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賃金のデジタル払いで使う資金移動業者の選び方:指定の確認、口座残高・払出しの上限、手数料、給与計算との連携で比べる

賃金のデジタル払い(資金移動業者の口座への賃金支払い)は、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者に限って使えます。特定の事業者をすすめずに、指定の確認方法、口座残高や1日の払出しの上限、労働者・会社の手数料、給与計算の事務処理との連携、導入の手続きで比べるポイントを整理します。

対象読者
社員から「給料をスマホ決済の口座で受け取りたい」と相談され、賃金のデジタル払いの導入を検討している従業員30〜300名の企業の給与・労務担当者
難易度
実務
所要時間
読了7分
最終確認日

この記事のポイント

  • 賃金のデジタル払いに使えるのは、厚生労働省の指定資金移動業者一覧に載っている事業者とサービスだけ。まず一覧で指定の有無とサービスの名称を確かめる
  • 厚生労働省は選ぶときのポイントとして、口座残高の上限、1日あたりの払出しの上限、労働者や会社の手数料の有無と金額、事業者との契約の要否を挙げている。上限は会社と事業者の個別の調整で引き上げられない
  • 導入には労使協定、労働者への説明、本人の個別の同意が必要で、口座振込などほかの選択肢もあわせて示す。希望しない人に強制すると労働基準法違反になり得る

「給料の一部をスマートフォンの決済アプリで受け取れませんか」。社員からこう相談されて、賃金のデジタル払いを調べ始める担当者が増えています。賃金のデジタル払いは、労働基準法施行規則で認められた賃金の支払い方法の一つで、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者の口座に賃金を支払う仕組みです。現金化できないポイントや仮想通貨での支払いは認められていません。

この記事では、賃金のデジタル払いで使う資金移動業者を選ぶときの比較ポイントを、特定の事業者名を挙げずに整理します。賃金の支払いの原則は賃金支払の5原則、口座振込の同意と手続きは給与の口座振込に必要な同意と手続きで扱っています。

前提:導入の流れを確認する

厚生労働省の雇用主向けリーフレットは、導入に必要な手続きを次の順で示しています。

順番 手続き 内容
1 指定資金移動業者の確認 厚生労働省の指定資金移動業者一覧で、事業者とサービスの名称を確認
2 導入するサービスの検討 労働者のニーズを踏まえて選ぶ。複数の選択も可能
3 労使協定の締結 対象となる労働者の範囲、対象となる賃金の範囲と金額、取扱指定資金移動業者の範囲、実施開始時期を定める
4 労働者への説明 口座振込・証券総合口座への払込みの選択肢もあわせて示す
5 個別の同意の取得 受取口座の情報、受取希望額、指定代替口座などを取得。電磁的記録でも可
6 事務処理の確認・実施 支払いの方法、支払日に向けた事務処理の期限を確認

就業規則や給与規程の改定が必要かどうかも確認します。労使協定や同意書の様式例は、厚生労働省のウェブサイトに掲載されています。

比べるポイント1:指定の有無とサービスの範囲

賃金のデジタル払いに使えるのは、指定資金移動業者一覧に載っている事業者の、載っているサービスだけです。同じ事業者でも、指定を受けたサービス以外は使えません。

確認すること 見るポイント
指定の有無 厚生労働省の一覧に事業者名とサービスの名称が載っているか
審査中の事業者 一覧の「審査状況」で確認。指定前は使えない
指定の取消し・辞退 その場合は、労働者に確認のうえ、労働者が指定する別の方法で支払う

一覧は更新されるため、導入時だけでなく、年1回など定期的に確認します。

比べるポイント2:口座残高・払出しの上限

厚生労働省は、選ぶときのポイントとして、口座残高の上限と1日あたりの払出しの上限の設定金額を挙げています。これらは、会社と事業者の個別の調整で引き上げることはできません。

確認すること 見るポイント
口座残高(受入)の上限 上限を超えた分は、本人が指定した預貯金口座(指定代替口座)に自動で出金される
1日の払出しの上限 家賃などまとまった支払いに使う社員にとって不便がないか
受取希望額の設定 賃金の一部だけをデジタル払いにできるか

