AI活用 #AI活用#採用#求人票#生成AI

求人票・スカウト文をAIで作る:職業安定法の明示事項と差別表現の注意点

生成AIを使えば求人票やスカウト文の下書きは短時間で作れます。一方で、職業安定法で明示が義務付けられた労働条件の漏れや、性別・年齢による差別表現が混ざるリスクもあります。手順とプロンプト例、チェックリストを紹介します。

対象読者
採用業務も兼任している、従業員30〜300名の企業の人事・総務担当者
難易度
実務
所要時間
読了9分
最終確認日

この記事のポイント

  • AIには「魅力の言語化」「読みやすさの調整」「媒体ごとの書き分け」を任せ、労働条件は人が確定させた情報だけを渡す
  • 募集時には業務内容・賃金・労働時間などに加え、2024年4月から「業務と就業場所の変更の範囲」「有期契約の更新上限」の明示が必要
  • 性別を限定する表現や年齢制限はAIが無意識に混ぜることがあるため、公開前に必ずチェックする

求人票やスカウト文は、採用の成否を左右する文章です。しかし、一人人事の会社では、他の業務の合間に急いで書くことになりがちです。生成AIを使えば、下書きは短時間で作れます。

ただし、求人には職業安定法などのルールがあります。AIが作った文章には、明示すべき労働条件の漏れや、意図しない差別表現が混ざることがあります。この記事では、AIを使った求人票・スカウト文づくりの手順と、公開前のチェックポイントを整理します。

求人で守るべき主なルール

ルール 内容 根拠
労働条件の明示 募集時に業務内容・賃金・労働時間などを明示する 職業安定法第5条の3
的確な表示 虚偽や誤解を招く表示をせず、正確・最新の内容に保つ 職業安定法第5条の4
性別による差別の禁止 募集・採用で性別を理由とした差別をしない 男女雇用機会均等法第5条
年齢制限の禁止 原則として年齢制限を設けない(例外あり) 労働施策総合推進法第9条
公正な採用選考 本籍・家族・思想信条など、本人の適性・能力と関係ない事項で判断しない 職業安定法、厚生労働省の指針

募集時に明示が必要な労働条件

求人票・求人広告では、次の事項を明示します。2024年4月から、太字の3項目が追加されました。

  • 業務内容(従事すべき業務の変更の範囲)
  • 契約期間(有期の場合は更新の基準。通算契約期間や更新回数の上限を含む)
  • 試用期間
  • 就業場所(就業場所の変更の範囲)
  • 始業・終業時刻、時間外労働の有無、休憩時間、休日
  • 賃金(固定残業代がある場合はその計算方法などの詳細)
  • 加入する保険(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険)
  • 受動喫煙防止のための措置
  • 募集者の氏名または名称
  • 派遣労働者として雇用する場合はその旨

「変更の範囲」とは、入社直後だけでなく、将来の配置転換なども含めた範囲のことです。変更の予定がない場合は「変更なし」と書きます。採用後の労働条件通知書との関係は、労働条件通知書の書き方も参考にしてください。

明示事項は、AIに「必要な項目を考えて」と任せるのではなく、自社で確定させた労働条件を人が入力します。AIが金額や時間を「それらしく」埋めてしまうと、実際の条件と違う求人になるおそれがあります。

AIで求人票を作る手順

ステップ1:労働条件を確定させる

まず、上の明示事項を社内で確定させます。賃金の下限・上限、固定残業代の有無と時間数、勤務地の変更範囲などは、経営者や配属先と事前に合意しておきます。最低賃金を下回っていないかも確認しましょう(→2026年度の地域別最低賃金の改定)。

ステップ2:仕事の魅力を素材として集める

配属先の上長や社員から、次のような素材を集めます。

  • 1日の仕事の流れ
  • この仕事で身につくスキル
  • チームの人数・雰囲気
  • 入社後の研修・サポート体制

個人名や、特定の社員を推測できる情報(「育休明けの○○さんが…」など)は含めないようにします。

ステップ3:AIに下書きを作らせる

プロンプト例です。

あなたは日本の中小企業の採用担当を補助するアシスタントです。
以下の【確定した労働条件】と【仕事の素材】をもとに、求人票の「仕事内容」「アピールポイント」欄の文章を作成してください。

条件:
- 【確定した労働条件】の数値・条件は一字一句変えない。新しい条件を追加しない
- 性別・年齢を限定・示唆する表現を使わない(「若手」「女性が活躍」「〜マン」「体力のある男性」など)
- 誇張表現(「業界No.1」「必ず稼げる」など)を使わない
- 400字程度、です・ます調

