労務 #労働時間#残業#給与計算#就業規則

振替休日と代休の違いと割増賃金|事前の振替の要件・計算例・就業規則の定め方

休日出勤のあとに休みを与えれば割増は不要、と考えるのは誤りです。事前に休日を入れ替える振替休日と、事後に休みを与える代休の違い、振替が有効になる要件、週をまたぐ振替や代休の計算例、給与計算期間をまたぐときの処理、就業規則の定め方を、労働局の資料をもとに整理します。

対象読者
従業員30〜300名の企業で、勤怠管理と給与計算を担当する人
難易度
実務
所要時間
読了8分
最終確認日

この記事のポイント

  • 振替休日は事前に休日と労働日を入れ替えるもので、休日労働にならない。代休は休日労働のあとに休みを与えるもので、休日労働の割増はなくならない
  • 振替が有効になるには、就業規則の振替規定、事前の振替日の特定、4週4日の休日の確保が必要。週をまたぐと週40時間超の25%割増が生じることがある
  • 代休日の賃金を差し引いても、割増部分(法定休日なら0.35)は残る。給与計算期間をまたぐ場合の処理方法を賃金規程で決めておく

「日曜に出てもらったから、来週の水曜を休みにしてください」。この指示が振替休日になるか代休になるかで、割増賃金の額が変わります。両者の違いは、休日と労働日の入れ替えを働く前に決めたか、働いた後に決めたかです。

休日労働の割増率(法定休日35%・所定休日25%)の基本は休日労働・深夜労働の割増賃金で解説しています。この記事では、振替休日と代休を実際に運用するときの要件、計算例、給与計算の処理を整理します。

振替休日と代休の違い

項目 振替休日 代休
決めるタイミング 休日に働く前 休日に働いた後
働いた日の扱い 労働日になる(休日労働ではない) 休日労働のまま
休日労働の割増 不要 必要(法定休日は35%以上)
週40時間超の割増 振替で週40時間を超えれば25%以上 所定休日の労働で週40時間を超えれば25%以上
36協定 法定休日の振替なら休日労働の協定は不要(時間外が生じる場合は必要) 法定休日に働かせるには休日労働の36協定が必要

厚生労働省は、代休について「前もって休日を振り替えたことにはなりません」とし、休日労働分の割増賃金を支払う必要があるとしています。あとから休みを与えても、休日に働かせた事実は消えないということです。

振替休日が有効になる要件

振替休日は法律で定められた制度ではないため、要件は労働局の資料などで示されています。群馬労働局の資料では、休日の振替に次の4つの措置が必要とされています。

  1. 就業規則に振替休日の規定を置く(業務の都合で休日を他の日に振り替えることがある旨)
  2. 振替休日を特定する(「後日休んでいい」では足りず、「〇月〇日に振り替える」と決める)
  3. 4週4日の休日が確保される範囲で、できるだけ近接した日にする
  4. 休日労働を行う前日までに通知する

前日までというのは最低限のラインです。山梨労働局は、従業員にも休日の予定があるため、それなりの日数をもって知らせることが必要と考えられるとしています。

4週4日の変形休日制をとっている会社は、4週間の起算日を就業規則で定めておく必要があります(労働基準法施行規則12条の2)。起算日があいまいだと、振替後に4週4日を満たしているかを判定できません。

振替の手続きをとらずに休日に働かせ、後日「振替だった」と扱うことはできません。勤怠システムで振替を申請・承認する場合も、休日出勤日より前に承認されている記録を残しましょう。

計算例

前提:土日休みの会社で、日曜日を法定休日と定めています。1日8時間・週40時間勤務、時間単価は2,000円とします。

ケース1:同じ週の中で振り替えた

日曜日に8時間働き、同じ週の水曜日に振り替えて休ませた場合です。その週の労働時間は40時間のままで、日曜日は労働日になっています。追加の割増賃金は発生しません。

ケース2:翌週に振り替えた

土曜日(所定休日)を労働日にし、翌週の月曜日に振り替えた場合です。土曜日を含む週の労働時間は48時間になり、週40時間を超えた8時間に25%の割増が必要です。

  • 2,000円 × 0.25 × 8時間 = 4,000円

翌週は月曜日が休みになるので、労働時間は32時間です。週をまたぐ振替は、元の週の時間外を打ち消せない点に注意しましょう。山梨労働局も、割増を避けるには同じ週の中で振り替えるのがよいとしています。

