AI活用 #AI活用#生成AI#就業規則#賃金制度

就業規則・賃金制度の変更を社員に説明する資料と想定Q&AをAIで下書きする:新旧の比較、影響を受ける人への説明、記録の残し方

就業規則や賃金制度を変えるときは、変更の内容と理由を社員に分かりやすく説明し、質問に答えた記録を残すことが大切です。新旧対照表から説明資料と想定Q&Aを生成AIで下書きする手順、プロンプト例、不利益変更に当たる場合の注意、社員の個別データを入力しない工夫を解説します。

対象読者
就業規則や賃金制度・手当を改定し、社員説明会の資料や質問への回答を準備することになった、従業員30〜300名の企業の人事担当者
難易度
実務
所要時間
読了8分
最終確認日

この記事のポイント

  • AIには、新旧対照表から説明資料の構成、変更点の平易な言い換え、想定Q&Aの下書きを作らせる。変更の理由と経過措置は会社が決め、AIに考えさせない
  • 労働条件を不利益に変える場合、就業規則の変更が有効になるには周知と変更の合理性が必要(労働契約法第10条)。説明の資料と質疑の記録は、その判断材料になるので正確に残す
  • 社員ごとの賃金の増減額や評価はAIに入力しない。個別の影響は人事が計算し、個別面談で説明する

手当の見直し、休暇制度の新設、評価制度の変更など、就業規則や賃金制度を変えるときは、規程の文言を整えるだけでは終わりません。社員に「何が・いつから・なぜ変わるのか」を説明し、質問に答える必要があります。担当者が一人だと、説明資料の作成と質問への回答準備が重なり、説明会の直前まで手が回らないことがあります。

この記事では、新旧対照表をもとに、説明資料と想定Q&Aの下書きを生成AIで作る手順を解説します。規程の改定案そのものを作る手順は生成AIで就業規則・社内規程の改定案を作る手順と注意点、改定の社内手続きは社内規程を改定するときの手順を参照してください。

AIに任せること・任せないこと

区分 内容
AIに任せる 説明資料の構成、変更点の平易な言い換え、モデルケースの説明文の型、想定Q&Aの洗い出しと文案、説明会の進行表
人が決める・確認する 変更の理由、経過措置・激変緩和措置、モデルケースの金額、Q&Aの回答内容、法令との関係
AIに入力しない 社員の氏名・賃金額・評価・個別の増減額、労働組合や過半数代表者とのやり取りの詳細

個別の賃金や評価は個人情報です。個人情報保護委員会の注意喚起を踏まえ、生成AIには入力しません。AIに渡すのは、新旧対照表と、会社として決めた変更の理由・経過措置の要点だけにします。

前提:変更の性質を確認する

説明の重みは、変更が社員にとって有利か不利かで変わります。

変更の種類 法律上の考え方
社員と個別に合意して変える 合意により労働条件を変更できる(労働契約法第8条)
就業規則の変更で、不利益に変える 合意なく不利益に変えることは原則できない(同法第9条)。変更後の規則を周知し、変更が合理的なものであるときは、変更後の内容が労働条件になる(同法第10条)
有利に変える・新設する 就業規則の変更手続(意見聴取・届出・周知)を行う

労働契約法第10条は、合理性を判断する要素として、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況などを挙げています。説明会の資料や質疑の記録は、こうした事情を示す材料にもなります。不利益に当たるかの判断に迷う場合は、資料を作る前に社会保険労務士や弁護士に相談します。

手順1:新旧対照表と要点を用意する

AIに渡す前に、次の資料を整えます。

  • 新旧対照表(条文の変更前・変更後)
  • 変更の理由(会社が決めた文章)
  • 施行日、経過措置(例:減額分を2年間調整手当で補う)
  • 対象者の範囲(全社員、正社員のみ、など)

