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人事評価のフィードバックコメントをAIで下書きする:評価の判断は人が行い、伝え方だけを整える

評価期間の終わりに、管理職が部下一人ひとりのフィードバックコメントを書くのは大きな負担です。生成AIを「伝え方を整える道具」として使い、事実と評価は人が決める運用の手順、プロンプト例、入力してはいけない情報、人事が確認すべき点を解説します。

対象読者
評価コメントの作成や、管理職のコメントの質のばらつきに悩んでいる、従業員30〜300名の企業の人事担当者・管理職
難易度
実務
所要時間
読了9分
最終確認日

この記事のポイント

  • AIに任せるのは「文章の整え方」だけ。評価の点数・等級・昇給の判断は、必ず評価者と人事が行う
  • 評価者は、具体的な行動の事実(いつ・何を・結果)をメモにしてからAIに渡す。事実のないコメントはAIでも良くならない
  • 氏名・社員番号・健康状態などはAIに入力しない。AIの文章は評価者が自分の言葉で直してから本人に伝える

人事評価の時期になると、管理職から「部下のコメントが書けない」「毎回同じような文章になる」という声が上がります。人事の側でも、コメントが短すぎる、抽象的すぎる、きつすぎるといったばらつきに頭を悩ませがちです。

生成AIは、こうした文章の下書きや言い回しの調整が得意です。ただし、評価そのものをAIに決めさせてはいけません。この記事では、評価の判断は人が行い、AIには伝え方を整える部分だけを任せる運用の手順を紹介します。

AIに任せること・任せないこと

AIに任せてよいこと AIに任せないこと
評価者のメモを、読みやすい文章に整える 評価の点数・ランク・等級の判断
きつい表現を、事実を変えずに前向きな言い回しにする 昇給・賞与・昇格の決定
「良かった点」「次期に期待すること」の構成に並べ替える 部下の性格や意欲の推測
コメントの長さをそろえる 評価の根拠となる事実の創作

評価は、賃金や昇格に直結する人事上の判断です。AIの出力をもとに評価を決めると、なぜその評価になったのかを本人に説明できなくなります。人事評価制度の考え方は30〜100名企業の人事評価制度のつくり方を参照してください。

手順1:評価者が「事実のメモ」を書く

良いフィードバックコメントの材料は、具体的な行動の事実です。AIに渡す前に、評価者が次の形でメモを書きます。

項目 書く内容 例
目標 期初に立てた目標 新規取引先を半期で5社開拓
結果 数字・成果物 4社開拓(達成率80%)
良かった行動 いつ・何をしたか 7月に展示会の出展準備を主導し、来場者リストを作った
課題となった行動 いつ・何があったか 9月の提案書の提出が2回期限に遅れた
次期に期待すること 具体的な行動 提案書の作成を早めに着手し、上長の確認を前倒しする
評価(評価者が決めたもの) 点数・ランク B(期待どおり)

「やる気がある」「責任感が足りない」のような性格や態度の決めつけは、メモの段階で書かないようにします。AIはメモに書かれた言葉を膨らませるため、決めつけがそのまま強調されてしまいます。

評価シートの様式は人事評価シート(目標管理)を使うと、目標・結果・行動をそろえて書けます。

手順2:AIで文章を整える

メモができたら、氏名などを伏せてAIに渡します。

あなたは中小企業の人事担当者です。
次の評価メモをもとに、部下に渡すフィードバックコメントの下書きを作ってください。

【条件】
・評価(B:期待どおり)は変えない。評価の理由をメモの事実だけで説明する
・メモに書かれていない事実や数字を付け足さない
・構成:1. 今期の成果 2. 良かった行動 3. 次期に期待すること
・性格や意欲を推測する表現は使わない
・「〜できていない」より「次は〜するとよい」という書き方を優先する
・300字程度、です・ます調

【評価メモ】
(ここにメモを貼る。氏名は「Aさん」とする)

AIの下書きには、メモにない内容が紛れ込むことがあります。「メモにない情報を加えていないか確認して、加えていたら一覧にして」と追加で頼むと、チェックしやすくなります。

表現をやわらげたいとき

次のコメントのうち、受け取った人が人格を否定されたと感じそうな表現を指摘し、
事実を変えずに言い換え案を出してください。
(コメントを貼る)