ケース3:法定休日に働き、後日代休を与えた

日曜日に8時間働き、翌週の水曜日に代休を与えた場合です。

計算 金額
休日労働の賃金(2,000円 × 1.35 × 8時間) 21,600円
代休日の賃金を差し引く場合(2,000円 × 1.00 × 8時間) −16,000円
差引き 5,600円(割増部分の0.35が残る)

代休日を有給にする定めがあれば、差し引きはしません。代休日の賃金を差し引くか、有給とするかは会社が決めることができ、就業規則や賃金規程に定めておきます。

群馬労働局の資料では、1.00の部分を差し引けるのは同じ賃金計算期間内に代休を取った場合とし、欠勤しても賃金を減額しない「完全月給制」の場合は除くとしています。完全月給制の会社は、代休を与えても差し引きはできないと考えておきましょう。

ケース4:所定休日(土曜日)に働き、後日代休を与えた

土曜日の労働で週40時間を超える場合は、25%以上の時間外割増が必要です。代休日の賃金を差し引いた後も、0.25分(この例では4,000円)が残ります。

給与計算期間をまたぐときの処理

代休は休日労働の翌月以降に取ることもあります。このとき、休日労働の賃金を「代休を取るまで払わない」扱いにすると、賃金の支払いが遅れてしまいます。実務では次の方法をとる会社が多くあります。

  1. 休日労働をした月の給与で、割増を含めた賃金(1.35や1.25)を全額支払う
  2. 代休を取った月の給与で、代休日1日分(1.00)を欠勤と同様に差し引く(完全月給制を除く)

賃金規程に「代休を取得した日は無給とし、取得した月の賃金から控除する」といった定めを置き、給与計算ソフトの設定と合わせておきます。月をまたいで割増だけを相殺するような処理は誤りのもとになるので避けましょう。割増の計算方法は残業代の計算方法も参照してください。

就業規則の定め方

振替と代休は、別々の条文で定めておくと運用が混乱しません。

定める事項 振替休日 代休
実施する場合 業務上必要があるとき 休日労働をさせたとき
手続き 振替日を特定し、前日までに通知 本人の申請または会社の指定
時期 原則として同じ週内、できるだけ近い日 「休日労働の日から〇週間以内」など
賃金 通常の労働日として扱う 代休日の賃金を無給とするか有給とするか

代休の取得期限を決めずにおくと、未取得の代休が積み上がり、管理が難しくなります。期限を設け、期限内に取れなかった場合の扱いも決めておきましょう。

よくある質問

振替休日や代休の日に、有給休暇を使えますか

使えません。振替休日や代休の日は、もともと労働義務のない日だからです(山梨労働局)。本人から希望があっても、有給休暇の取得日数に数えないようにします。有給休暇の管理は年5日の取得義務と管理簿を参照してください。

半日だけ休日出勤した場合も振替できますか

休日は原則として暦日(午前0時から午後12時まで)単位で与えるものとされています(和歌山労働局)。半日の休日出勤に半日の振替を組み合わせると、休日を与えたことにならないおそれがあるため、代休や割増の支払いで対応するのが無難です。

管理監督者にも振替・代休の管理は必要ですか

管理監督者には休日に関する規定が適用されないため、休日労働の割増は不要です。ただし、深夜の割増や有給休暇は適用されます(管理監督者の範囲)。

まとめ

  • 振替休日は事前に休日と労働日を入れ替えるもの。代休は休日労働のあとに休みを与えるもので、割増はなくならない
  • 振替には、就業規則の規定、振替日の事前特定、4週4日の休日の確保、前日までの通知が必要
  • 週をまたぐ振替は週40時間超の25%割増が生じることがある。できるだけ同じ週の中で振り替える
  • 代休日を無給にしても割増部分は残る。給与計算期間をまたぐ場合の処理を賃金規程で決めておく

この記事で使えるテンプレート

DOCX 労務 時間外・休日労働 申請書 残業・休日出勤の事前申請と実績報告を1枚で行う申請書です。36協定の上限(月45時間・年360時間など)と照らして、当月の累計時間を確認できる欄を設けています。 DOCX 労務 休暇届(年休・特別休暇・時間単位年休) 年次有給休暇(全日・半日・時間単位)、慶弔休暇などの特別休暇、子の看護等休暇・介護休暇を1枚で申請できる休暇届です。取得後の残日数と、年5日の取得義務の進み具合も記録できます。

出典・参考資料

無料メルマガ

法改正アラート:改正の1ヶ月前に「やることリスト」が届く

月1回の定期号と、施行直前号でお届けします。今月やること・新着テンプレートもまとめて確認できます。