポイント
- AIには、職務の内容と求める能力から、面接の質問・深掘りの質問・評価の目安を表にして作らせる。どの要件を確かめる質問かを必ず対応させる
- 厚生労働省は、本籍・出生地、家族、住宅状況、宗教、支持政党、尊敬する人物、労働組合、愛読書などを把握することは就職差別につながるおそれがあるとしている。AIの質問案と面接官の雑談の両方を点検する
- 応募者の氏名・履歴書・面接の回答そのものはAIに入力しない。質問リストは職務の情報だけで作る
面接を現場の管理職に任せていると、面接官ごとに聞くことがばらばらになり、「人柄がよかった」のような印象だけの評価が集まりがちです。さらに、場をなごませるつもりの雑談で、家族のことや出身地を聞いてしまうこともあります。
この記事では、職務の要件から面接の質問リストと評価の目安を生成AIで作り、聞いてはいけない質問がないかを点検する手順を解説します。面接の進め方全体は中小企業の面接の進め方と評価シート、面接の記録の整理は面接の記録・評価コメントをAIで整理する、書類選考でのAIの使い方は採用選考にAIを使うときの注意点で扱っています。
AIに任せること・任せないこと
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| AIに任せる | 職務の要件の整理、質問と深掘りの質問の案、評価の目安(どんな回答なら高い評価か)の下書き、質問案の表現の点検 |
| 人が確認する | 要件そのものが職務に必要か、質問が配慮すべき事項に当たらないか、合否の判断 |
| AIに入力しない | 応募者の氏名・履歴書・職務経歴書、面接での回答、写真、健康や家族に関する情報 |
質問リストは、応募者の情報を使わずに作れます。AIに渡すのは、求人票や職務記述書にある職務の内容と、求める能力だけです。
前提:配慮すべき事項を知っておく
厚生労働省の「公正な採用選考の基本」は、採用選考で次のような事項を把握することは就職差別につながるおそれがあるとしています。
| 区分 | 主な事項 |
|---|---|
| 本人に責任のない事項 | 本籍・出生地、家族(職業・続柄・健康・学歴・収入など)、住宅状況、生活環境・家庭環境 |
| 本来自由であるべき事項(思想・信条) | 宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合・社会運動、購読新聞・愛読書 |
| 採用選考の方法 | 身元調査、適性・能力に関係ない事項を含む応募書類、合理的・客観的に必要性のない健康診断 |
職業安定法第5条の5は、求職者の個人情報は業務の目的の達成に必要な範囲で収集することを定めています。男女雇用機会均等法第5条は、募集・採用で性別にかかわらず均等な機会を与えることを求めています。「結婚の予定は」「子どもができたら働き続けるか」といった質問は、男女どちらに対しても避けます。
手順1:職務の要件を整理する
次の求人の職務内容から、面接で確かめるべき要件を5〜7個に整理してください。
列:要件/その要件が必要な理由(職務のどの場面で使うか)/書類で確かめられるか・面接で確かめるか
・職務:総務担当(備品管理、契約書の管理、来客対応、社内イベントの運営)
・求める経験:事務職の経験3年以上
・求めるもの:複数の依頼の優先順位づけ、社内外との調整、正確な事務処理
要件ごとに「なぜ必要か」を書かせておくと、職務と関係のない質問が入り込むのを防げます。
手順2:質問リストと評価の目安を作る
手順1の要件ごとに、面接の質問を作ってください。
列:要件/最初の質問/深掘りの質問(2つ)/評価の目安(高い・標準・低いの例)
・過去の行動を具体的に聞く質問にしてください(例:「〜したときのことを教えてください」)
・家族、出身地、住まい、宗教、支持政党、尊敬する人物、愛読書、労働組合、結婚・出産の予定、
健康状態に触れる質問は作らないでください