上限額は事業者ごとに異なります。社員が賃金の全額を受け取りたいと希望する場合は、上限との関係を説明できるようにしておきます。

比べるポイント3:手数料

確認すること 見るポイント
会社の手数料 送金・振込の手数料、初期費用や月額費用の有無と金額
労働者の手数料 払出しの手数料。少なくとも毎月1回は手数料の負担なく払い出せる。2回目以降や出金先による手数料は事業者ごとに異なる
指定代替口座への自動出金 自動出金の手数料が本人の負担になることがある
事業者との契約 会社が事業者と契約を結ぶ必要があるか

手数料の金額は変わることがあるため、各事業者の公式の案内で最新の内容を確認し、確認日を記録しておきます。

比べるポイント4:給与計算の事務処理との連携

確認すること 見るポイント
支払いの方法 会社の資金移動アカウントから送るのか、銀行振込と同じ手順で送るのか
支払日に向けた期限 何営業日前までにデータを送れば支払日に着金するか
給与計算ソフトとの連携 振込データの形式、ソフトから出力できるか
複数の受取先への分割 口座振込とデジタル払いに分けて支払う設定ができるか

支払日に賃金が届かないと、賃金の全額払い・一定期日払いの原則に関わります。給与計算ソフトの対応状況と、締切の日程を事前に確かめます。

比べるポイント5:労働者への説明と保証

確認すること 見るポイント
説明の委託 労働者への説明は指定資金移動業者に委託できる。ただし同意は会社自らが得る
説明資料 事業者が用意する説明資料の内容と、多言語対応の有無
破綻時の保証 保証機関による弁済の方法(指定代替口座への振込か、本人の請求が必要か)
口座の解約・退職時 退職や口座の解約のときの手続き

厚生労働省のリーフレットは、委託した事業者が説明を怠った場合、説明が行われたとは認められず、会社が労働基準法令に違反することになると注意しています。説明の委託をする場合も、説明の内容を会社で確認しておきます。

小さく試してから広げる

導入する場合は、最初から全社員に案内するのではなく、希望者の少人数で数か月試す方法もあります。試行の間に、次の点を確かめます。

確認すること 見るポイント
着金のタイミング 支払日に確実に届いているか
給与計算の手間 口座振込と分けて支払う設定や、データ作成の手間
社員の使い勝手 上限や払出しで困った点がないか
問い合わせ 社員からの質問の内容と件数、事業者の窓口の対応

試行の結果を踏まえて、対象の範囲や取り扱う事業者を見直し、労使協定の内容に反映します。

導入前に社内で決めておくこと

  • 対象とする社員の範囲(全員か、希望者のうち一定の条件を満たす人か)
  • 対象とする賃金の範囲と金額(毎月の給与の一部か、賞与も含むか)
  • 取り扱う事業者を1社にするか複数にするか
  • 申込みの締切と、受取先の変更の手続き
  • 指定が取り消された場合の連絡と切替えの手順
  • 退職時の最終給与の支払い方法と、指定代替口座の情報の更新を社員に呼びかける時期
  • 同意書・労使協定の保管場所と、取り扱う事業者を追加・変更するときの手続き(協定の取扱指定資金移動業者の範囲を見直す)

まとめ

  • 使えるのは厚生労働省の一覧に載る指定資金移動業者のサービスだけ。導入時と定期的に一覧を確認する
  • 口座残高と1日の払出しの上限、会社と労働者の手数料、事業者との契約の要否、給与計算との連携で比べる
  • 労使協定、労働者への説明(ほかの選択肢の提示)、本人の個別の同意が必要。強制してはいけない
  • 手数料や上限は変わることがあるため、公式の案内で確認日を記録しておく

この記事に出てくる用語

就業規則
労働時間・賃金・退職などの労働条件や職場のルールを定めた規則です。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、作成して労働基準監督署に届け出る義務があります。
労使協定
会社と、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数代表者)との間で結ぶ書面の協定です。法律の原則を例外的に変える効果があります。

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出典・参考資料

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