健康管理システムの選び方:健康診断・ストレスチェック・面接指導の記録をまとめて管理するときの比較ポイント
健康診断の受診管理、結果の保存、事後措置、ストレスチェック、長時間労働者の面接指導——健康管理の記録は増え続けます。健康管理システムを検討するタイミング、法令上の保存・報告と照らした比較ポイント、健康情報の取扱いで確認すべきことを、製品名を挙げずに整理します。
- 対象読者
- 健康診断の結果や受診状況をExcelや紙で管理していて、限界を感じている従業員30〜300名の企業の人事・総務担当者
- 難易度
- 基本
- 所要時間
- 読了8分
- 最終確認日
この記事のポイント
- 健康管理システムは、健診の受診管理・結果の保存・事後措置・ストレスチェック・面接指導の記録を一元化する仕組み。機能の範囲は製品で大きく異なる
- 比較は「法令上の記録と報告に対応できるか」「健康情報の閲覧権限を細かく分けられるか」「健診機関からのデータ取込」の3点が軸
- 健康情報は要配慮個人情報。システムより先に、健康情報等の取扱規程で「誰が・何を・何のために見るか」を決める
健康診断の案内を出し、受診状況を追いかけ、結果を受け取って保存し、所見のある人について医師の意見を聴く。50人以上の事業場ならストレスチェックと労働基準監督署への報告もあります。従業員が増えるほど、Excelと紙ファイルでの管理は苦しくなります。
この記事では、特定の製品をすすめるのではなく、健康管理システムを選ぶときの比較の軸を整理します。健康診断そのものの義務と流れは定期健康診断の実施義務と事後措置をご覧ください。
まず押さえる:会社に求められる記録と報告
システムで何を管理すべきかは、法令上の義務から考えると整理しやすくなります。
| 項目 | 主な内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 健康診断個人票 | 健診結果と医師の意見を記録し、5年間保存 | 全事業場 |
| 健診結果の通知・事後措置 | 本人への結果通知、異常所見者についての医師の意見聴取、就業上の措置 | 全事業場 |
| 定期健康診断結果報告 | 所轄の労働基準監督署へ提出(電子申請が原則) | 常時50人以上の事業場 |
| ストレスチェック | 年1回の実施、高ストレス者の面接指導、実施状況の報告 | 常時50人以上の事業場(50人未満は2028年4月から義務化予定) |
| 長時間労働者の面接指導 | 時間外・休日労働が一定時間を超えた人の面接指導と記録 | 全事業場 |
ストレスチェックの50人未満の事業場への拡大は、ストレスチェックの実施義務を労働者50人未満の事業場に拡大にまとめています。
健康管理システムで管理できること
製品によって範囲が大きく違います。次の表で、自社に必要な機能に印を付けてから比較を始めましょう。
| 機能 | 内容 | 必要度の目安 |
|---|---|---|
| 受診管理 | 対象者の抽出、案内、予約状況、未受診者への督促 | 多くの会社で必要 |
| 結果の取込・保存 | 健診機関のデータ(ファイル)や紙の結果の取込、個人票としての保存 | 多くの会社で必要 |
| 事後措置の記録 | 判定区分、再検査の受診状況、医師の意見、就業上の措置 | 多くの会社で必要 |
| 報告書の作成 | 定期健康診断結果報告の集計 | 50人以上の事業場 |
| ストレスチェック | 受検、集計、高ストレス者の抽出、集団分析 | 50人以上(または実施予定の会社) |
| 面接指導の管理 | 長時間労働者の抽出(勤怠連携)、面接の記録 | 残業が多い会社 |
| 産業医・保健師との共有 | 専門職だけが見られる画面、コメント機能 | 産業医を選任している会社 |
ストレスチェックや面接指導は、外部の実施機関に委託している会社も多くあります。その場合、システムに必要なのは「委託先から受け取った結果の保存と、面接指導の記録」だけかもしれません。
比較のチェックポイント
1. 健康情報の閲覧権限を細かく分けられるか