AIに禁止事項を伝えても、「休日の過ごし方」「ご両親はどんなお仕事ですか」のような質問が混ざることがあります。次の手順で必ず点検します。
手順3:質問案を点検する
AIの質問案を、別の依頼で点検させます。点検の観点は人が決めます。
次の面接の質問リストを、厚生労働省「公正な採用選考の基本」の配慮すべき事項に照らして点検してください。
・配慮すべき事項に触れるおそれがある質問に印をつけ、理由と、職務の要件を確かめる言い換えを示してください
・判断に迷うものは「要確認」としてください
(ここに質問リストを貼り付け)
最後は人が1問ずつ読み、要件との対応と表現を確かめます。AIの点検は見落としを減らす補助で、点検結果をそのまま正しいとはしません。
雑談・アイスブレイクも事前に決めておく
就職差別につながる質問は、本題よりも雑談で出やすくなります。面接官向けに、使ってよい話題と避ける話題を1枚にしておきます。
| 避ける話題の例 | 代わりの話題の例 |
|---|---|
| 「ご出身はどちらですか」 | 「今日は迷わずに来られましたか」 |
| 「ご家族は何をされていますか」 | 「当社の求人のどこに関心を持たれましたか」 |
| 「愛読書や尊敬する人は」 | 「最近取り組んで成果が出た仕事は」 |
| 「結婚や出産の予定は」 | 「入社後に挑戦したい業務は」 |
転居を伴う転勤がある職務で勤務地の希望を確かめたい場合は、家族の事情を聞くのではなく、「〇〇への転勤がありますが、勤務は可能ですか」と職務の条件として聞きます。
オンライン面接や録音にも同じ考え方を使う
オンライン面接でも、背景に映った部屋の様子や家族について触れないなど、配慮すべき事項は対面と同じです。面接を録音・録画する場合は、事前に応募者へ目的と保存期間を伝えて同意を得ます。録音を文字にしてAIで要約する場合の注意は、面接の記録・評価コメントをAIで整理するで確認してください。
面接官への配布と振り返り
質問リストと評価の目安は、面接官に事前に配り、評価シートと一緒に使います。採用が終わったら、評価と入社後の活躍の様子を照らし、質問や評価の目安を見直します。見直しの下書きにAIを使う場合も、応募者や社員の個人名は入力しません。
面接官向けの1枚の資料にまとめる
質問リストを配るだけでは、面接官は使い慣れた質問に戻りがちです。次の内容を1枚にまとめ、面接の前日までに渡します。
| 資料の項目 | 内容 |
|---|---|
| 求める人物像 | 職務の要件5〜7個と、その理由 |
| 質問と深掘り | 要件ごとの最初の質問と深掘りの質問 |
| 評価の目安 | 高い・標準・低いの回答例 |
| 聞かないこと | 配慮すべき事項と、雑談で避ける話題 |
| 記録の取り方 | 評価シートに事実(応募者の発言や行動)を書き、印象だけで点数をつけない |
AIに「この資料を面接官が5分で読める分量にしてください」と頼むと、要点を絞った版を作れます。面接官が複数いる場合は、評価がずれた項目を面接後に話し合い、評価の目安を直していきます。
まとめ
- AIには、職務の要件から質問・深掘りの質問・評価の目安を作らせる。要件と質問を必ず対応させる
- 本籍・家族・住宅状況・宗教・支持政党・尊敬する人物・労働組合・愛読書などは、就職差別につながるおそれがある。AIの案も雑談も点検する
- 合否の判断と、質問が職務に必要かの判断は人が行う
- 応募者の氏名・履歴書・面接の回答はAIに入力しない
採用面接の準備や評価の仕組みにAIをどう組み込むか相談したいときは、Otsumu株式会社のAIツール診断をご利用ください。
この記事で使えるテンプレート
人事 面接評価シート 面接官ごとの評価を同じ基準でそろえるための面接評価シートです。評価項目・5段階評価・評価の根拠となった発言・総合判定を1行1候補者で記録でき、Excelで集計できます。この記事に出てくる用語
出典・参考資料
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