手順2:説明資料の下書きを作らせる

次の新旧対照表と変更の要点をもとに、社員向けの説明資料の構成と本文の下書きを作ってください。
(新旧対照表を貼り付ける)
変更の理由:(会社が決めた文章を貼り付ける)
施行日・経過措置:(要点を貼り付ける)
条件:
・「何が変わるか」「いつから」「なぜ」「あなたへの影響の確かめ方」「質問の窓口」の順にする
・条文の言い回しを、社員が読んで分かる言葉に言い換える。ただし意味を変えない
・変更の理由は、貼り付けた文章の範囲で書き、推測で補わない
・モデルケースは「____円」の差し込み欄にする
・A4で3枚程度

AIの言い換えは、条文の意味を変えていないかを、新旧対照表と1行ずつ突き合わせて確認します。「原則として」「〜できる」と「〜しなければならない」の取り違えが起こりやすい点です。

手順3:想定Q&Aを作らせる

上の説明資料について、社員から出そうな質問を20個挙げ、回答の下書きを作ってください。
・「自分の給与はいくら変わるのか」「いつから適用されるのか」「パートにも適用されるのか」など、具体的な質問を含める
・回答の根拠が新旧対照表や変更の要点にない場合は、回答を作らず「要確認」と書く
・個別の金額に関する質問は「個別面談で説明する」と回答する

「要確認」とされた質問は、人事が回答を決めます。回答が決まらないまま説明会を開くと、その場の口頭回答が後で問題になることがあります。

手順4:説明会と記録

説明会では、資料を配り、質疑の内容を記録します。記録には、日時、出席者数、説明者、主な質問と回答、後日回答とした事項を残します。欠席者には資料を配り、質問の受付期間を設けます。

説明会の進行表もAIに下書きさせられます。次のような流れを基本に、所要時間を割り振ります。

順番 内容 目安
1 変更の背景と理由(経営者または人事責任者) 10分
2 変更点の説明(新旧の比較、施行日、経過措置) 15分
3 影響の確かめ方と個別面談の案内 5分
4 質疑 20分

賃金が下がる人や働き方が変わる人には、全体の説明会とは別に個別面談で、本人の金額や影響を説明します。個別の金額の計算は人事が行い、AIには渡しません。面談では、変更前後の金額、経過措置の適用期間、質問の窓口を書いた書面を渡すと、本人が家族と相談するときにも役立ちます。面談で出た質問のうち、ほかの社員にも関係するものは、個人が特定されない形でQ&Aに追加して全員に共有します。

就業規則の手続とのつながり

説明会は、就業規則の変更手続の代わりにはなりません。労働基準法上、次の手続も必要です(常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合)。

手続 内容
意見聴取 過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の意見を聴く(第90条)
届出 意見書を添えて労働基準監督署に届け出る(第89条)
周知 作業場への掲示・備付け、書面の交付、社内ネットワークでの閲覧などで周知する(第106条)

説明資料とQ&Aは、周知の方法とあわせて社内ポータルなどに載せておくと、後から入社した人への説明にも使えます。

よくある失敗

  • AIに変更の理由を考えさせ、会社の実際の事情と違う説明になる
  • 平易に言い換えた結果、経過措置の対象者の範囲が実際より広く読める
  • 社員の賃金一覧を入力して「影響額を計算して」と頼んでしまう
  • 説明会の質疑を記録せず、後で「説明を受けていない」と言われても示せない

まとめ

  • AIには、新旧対照表から説明資料の構成、平易な言い換え、想定Q&Aの下書きを作らせる
  • 変更の理由と経過措置は会社が決める。不利益変更では周知と合理性が問われるため、資料と記録を正確に残す
  • 個別の賃金・評価は入力せず、個別面談で人が説明する
  • 意見聴取・届出・周知の手続と組み合わせて進める

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この記事に出てくる用語

過半数代表者
労働者の過半数で組織する労働組合がない事業場で、労使協定の締結や就業規則の意見聴取の相手方になる、労働者の過半数を代表する人です。
就業規則
労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
労働基準監督署
労働基準法・労働安全衛生法などが守られているかを監督する厚生労働省の機関です。36協定や就業規則の届出先で、労災保険の給付の窓口でもあります。
労働契約法
労働契約の成立・変更・終了についての基本的なルールを定めた法律です。解雇権濫用の禁止、就業規則による労働条件の変更、無期転換ルール、雇止め法理などを定めています。

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