厳しい指摘を伝えること自体は問題ではありません。ただし、業務上必要な範囲を超えた人格否定の言葉は、パワーハラスメントと受け取られるおそれがあります。ハラスメント防止の基本はハラスメント防止措置の総点検を確認してください。

手順3:評価者が自分の言葉で仕上げる

AIの文章をそのまま本人に渡すと、どの部下にも同じような言い回しが並び、「AIで書いた」と気づかれます。評価者は次の点を直してから提出します。

  • 評価者自身がふだん使う言葉に置き換える
  • 本人と話した内容(面談で本人が話していたこと)を一言加える
  • 事実・数字・日付がメモと一致しているか確認する

フィードバックは、文章だけでなく面談で直接伝えることが大切です。日頃の対話の仕組みは1on1ミーティングの始め方が参考になります。

人事がチェックすること

人事は、管理職から集まったコメントを次の観点で確認します。

確認の観点 見るポイント
評価との一致 評価がCなのにコメントが絶賛ばかり、などのずれがないか
事実の有無 具体的な行動の記述があるか。抽象的な言葉だけになっていないか
表現 人格否定、性別・年齢・家庭の事情に触れる不適切な表現がないか
公平性 部署や評価者によって、長さや厳しさに極端な差がないか

育児・介護による短時間勤務や休業の期間があった人について、その事実だけを理由に不利益な評価やコメントにしていないかも確認しましょう。両立支援の制度は改正育児・介護休業法で会社がやることの総点検で確認できます。

よくある失敗と防ぎ方

失敗 起きること 防ぎ方
メモを書かずにAIに丸投げする どの部下にも当てはまる、中身のないコメントになる 事実のメモを先に書くことをルールにする
AIの文章をそのまま提出する 言い回しがそろいすぎて、本人に「AIが書いた」と伝わり信頼を失う 評価者が自分の言葉に直し、面談で話した内容を加える
AIに評価の妥当性を聞く AIが点数を上げ下げする提案をし、評価者の判断がぶれる 評価はAIに相談しない。迷ったら人事や上位の評価者と話す
個人を特定できる情報を入れる 評価情報が外部のサービスに残る 「Aさん」などに置き換え、所属・役職も書かない

管理職への展開のしかた

AIの利用を管理職に任せる場合は、評価期間の前に短い説明会を開き、次の3点を伝えます。

  1. AIに任せてよいのは文章の整え方だけで、評価は自分で決めること
  2. 使ってよいAIサービスと、入力してはいけない情報
  3. メモの書き方の例と、プロンプトのひな形の置き場所

プロンプトのひな形は社内の共有フォルダに置き、人事が評価期間ごとに見直します。

AIに入力しない情報

評価の情報は、本人にとって非常に機微な個人情報です。

入力しない 理由
氏名、社員番号、所属と役職の組み合わせ 個人が特定される
健康状態、休職・通院の事実、家族の事情 要配慮個人情報や、特に慎重な扱いが必要な情報を含む
給与額、昇給額 評価のコメントには不要
他の社員との比較(実名入り) 第三者の個人情報になる

会社として契約したAIサービスで、入力内容が学習に使われない設定になっているかを確認し、利用してよいサービスを社内ルールで決めておきます(→生成AIの社内利用ガイドラインのつくり方)。AIに任せる業務の線引きは人事・労務・総務でAIに任せられる業務・任せられない業務の線引きにまとめています。

評価コメントの集約や記録をシステムで管理したい場合は、人事評価システムを入れるべきタイミングと選び方も参考にしてください。

まとめ

  • AIに任せるのは文章の整え方だけ。評価・昇給・昇格の判断は人が行う
  • 評価者は具体的な行動の事実をメモにしてからAIに渡す。性格の決めつけは書かない
  • 「メモにない事実を足さない」「評価を変えない」とAIに指示し、出力を確認する
  • AIの文章は評価者が自分の言葉で直し、面談で直接伝える
  • 氏名・健康状態・給与額などはAIに入力しない

評価業務の効率化や、自社で使えるAIツール選びに迷ったら、Otsumu株式会社のAIツール診断をご利用ください。

この記事で使えるテンプレート

DOCX 人事 人事評価シート(目標管理) 目標管理(MBO)による人事評価シートです。期初の目標設定、期中の進捗確認、期末の本人評価・評価者評価、行動評価、総合評価とフィードバックまでを1つの様式で運用できます。

出典・参考資料

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