健康診断の結果や病歴などの健康情報は、個人情報保護法の要配慮個人情報にあたります。さらにストレスチェックの結果は、本人の同意がなければ事業者に提供できません。
| 確認すること | 見るポイント |
|---|---|
| 権限の分け方 | 人事担当・上長・産業医・保健師で、見られる項目を分けられるか |
| ストレスチェックの結果 | 実施者(医師・保健師等)と実施事務従事者だけが個人の結果を見られる設定にできるか。人事権を持つ人が見られない設計か |
| 上長への共有 | 就業上の措置(残業制限など)だけを共有し、診断名や数値は見せない設定ができるか |
| 操作の記録 | 誰がいつどの情報を見たかの記録(アクセスログ)が残るか |
2. 保存期間と出力に対応しているか
- 健康診断個人票を5年以上保存でき、退職者の記録も残せるか
- 特殊健康診断を行う会社は、対象物質によって保存期間が長いものがあるため、その期間保存できるか
- 必要なときに、個人票や記録を一覧やファイルで出力できるか(解約時のデータの引き取りも含む)
3. 健診機関・勤怠システムとの連携
- 契約している健診機関の結果データを取り込めるか。紙で届く場合の入力の手間はどうか
- 勤怠システムから時間外・休日労働の時間を取り込み、面接指導の対象者を抽出できるか(→勤怠管理システムの選び方)
4. 従業員の使いやすさ
- 従業員がスマートフォンで健診の予約や問診票の入力、ストレスチェックの受検をできるか
- 外国人従業員がいる場合は、多言語に対応しているか
5. セキュリティと契約
- データの保存場所、暗号化、二要素認証の有無
- 委託先(システム会社)の管理体制。個人情報の取扱いの委託として、契約内容を確認する(→中小企業の個人情報・マイナンバー管理の基本)
システムより先に決めること
健康情報をシステムに入れる前に、健康情報等の取扱規程を作り、次の点を決めておきます。厚生労働省は、規程を策定するための手引きと規程のひな形を公開しています。
- 健康情報を扱う人(人事担当、産業医など)と、それぞれが扱える情報の範囲
- 利用の目的(就業上の措置のため、など)
- 本人への通知の方法、本人の同意の取り方
- 保存期間と廃棄の方法
規程は、衛生委員会がある事業場ではそこで審議し、従業員に周知します(→衛生管理者・産業医の選任義務)。
導入を検討するタイミング
| 状況 | 検討の目安 |
|---|---|
| 従業員が50人に近づいた | 結果報告・ストレスチェック・産業医との共有が始まる前 |
| 拠点が複数ある | 拠点ごとに健診機関が違い、結果の回収が大変 |
| 未受診者の追いかけに毎年時間がかかる | 受診管理と督促の自動化 |
| 健康経営に取り組みたい | 受診率・再検査受診率などの指標を出したい(→小さな会社の健康経営) |
50人未満で受診者も少ないうちは、健康診断 受診管理表とファイルの権限設定で十分な場合もあります。産業医の選任義務がない事業場は、地域産業保健センターの支援も活用できます。
選定の進め方
- 上の表で必要な機能に印を付け、「必須」「あれば良い」に分ける
- 健康情報等の取扱規程の案を作り、権限の設計を決める
- 3社程度から資料と見積もりを取る。料金体系(従業員数による月額、機能ごとの追加料金など)は各社で異なるため、同じ条件で比べる
- 試用期間や画面のデモで、権限の設定と健診データの取込を実際に確かめる
- 産業医・保健師にも画面を見てもらう
機能や料金は変わるため、比較の際は各社の公式サイト・資料・見積もりで最新の情報を確認してください。
まとめ
- 健康管理システムは、健診の受診管理・結果の保存・事後措置・ストレスチェック・面接指導の記録をまとめる仕組み
- 比較の軸は、法令上の記録・報告への対応、健康情報の閲覧権限、健診機関・勤怠との連携
- ストレスチェックの個人の結果は、本人の同意なく会社に渡らない設計になっているかを確認する
- システムより先に健康情報等の取扱規程を作り、誰が何を見るかを決める
- 50人に近づいたとき、拠点が増えたときが検討のタイミング