【確定した労働条件】
(貼り付け)

【仕事の素材】
(貼り付け)

ステップ4:スカウト文を作る

スカウト文では、候補者のプロフィールをAIに入力したくなります。しかし、候補者の氏名や職歴は個人情報です。入力する場合は、利用するサービスの学習設定や、スカウト媒体の利用規約を確認してください。安全なのは、汎用のテンプレートをAIで作り、個別の部分は人が書き足す方法です。

経理経験3年以上の方に送るスカウト文のテンプレートを作成してください。
候補者の経歴に触れる部分は【 】で空欄にし、人が書き足せるようにしてください。
300字程度。押しつけがましくない、丁寧な文体でお願いします。

公開前のチェックリスト

AIが作った文章は、次の観点で確認します。

明示事項の漏れ

  • 上記の明示事項がすべて記載されているか
  • 「変更の範囲」「更新上限」が書かれているか
  • 金額・時間・日数が、確定させた労働条件と一致しているか

性別による差別表現

AIは学習データの影響で、職種と性別を結びつけた表現を出すことがあります。

避けたい表現 言い換え例
営業マン、カメラマン 営業職、カメラスタッフ
ウエイトレス、看護婦 ホールスタッフ、看護師
女性が活躍中の職場 さまざまな社員が活躍する職場(実態を具体的に書く)
男性向けの力仕事 10kg程度の荷物を運ぶ作業があります

年齢制限

「20代〜30代歓迎」「若手社員募集」のような表現は、年齢制限とみなされるおそれがあります。長期勤続によるキャリア形成を目的とした若年者募集など、法令で認められた例外にあたる場合は、その理由を明示する必要があります。例外にあたるかの判断は、ハローワークや労働局に確認してください。

誇張・誤解を招く表現

  • 「残業なし」と書いたが、実際には月数時間の残業がある
  • 「年収600万円可能」と書いたが、実例がない
  • モデル年収が、固定残業代込みであることを書いていない

職業安定法では、求人情報を正確かつ最新の内容に保つことが求められます。採用が決まったら、掲載をすみやかに終了・更新しましょう。

選考の場面でAIを使うときの注意

求人票だけでなく、書類選考や面接の準備にAIを使う場合も、次の点に注意します。

  • 応募書類をむやみに入力しない:履歴書・職務経歴書は個人情報のかたまりです。入力する場合は、利用するサービスの学習設定と社内ルールを確認する
  • 採否をAIに判断させない:AIの評価には学習データの偏りが含まれることがあります。評価基準は人が決め、判断の理由を説明できるようにする
  • 質問項目のチェック:AIに面接の質問案を作らせると、家族構成や出身地など、本人の適性・能力と関係のない質問が含まれることがあります。厚生労働省の「公正な採用選考」の考え方に沿っているか確認する
  • 応募者への連絡文:不採用通知などのひな形づくりには向いていますが、個別の事情に触れる部分は人が書く

面接の進め方と避けるべき質問は、中小企業の面接の進め方と評価シートで詳しく解説しています。

媒体ごとの書き分けにも使える

同じ求人でも、ハローワークの求人票、求人サイト、自社の採用ページ、SNSでは、文字数や読まれ方が違います。AIは、確定した原稿をもとに媒体ごとの長さ・トーンに書き分ける作業が得意です。

次の【求人原稿】を、自社採用ページ向け(800字程度・やわらかい文体)に書き直してください。
労働条件(賃金・時間・休日・勤務地・変更の範囲)の記載は一字一句変えないでください。

書き分けた後は、どの媒体でも労働条件の記載が同じになっているかを確認します。媒体ごとに条件が違って見えると、応募者の誤解やトラブルの原因になります。

まとめ

  • AIに渡す労働条件は、人が確定させたものだけ。数値をAIに作らせない
  • 2024年4月追加の「変更の範囲」「更新上限」を含め、明示事項の漏れを確認する
  • 性別・年齢を限定する表現、誇張表現が混ざっていないか、公開前に必ずチェックする
  • 候補者の個人情報はむやみにAIに入力しない

採用業務のどこにAIを使うと効果的か整理したい場合は、Otsumu株式会社のAIツール診断をご利用ください。

出典・参考資料

この業務、AIでどこまで減らせるか診断します。Otsumu の「AIツール診断」で、自社の業務フローから自動化できる作業を洗い出します。

無料で相談する

無料メルマガ

法改正アラート:改正の1ヶ月前に「やることリスト」が届く

月1回の定期号と、施行直前号でお届けします。今月やること・新着テンプレートもまとめて確認できます。